第9話 悪夢
♢♢♢
その頃。
会議の主役である雪斗本人は、コーヒーを飲みながら真壁と共にラウンジでのんびりしていた。
――ガガッ。
天井のスピーカーからノイズが流れる。
『特務第零部隊隊員、真壁隼人。』
会議を終えた鷹宮から呼び出しがかかった。
『てめぇ、じっとしてろって言っただろ。B10会議室へ来い。…今すぐだ。』
ブツッ。
放送が切れると、真壁は缶コーヒーを飲みながら呑気に言った。
「会議、終わったみたいだね。」
鷹宮の声は明らか怒っていたが、真壁は特に反省した様子はない。むしろ安心しているようだ。
「だいぶ怒ってなかった…?」
「うん。隊長怒ると怖いんだよねー。通信機で呼んでくれればいいのに、わざわざ放送なんかかけちゃってさ。」
「その割にはあんま怖がってないように見えるけど…。」
真壁は立ち上がり、空き缶をゴミ箱へ入れ大きく伸びをした。
「んんんー…。じゃあ面倒臭いけど行こっか。」
「え?俺も…?」
「もちろん。今回の主役なんだからさっ。」
そう言って真壁は雪斗を連れ歩き出した。
♢♢♢
B10 会議室前。
扉の前に立った真壁はノックもせずに思い切り開ける。
「失礼しまーす。」
その瞬間。
ゴンッ!!
「いっっっっっ!!」
鈍い音が会議室に響いた。
真壁の頭に鷹宮の拳骨が綺麗に落ちていたのだ。
「痛い…。」
「当たり前だ。」
「久しぶりに可愛い部下に会ったのに…殴るのは酷くないですか?」
「バカタレ。誰が勝手にB20から連れ出していいと言った。司令官にバレたら始末書だけでは済まされんぞ。」
「大丈夫だと思ったので。」
「思うな。」
怒られ慣れているのだろう。まったく反省していない。雪斗はゆっくりと会議室全体を見る。
(見たことある人もいるけど…ほとんど知らない。誰だこいつら…。)
雪斗は自然と真壁の後ろへ下がった。
知らない大人達がずらりと並んでいて、全員が雪斗を見ている。
――居心地が悪い。
真壁はそんな雪斗の様子に気付き、安心させるように肩へ腕を回した。
「大丈夫大丈夫。なんも怖いことないから。」
そう言うと、真壁は会議室全体へ笑顔を向け大きな声で呼びかけた。
「皆さん!第零部隊に新しい仲間ができましたー。もうご存知かとは思いますが、一ノ瀬雪斗くんです。仲良くしてあげてくださいねー。」
「え!?仲間!?」
「お前…勝手に連れてったくせに、きちんと説明してなかったのか。」
鷹宮は呆れた様子だったが、雪斗はなんの事か分からず固まっている。
「いやぁ、施設を案内してたらいつのまにか会議が終わっちゃってて。」
「はぁ…。もういい。俺が説明する。」
そう言い、鷹宮は真壁の後ろにいる雪斗をまっすぐ見下ろしてきた。
「一ノ瀬雪斗。お前の今後についてだ。」
「!」
その言葉を聞き、恐る恐る真壁の後ろから出てくる。結果を聞くのが怖い訳じゃない。でも聞かなければ何も始まらない。
「結論から言う。」
鷹宮は真っ直ぐ雪斗を見据えたまま伝えた。
「お前は今後、特務第零部隊管理下で生活してもらう。」
「はぁ…。」
「自身の体内にウイルスが二種類確認されたことは、お前も知っているだろう。」
「それは…。」
「別に責めてる訳じゃねぇ。いいか、よく聞け。談話室で暴走したとき、本来お前は怪物化になるはずだった。…だがならなかった。」
(だったらなんだよ…。)
「あれはただの暴走じゃなく、能力が発動する前兆だと俺は考えている。」
「能力…?俺が…?」
