第15話 暑い日の距離
夜。
部屋に熱がこもっている。
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主人公
「……暑い」
扇風機が回っている。
でもぬるい。
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ベッドに入る。
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主人公
「今日は来ないでしょ、さすがに」
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静か。
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しばらくして
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気配。
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主人公
「……いるね」
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視線を向ける。
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猫
床で伸びている。
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主人公
「そこなんだ」
猫
無言。
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主人公
「今日は上がってこないの?」
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猫
しっぽだけ動く。
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主人公
「まあ、暑いもんね」
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少し間。
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主人公
「昨日あんなにくっついてたのに」
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猫
反応なし。
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主人公
「わかりやすいなぁ…」
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しばらくして
主人公、寝返りを打つ。
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ベッドの端から
手を少し伸ばす。
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主人公
「……おいで?」
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猫
動かない。
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主人公
「だめか」
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さらに少し手を伸ばす。
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猫
すっと立ち上がる。
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主人公
「え、来る?」
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猫
一歩だけ近づく。
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止まる。
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主人公
「……そこまで?」
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猫
その場で座る。
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主人公
「微妙な距離だね」
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猫
小さく
「…にゃ」
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主人公
「暑いもんね」
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少し沈黙。
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主人公
「こういう日はさ」
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猫
耳だけ動く。
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主人公
「名前つけるタイミングじゃない?」
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一瞬。
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猫
くるっ
向きを変える。
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主人公
「あ、逃げた」
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猫
元いた場所に戻る。
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主人公
「わかりやす…」
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扇風機の音だけ。
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しばらくして
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猫
少しだけ位置を変える。
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主人公の手が
ぎりぎり届くか届かないかの距離。
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主人公
「……それはずるい」
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手を伸ばす。
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少しだけ触れる。
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猫
逃げない。
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主人公
「触るのはいいんだ」
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猫
「…にゃ」
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でも
それ以上は近づかない。
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結局
この猫は暑い日は離れるけど、完全にはいなくならない。
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そして
名前の話をすると、ちゃんと距離も取る。
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