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名前をつけさせてくれない猫  作者: さくらんぼ


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26/30

第26話 そこにあるもの

夜。


静か。



主人公

「……」



ベッドの上。



少しだけ迷う。



視線。



部屋の入り口。



例の場所。



主人公

「……今日、行くか」



立ち上がる。



電気はつけない。



そのまま近づく。



すぐ後ろにいる。



主人公

「来るんだ」


無言。




一歩。



問題ない。



もう一歩。



止まる。



主人公

「……」



特に何もない。



主人公

「ほら、何も——」



その時。



すっと前に出る。



ぴたっ



あの位置で止まる。



主人公

「……やっぱここ?」



動かない。



主人公

「何があるの」



ゆっくり


床を見る。



主人公も見る。



暗い。



よく見えない。



主人公

「……電気つける」




スイッチ。



明かりがつく。




床。



何もない。



でも——



主人公

「……これ」



うっすら。



床に


細い線。



傷。



ほんの少しだけ


引っかいたような跡。



主人公

「こんなのあった?」



無言。



その線の手前で


止まっている。



主人公

「……ここから?」



一歩、踏み出そうとする。



ぴたっ


前に出る。



主人公の足を止める。



主人公

「え」



小さく


「……にゃ」



主人公

「……ダメ?」



動かない。




少し間。



主人公

「……わかった」



一歩、引く。



少しだけ力を抜く。



主人公

「そこまでなんだ」



無言。



でも


線の向こうは見ない。




主人公

「……ただの傷でしょ」



反応しない。



主人公

「なのに行かないんだ」



「…にゃ」



主人公

「行かないんじゃなくて——」



少し間。



主人公

「行かせない、か」



無言。



でも


その位置から動かない。




しばらくして



主人公

「……もういいや」



ベッドに戻る。



ついてくる。




ベッド。



いつもより近い。



ぴたっ



主人公

「……今日は近いね」



動かない。



主人公

「さっきの代わり?」



「…にゃ」




しばらくして



主人公

「ねえ」



ぴく



主人公

「こういう時くらい——」



ぴたっ


動きが止まる。



主人公

「……名前」



一瞬。



すっと離れる。



主人公

「そこは絶対なんだ」



無言。



でも


また少しだけ戻ってくる。




主人公

「……不思議だね」



「…にゃ」




結局


あの場所にはただの傷があるだけだった。


でも


この猫はそこを越えないし、越えさせない。


そして


それがどういう意味かは、やっぱり教えてくれない。


ただ


名前だけは、それよりも優先して拒否されるらしい。

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