「あぁ。可能性はゼロじゃない。だがお前の能力がどんなものか検討もつかんし、どうやって扱えるようになるかも分からん。」
「俺に…どうしろって言うんだよ。」
「だから俺達が面倒を見る。暴走せず、自身で能力を操れるようになるまでとことん訓練する。」
「訓練…?」
「あぁ。…どうする?後はお前の意思だけだ。B20に残るか俺ら第零部隊と共に来るか。選べ。」
いきなり能力者だの訓練だの言われても、正直どうすればいいか分からない。
(全て可能性の話…か。)
全員が雪斗を静かに見ている。
(でも…このままB20にいても、暴走しないよう周りから丁重に扱われて査を受けて終わり…。だったら―――…)
「どんな訓練にだって耐えてやるよ。」
雪斗はまっすぐ鷹宮を見る。迷いのない目を見た瞬間、鷹宮は少し口角をあげた。
「本人の意志も確認した。他の戦闘部隊にも紹介したいところだが、ひとまずは第零部隊だけでいいだろう。篠崎さん、このまま連れて行っていいですね?」
「……あぁ。」
「じゃあ氷室、真壁、一ノ瀬、着いてこい。」
そう言い鷹宮は三人を連れ会議室を出る。最後の第零部隊隊員に会いに行くために――。
♢♢♢
B6 武器訓練区画。
広大な訓練施設だった。
射撃場に模擬戦エリア、様々な設備が並んでいる。
そして近接戦闘訓練場に一人の青年がいた。
黒い訓練着に汗で少し濡れた明るい茶髪。
“小瀧 琉偉”がいた。
誰とも話さない。誰とも組まない。
ただひたすら刀を振り続けている。
一振り、また一振りと無駄がない動きに、雪斗は思わず見入ってしまう。
自主練中でもお構い無しに、真壁が小瀧へ大きく手を振る。
「琉偉ーー!」
小瀧が振り向き声の主を発見した途端、露骨に嫌そうな顔をした。
「チッ…。真壁さんお疲れ様です。」
「あれ?今舌打ちされた?」
真壁に雑な挨拶をしているが、視線が雪斗へと映る。…先程より嫌そうな顔をしている。
「…その横にいる奴は何ですか?B20で隔離されてる奴に似ている気がしますが。」
(こいつ…見たことある。学校では助けてくれたけど、談話室では殺そうとしてきた奴だ。…まさか!)
「似てるも何も本人だからね。雪斗くん紹介するよ。彼がSIO戦闘部門所属、特務第零部隊、小瀧 琉偉。」
(やっぱり第零部隊所属かよ…。)
「雪斗くんは今日から第零部隊が管理することになったんだ。戦闘員としてではないけど、雪斗くんには訓練に参加してもらうつもり。」
「…なにかの聞き間違いですか?」
「ん?俺間違ったことは言ってないと思うけど。」
「はぁ…こいつは危険すぎる。そう判断したからB20へ隔離されたのに…なんで急に第零部隊にきたんですか?俺は納得できないし認めません。」
(…!なんだこいつ。)
「小瀧、口を慎め。会議で決まったことだ。」
氷室が冷たい声で小瀧に注意するが、それでも小瀧は納得できないと苛立っている。
「雪斗くんごめんね。琉偉ってば誰にでもあぁだから気にしないで。」
真壁は申し訳なさそうに両手を合わせ、小瀧の代わりに謝罪した。そんな真壁を見て雪斗は何も言えなくなる。すると鷹宮が口を開いた。
「小瀧…お前が納得出来ないのは勝手だが、もう決まったことだ。今後、一ノ瀬を勝手に始末することは許さねぇ。わかったな。」
「……。」
「小瀧…テメェ随分とえらくなったなぁ。俺の言うことが聞けねぇってか?」
「…分かりました。すみません。」
鷹宮の圧に負け、小瀧は大人しく返事をした。鷹宮はそれ以上何も言わずただ小瀧をじっと見ていた。少しの沈黙の後、氷室が口を開く。
