第22話 見えない線
夜。
静か。
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主人公
「今日は涼しいね」
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ベッドに入る。
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電気を消す。
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少しして
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猫
いつも通り来る。
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主人公
「今日は普通に来る日か」
猫
無言。
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少しだけ距離をあけて座る。
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主人公
「その距離好きだね」
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猫
動かない。
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しばらくして
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猫
すっと立ち上がる。
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主人公
「ん?」
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猫
ベッドを降りる。
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主人公
「どしたの」
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猫
部屋の入り口へ。
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主人公
「また行くの?」
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猫
止まる。
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でも
出ていかない。
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主人公
「……?」
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猫
一歩前に出る。
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ぴたっ
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それ以上進まない。
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主人公
「え」
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猫
もう一度
前に出ようとする。
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ぴたっ
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止まる。
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主人公
「……何それ」
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猫
少しだけ後ろに下がる。
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もう一度
前に出る。
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ぴたっ
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主人公
「そこ何かある?」
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何もない。
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主人公
「昨日の場所じゃないよね」
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猫
無言。
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でも
何度も同じところで止まる。
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主人公
「……見えてるのそっち?」
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少し間。
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猫
ゆっくり振り返る。
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主人公を見る。
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主人公
「……何」
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猫
そのまま戻ってくる。
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主人公の近く。
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でも
さっきより距離が近い。
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主人公
「行かないんだ」
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猫
小さく
「…にゃ」
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主人公
「行けないのか」
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猫
無反応。
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そのまま
隣に座る。
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主人公
「……珍しいね」
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猫
動かない。
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しばらく沈黙。
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主人公
「ねえ」
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猫
ぴく
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主人公
「そういうのあるならさ」
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猫
じっとしている。
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主人公
「名前あった方が——」
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一瞬。
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猫
すっと立ち上がる。
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主人公
「あ、やっぱりそこはダメなんだ」
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猫
少し距離を取る。
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主人公
「優先順位どうなってるの」
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猫
「…にゃ」
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主人公
「そこは守るんだ」
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そのまま
少し離れた位置で座る猫。
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さっきの場所は
もう見ない。
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主人公
「……もういいの?」
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猫
無言。
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でも
今日は少しだけ
近くにいる。
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結局
この猫は進めない場所があるみたいだけど、それが何かは絶対に教えてくれない。
そして
どんな時でも名前だけは別らしい。




