君の事が大好きな異世界の動物たち
「はぁ……ここにいるって本当かしら……?」
一方、ニノマエの状況を知る由もない少女・マーサは、ある場所に来ていた。
I連合国。
自由をモットーとする先進国の一つ。
様々な宗教国家が同盟を期に合併し形成された文化や種族が入り混じった独自の国家。
最近、治安が改善し、移住者も増え、更には冒険者の質が向上しつつある。
安定性のあるB共和国と並ぶ発展を遂げたと噂されていた。
マーサもB共和国以上に活気ある国内の模様に、戸惑いながらもギルドを巡る。
マーサがここへ足を運んだ理由。
それは『動物使い』のアレンがI連合国にいると聞いたからだ。
アレンはC公国からB共和国のギルドに所属。
そこから、様々な国のギルドを転々と移動しながら、世界中を巡るんだと本人が豪語するように。
各国へ渡っている。
普通の冒険者が、ひょいひょいと他国に渡り住むのは不可能だが、彼がテイムしている『フェンリル』が移動手段として担っているとか。
「はっ! もしかして……あ、アレ?」
ギルドを見渡していると、異様に目立つ集団がいた。
獣の耳や尾がついた美少女たちが、一人の少年を囲っている。
美少女たちが少年――アレンがテイムしている動物たち……が人化したものらしい。
これは、アレンの能力ではなく動物達が会得しているスキルによるものなのだが、何であれ一種のハーレム的な光景に、マーサもたじろいでしまう。
「ちょっとぉ……アレに声かけるなんて、無理だわ。気まずすぎる……」
「もし。そこの貴方」
「ひぃっ!?」
マーサが躊躇していたら、ハーレムの一人・翼が背に生えた美少女『フェニックス』が声をかけてくる。
「アレン様に何か御用なのでしょう?」
「いやぁ、その、えと」
「あぁ!? なんだテメェ! またアレンを狙って来た奴か!? アレンはあたしの番だからな!!!」
犬の尾と耳を生やした美少女『フェンリル』が威嚇をする。
「にゃあ!? またそんにゃ事、言って! アレンは私の結婚するんだにゃ!! これはもう決定してるんだにゃ!」
猫の尾と耳を生やした美少女『マタタビ』はフェンリルの方へ威嚇をした。
「はぁ、一々騒がしい畜生共が。アレンは誰のものでもない。我が予言した通り頂点の君臨者となるのだぞ」
ドラゴンの角を生やした美女『バハムート』は威厳ある口調で呆れる。
収拾つかない状況で、ようやく囲われていたアレンが呼び掛けた。
「みんな、落ち着いて! この子は、普通の人間だよ。僕に何か依頼があって来たんじゃないかな」
アレンは純粋な眼差してマーサと向き合う。
マーサが意を決して、告げた。
「あ……貴方がテイムしている『魔喰虫』のテイムを解除して欲しいの! 取り返しのつかない事になってしまうわ!!」
「……え?」
★
それからマーサが必死に説明したのだが、アレンはうーんと眉をひそめる。
「僕、そんな命令したかな……?」
「ちょ……! テイムしている動物が嘘つく訳ないでしょ!?」
「確かにシンゲツさんに『虫』を取りつかせて、魔力を出さないようにしたよ。でも、シンゲツさんを守るようにとかは、命令してない筈だ」
「だから! 生きて償えって言ったでしょう!?」
「それはシンゲツさんに対して言ったんだ。『虫』の方に命令で出した訳じゃないよ?」
「なんですって……!?」
普通はそうなるのだ。
アレンとしては、シンゲツが魔力を出さないように『魔喰虫』を寄生させただけで。
その後に、シンゲツに対して生きて償うように、と言葉を残したのであって。
『魔喰虫』への命令ではない認識なのである。
フェンリルが面倒そうに言う。
「じゃあ、虫の方が勘違いしちまってるって事だろ? アレンは悪くねぇじゃねえか」
「っ……! 勘違いな訳ないじゃない!! 実際に、本人が貴方の命令に逆らえないって言っているんだから!」
フェニックスが深刻そうに告げた。
「アレン様。彼女の仰っている事は事実です。申し訳ないですが、アレン様のテイムに不備があったのでしょう」
「はあ!? フェニックス! アレンが悪いっつってんのか!?」
「待って! フェン!! あの頃は僕のジョブレベルは低かった。だからかもしれない」
「え……そ、そりゃ。そうだった、けどさ」
「僕がちゃんとテイムし直せば大丈夫な筈だ」
マーサは険しい表情を隠せなかった。
アレンは『魔喰虫』のテイムを解除せずに、テイムのし直しを宣言している。
頑なに、シンゲツを警戒し、テイムの解除を継続する意思があった。
ニノマエの証言通りなら、アレンがシンゲツに対する警戒は仕方ない事なのかもしれない。
だが――
「それは困るな。冒険者、いや『動物使い』アレン。お前がしている事は法律違反だ」
(え……!? 転生者!!?)
マーサがアレンを制止する前に、弁護士『ドゥーシュ』と聖女『クリスティ』が現れたのだった。