「…一ノ瀬 雪斗。」
「!」
「改めて自己紹介をする。SIO戦闘部門所属、特務第零部隊副隊長 氷室椿だ。そしてこちらが隊長の鷹宮誠士郎。以上この四人が第零部隊だ。」
「えっ四人だけ…?」
「あぁ。戦闘中に亡くなった者、能力の代償のせいで除隊した者もいるからな。今はこの四人だけだ。ちなみに他の部隊もそのぐらいの人数で回している。」
「少な…。」
「それほど、ウイルス適応試験をクリアするのが難しいということだ。…さぁ、ここは他の隊員も訓練するから邪魔になる。隊長、そろそろいいですか?」
「あぁ。俺と椿はこの後用事があるから、真壁か小瀧に部屋まで案内してもらうといい。」
鷹宮がそう言うと、小瀧は雪斗を思い切り睨みつけた。
「…俺はまだ自主練するんで、真壁さんお願いします。」
「もー…仲良くしなよ。じゃあ雪斗くんは俺と行こっか。」
「…うっす。」
(小瀧とかいう奴よりはマシ…か。)
そして小瀧以外の四人は訓練場を後にした。
♢♢♢
B2階へ着き、真壁の案内でそのまま廊下の奥へ進む。
やがて一つの扉の前で止まった。
【2037】
「今日からここが雪斗くんの部屋だよ。」
扉が開くと中は思っていたより広かった。
ベッドに机、収納棚、クローゼット。
最低限だが十分な設備が揃っている。
雪斗は部屋を見回した。病室みたいな真っ白い壁や天井ではないし、電子モニターもない。
「あ、そうだ。これこれ…。」
真壁は何かを思い出したようにポケットを探り始めた。
(なんだ?)
ポケットから取り出したのは、黒いリング状の機械だった。
腕時計にも見えるが少し違う。液晶画面が付いている。
「…なにこれ?」
「ここで働いている職員全員が付けてるリストバンド(腕輪)だよ。」
真壁が雪斗の左手首を掴み、リストバンドを勝手に付け始めた。
「隊員だけ特別仕様でね。脈拍、体温、血中酸素、ストレス値…あと能力暴走の兆候だったかな?全部測ってくれるんだ。」
「そんなに?」
「まだあるよ。生体情報にGPS、能力を使っている最中なら能力使用状況なんかも見れるよ。」
「能力使用状況?」
「うん。今誰がどのレベルで能力を解放して使っているかだね。氷室副隊長の攻撃見た事あったっけ?あんなに氷使ってるのに能力値で言うと、あの人5%ぐらいしか使ってないからね。」
「部屋も人間も凍らしといて…?」
「そう!凄いでしょ。氷室副隊長ですら最大限の力を使うとなると…身体がもたないだろうからね。だからこのモニターで常に測られてるってわけ。」
「それは…誰が見てんの?」
「情報分析部!直接関わることはあんまりないけど。」
「ふーん…。」
「ははは。興味なしか。でも、能力者自身を守るための装置でもあるからね。雪斗くんも能力が発動する可能性は十分にあるから、お風呂に入るときも寝る時も絶対に外しちゃだめだよ。」
そう言って真壁は、先程巻いた端末の電源を入れ始める。
ピッ。
起動音が鳴り、画面に数字が表示された。
時間。
心拍数。
体温。
「よし。正常に動いてるね。」
真壁は満足そうに頷いた。
「それで?部屋は気に入ってくれた?」
「あぁ…まぁそうだな。」
「もしも足りないものがあったら、B1階の売店で買ってきてね。だいたいは売ってると思うから。」
「でも俺お金ないけど…。」
「施設内のものなら、そのリストバンドで買えるよ。購入履歴は残っちゃうからあんまり無駄使いしてると、隊長に怒られちゃうから気をつけてね。」
「買い物も出来んのかこれ…。」
