こんな展開、許されていいのか
そして、話は神が転生者の脱落者を報告した時に戻る。
シンゲツの討伐を取りやめ、別の試練を課す。
試練の内容とは――
「シンゲツとの子を成して下さい」
突拍子が無さすぎるものだった。
話を聞いた転生者たちは、訳が分からなかっただろう。
討伐しろと命じたターゲットの子供を作れというのだから。
ご丁寧に神は転生者たちに告げる。
「ああ、別に恋愛劇だとか結婚までする必要はありません。如何なる手段を用いて構いませんから、子を作れば良いのです。とは言え。条件次第では複数名、試練を到達する者が現れてしまう……なので採点基準を設けましょう」
妙な所で徹底する神は、基準を決定した。
「シンゲツの能力を最も引き継いだ子を産む。シンプルですが、重要です。しかしながら、こればかりは運次第でしょう。ですから、他の転生者を排除してから、子を成すのが確実であると教えておきますね」
余計な情報を付け加え、一方的に神は通話を切った。
★
「はあぁっ!? 待て待て急になんなんだよ! てか、俺はどうすりゃいいんだ!! 俺は男だぞ!?」
焦っているのはE王国の男性エルフに転生した者。
災害指定武器『ユグドラシル』の封印を必死に解除しようとしていた最中で、試練内容の変更である。
しかも、内容が内容だ。
男性の彼が、一体どうやって男のシンゲツと子供を作るというのだ。
別の意味で彼は頭を抱えてしまう。
だが――
「待てよ!? 確か……そんなもんがあるって言ってた、ような」
エルフの彼に有利な点があった。
エルフ特有の『秘薬』の存在が。
『ユグドラシル』とは別に、機密扱いされている『秘薬』や『魔方陣』の情報がE王国に保管管理されており。
そこから情報を引き出す方が『ユグドラシル』の封印を解除するよりも手っ取り早いのだ。
更に『秘薬』には、不老不死から性転換するものなど、色々種類があると噂で聞く。
性転換なんて何故生成したのかと問われそうだが、長命種族のエルフにとっての種族繁栄を継続する際に必要になる可能性があるとか何とか。謂わば、種族事情という奴だ。
また、『秘薬』に精通しているのだから、他の薬品開発にも優れている。
たとえば睡眠薬とか、媚薬とか……
「って、それ以前の問題だろ! どうやって奴と接触すればいいんだ……」
★
「どういう事? 神の方で何かあったの?? まあ、僕には関係ないよね。てか、僕は男だし。どうやっても無理じゃないか」
ある男性転生者が面倒そうに溜息つく。
彼は『旅人』というジョブで世界の辺境を巡っており、今尚、転生者同士の争いに介入していない。
神のいう怠惰な転生人生を謳歌している類の人間だ。
一方で、彼は思う。
「このままだと、世界一周は無理かな。分かってはいたけど」
可能な限り、世界を歩みたかった彼も、試練が佳境にあると分かれば自然と気分は落ち込む。
一先ず、最後の行き先と決めた国を目指す事にした。
それは『M国』。
島国で独自の文明を気づき、しばらく鎖国のような状態で他国との貿易を絶っていたという。
どこか、彼の前世の出身国に似通ったところ。
なので懐かしさ半分で、その地を目指すのであった。
★
「妙な事になって来たわね。ひょっとして、生き残っている転生者は女性しかいないのかしら」
茶髪ポニーテールで平凡なワンピースを着こなす錬金術師 『エイダ』が首を傾げた。
彼女は水面下で他の転生者を犠牲にせず、シンゲツを生かす術がないかと思案していたもの。
エイダの元には、転生者である学者の『デボラ』と踊り子の『メーガン』が集っていた。
メーガンが「あのさー」と切り出す。
「やっぱ、神様の奴にも、あたしらの動きが分かってるみたいじゃん。どうすんのぉ~? 『委員長』~」
デボラは俯いて嘆く。
「やっぱり、私達の中で一人しか生き残れないんだ……どうして……こうなるくらいなら、転生なんてしたくなかった……!」
前世でも学級委員長を務めていたエイダが「落ち着いて」とデボラを宥めた。
「方向性は問題なかったわ。『コスモツリー』……小曾川くん達が壊滅した時点で、シンゲツさんは私達の手に負えないと判断し、襲撃しなかったのを咎めなかった事を考慮すると……私が想像していた通りよ」
「え~っとぉ、リコちゃん?だっけ」
「利己的、ね。彼が自分の利益を最優先させるスタンスに変化はない。そして、シンゲツさんの子供には何かしらの価値があると考えるべきだわ」
「で、でも……確か、シンゲツって人は……」
「ええ。奥さんがいた」
そう。
シンゲツには妻がいた。息子もいた。既に――故人となっているが。
彼に関する情報は、エイダたちも収集済みだった。故に、別の意味で沈黙する。
デボラは流石に言う。
「ちょっと、その、無理がある……よね。奥さんと息子さんを、亡くした後に」
「ん~。あの神様、ノンデリってレベルじゃないよね~」
メーガンですら、そんな反応を見せる試練の内容に対し、エイダは再び思考を巡らす。
「……少し、彼に確認してみる事があるわ。二人共待ってて」
「お? 委員長、なんか策あるの??」
「『兼城』さん……!」