「あ、あと鍵の役目もあるよ。この部屋はもちろん、認証装置がある場所はこのリストバンドで入ることが出来る。もちろん全ての場所に入れる訳じゃないけど。」
「え?そうなの?」
「そうそう。権限があってね。上層部とか隊長クラスはだいたいどの階層も行き来できるけど。ちなみに隊員の部屋も全て入れるから、変なもの持ち込んだりしないでね。見つかっちゃうからさ。」
「んなもん持ち込まねぇよ…。」
「ははは。冗談だよ。じゃあ俺はそろそろ行くね。明日から忙しくなるし…今日はゆっくり休んで。」
そう言って真壁は部屋を出て行った。
病室でも隔離室でもない。
――自分の部屋だ。
雪斗はベッドへ腰を下ろしそのまま横になる。
「これからどうなるんだろう…。」
連日の疲れがきたのだろう。気付けば目を閉じ眠っていた。
♢♢♢
B2 戦闘部隊フロア。
廊下には人影もなく、聞こえるのは空調の低い音だけ。
雪斗はベッドの上で眠っていた。
だが、その表情は苦しそうに歪んでいる。
夢…悪夢を見ている様だった。
(ここは…。)
雪斗は気が付くと、学校の廊下に立っていた。
見覚えのある景色に通い慣れた校舎。
そして目の前には一人の男子生徒が立っていた。
学校で感染した先輩…拓がいた。
「あんたは…」
その瞬間、拓の身体が膨れ上がった。
骨が軋む音が聞こえ皮膚が裂け出し感染者へと変貌していく。
「やめろ…。」
雪斗が止める間もなく拓の身体は崩れ落ち、黒い塵となって消えていく。
そしてその後ろから現れたのは、あの時拓の側にいた女子生徒だった。
涙を流しながら小さな声で雪斗を責めている。
「なんで…なんで助けてくれなかったの?」
「違う…助けようとした……!」
だが美香は雪斗の言葉に首を振る。
「助けられなかったじゃない」
その言葉が胸を抉る。
そして景色が歪み視界が真っ黒に染まる。
次の瞬間、そこには拓ではない別の少年が立っていた。
忘れるはずがない。親友を――。
「怜侍……!」
雪斗は反射的に怜侍へ駆け出し手を伸ばした。
「どこにいたんだお前……!」
パシッ――。
怜侍は雪斗の手を払い除けた。
「えっ…怜侍…?」
「なんで探しに来てくれなかった?」
「探した!」
雪斗は叫んだ。怜侍に届くよう必死に。
「探したんだよ!でも見つからなくて…!」
「…。」
「ごめん…。今度こそ必ず見つけるから…怜侍…今どこにいるんだ?」
怜侍は何も答えない。
ただ、少しだけ悲しそうな顔をした。
「遅いよ……。」
その言葉に雪斗の身体が固まる。
「怜侍…?」
「なにもかも…遅すぎたんだよ。」
その言葉を最後に怜侍の姿は闇へ溶けた。
「待て!!」
雪斗は必死に手を伸ばすが、怜侍には届かない。
どれだけ走っても、叫んでも届かない。
「怜侍いいいぃ!!!!!」
そのころ、現実では雪斗の腕に装着された端末が反応していた。
【心拍数上昇】
82
↓
97
↓
114
↓
128
警告表示。
【ストレス値上昇】
【感情反応異常】
【生体反応監視レベル2】
「うぅ…。怜…侍。」
♢♢♢♢
同時刻。
B11 情報分析部。
職員がモニターを見て顔をしかめる。
「一ノ瀬雪斗、生体反応急上昇しています。」
別の職員がモニターを確認する。
「眠っているのに?」
「あぁ…でも数値がおかしい。どんどん上がってる。」
心拍。
脳波。
ストレス値…。
全てが急激に上昇していた。
職員はすぐ通信を開く。
「情報分析部より第零部隊へ。一ノ瀬雪斗の生体反応異常。確認を要請します。」
ジジッ――。
『了解。』
要請を受けてから一分もたっていない。しかし雪斗の部屋の前には鷹宮がいた。
ピッ――。
認証装置にリストバンドをかざし扉を開けると、鷹宮は迷わず室内へ踏み込んだ。
するとベッドの上で眠る雪斗がそこにいた。
苦しそうに何かを呟いている。
「れい……じ…待って…。」
鷹宮は雪斗に近付き、腕についているリストバンドへ目をやる。モニターを見ると、なおも数値を上げ続けていた――。
「一ノ瀬…。」
鷹宮が雪斗の肩を揺する。
「一ノ瀬!」
反応は無かった。
雪斗は眉を寄せたまま苦しそうに呼吸している。
【心拍数 136】
「……高いな。」
このまま眠り続けては危ないと判断し、鷹宮はさらに強く揺さぶり雪斗を呼んだ。
「一ノ瀬!起きろ!」
「っ!!」
雪斗が飛び起きた。呼吸が荒く、全身汗だくだ。視線も定まっていない。
「はぁ…はぁ…。ここ…学校…?」
「ここはテメェの部屋だ。落ち着け。」
雪斗は鷹宮の声を聞き辺りを見回す。今日案内されたばかりの部屋。ベッドには何故か鷹宮がいて雪斗を抱き抱えている。
「鷹宮…隊長?」
「…落ち着いたか?」
「えっと…俺…。」
(確か怜侍といて…あれは夢だったのか…。)
雪斗が他に視線を感じ扉を見ると、そこには氷室と真壁もいた。
「真壁、一ノ瀬に水を買ってこい。」
雪斗のことを思ってか、氷室が真壁に指示を出した。
「はいはい。分かりましたよ。」
(第零部隊の人達が俺の部屋に集まってるってことは…また暴走しかけたってことか。)
その様子を見て少しヘコんでしまう。そんな雪斗に鷹宮は質問をした。
「一ノ瀬…どんな夢を見ていた?」
「えっ…。」
「心拍が急に上がったんだ。ただの夢では無いだろう。」
「…。」
「…神代怜侍の夢か?」
雪斗は目を見開いた。
「なんで…怜侍のこと。」
「その名前を呼んでうなされていたからな。一ノ瀬の知り合いか?」
「…親友です。」
「そうか…。」
重い空気が部屋中に充満した。鷹宮は少し言いにくそうに雪斗から視線を外しながら言葉を続ける。
「彼は…亡くなったと報告されている。」
「えっ…。」
本来は上層部しか知りえない情報だ。だが鷹宮は雪斗には伝えなければと思ったのだ。
「遺体は確認されたが…感染が進みすぎていてな。…原型は残っていなかった。」
「そんな…。」
「本人かどうかも分からなかった。…だが、遺体にはネックレスが付いていた。」
「ネックレスって…まさか…。」
「生徒への聞き取りで確認された。神代怜侍が生前、身につけていた物らしい。」
その瞬間、雪斗の脳裏に浮かんだ。
『怜侍くんがプレゼントしてくれたの。』
奈々子が首元で揺れていたネックレスを、恥ずかしそうに見せてくれた。
それを見て怜侍も照れくさそうにしていた。
「お揃いのネックレス…。」
「お揃い?」
「奈々子…彼女とお揃いで怜侍が買ったものなんだ。」
「…そうだったのか。」
「奈々子は…?奈々子は生きてる?」
「奈々子…という生徒の感染も死亡も確認されていない。きっと無事だ。」
「そっか…。」
(よかった…。奈々子だけでも…。)
良かったはずなのに―――。
「っ……。」
雪斗の頬から涙が落ちた。
「すみません…。」
涙が止まらない。何度も両手で頬を拭くが間に合わない。次々と溢れてくる。
「なんで…。」
肩が震え、雪斗は子供みたいに泣いた。
鷹宮は何も言わない。
氷室も何も言わない。
ただ雪斗が泣き終わるまで、二人ともその場を離れなかった。
第10話は26日19時に更新予定です




