悪役令嬢や学園生活でざまぁしない方の聖女
『弁護士』。
戦闘においては全く役立たないジョブだが、法整備が整った国家においては重宝されるレアジョブである。
『弁護士』は所属する国や市町村に整備された法を全て把握。
対象の事案に関する情報や証拠を取得可能。
法に基づく事案に限り、まさに無双状態と言える。
ドゥーシュは、自身が戦闘では無力を理解しつつも、裏で証拠や情報を収集し続けていた。
まずはBランクパーティー『コスモツリー』。
神からの進捗報告を聞き、ドゥーシュは『コスモツリー』の事案調査を行った。
『コスモツリー』の動向や現場から犯人の痕跡もない。
まさしく迷宮入りに突入しかけた事案に『弁護士』のドゥーシュが調査するとなり、ギルドは安堵していた。
一方で、何故この事案調査を優秀な『弁護士』ドゥーシュが担当すると自ら名乗り出たのか。
それも疑問視されていた。
ドゥーシュはジョブや立場上、数々の国家案件を処理してきた。
まさにエリート中のエリートなのに、ギルドの、それもBランクパーティーの事案に首を突っ込むのは違和感があった。
しかし、彼は優秀で信頼もあった為、今回の事案を完璧に解決すると期待されていた。
無論、ドゥーシュも警戒していた。
生き残る為、どうしても『コスモツリー』の調査をしなくては神の反感を買う事になる。
そして、自身の動向を他の転生者に探られる。
もし、他の転生者が接触してきたなら、共闘を組むしかない。
結局のところ、ドゥーシュ自身、シンゲツに勝る戦闘能力は持ち合わせていないのだから。
結果として、他の転生者がドゥーシュに接触をした。
想定外だったのは――接触してきた転生者は一人だけ。
しかも、ドゥーシュと同じく非戦闘ジョブ持ちの少女『クリスティ』。
クリスティのジョブは『聖女』。
女性にしか発現しないレアジョブであり、治癒や補助魔法しか習得できないデメリットがあるが、その代償に治癒・補助魔法の効力が絶大になるメリットを持つ。
普通に優秀なジョブだが……神からの試練では、全く以て役立たない残念なジョブである。
ドゥーシュは当初期待外れの結果に頭を抱えた。
しかし、不思議と流れはドゥーシュとクリスティに来ている実感があった。
『コスモツリー』の案件を調査した結果。
シンゲツではなく、シンゲツに寄生した『魔喰虫』……をテイムしているアレンが主犯であると判明した。
とは言え。
アレンが犯行を指示した訳ではない。
『魔喰虫』はあくまでアレンの指示――シンゲツの生存を継続させる為に、正当防衛で『コスモツリー』を壊滅させた。
次に人形使い『フランチェリナ』。
これもまた、火災原因自体は『フランチェリナ』の犯行。
『フランチェリナ』が不審死した原因については――ノイズで証拠や情報が塗りつぶされ、意味をなさなかった。
ドゥーシュも、こんな経験がなく、疑念を持った。
だが、神が始末するようにと命じた相手だ。何かした特別な事例なのだろうと一応の納得をする。
最後に『カミロ』……光盾『アイギス』の一件。
村の騒動で死亡したのは『カミロ』だけだったが、これは『アイギス』の過剰な魔力供給によるものが原因であって、罪状を追加できる案件ではない。
唯一、光盾『アイギス』の窃盗罪は問えるかもしれないが、肝心の『アイギス』周りの情報が塗りつぶされている。
「……それで、どうするの?」
クリスティの問いかけに、ドゥーシュは眉をひそめる。
「ここまで聞いて、お前の方はどう思った。『萩原』」
「前世の名前で呼ばないで。……『魔喰虫』が怪しいけど、念の為にシンゲツ本人もトドメを刺さないといけないと思う」
「はぁ、全然違う。いいか? 恐らくだが『魔喰虫』……ターゲットは光盾『アイギス』の無力化している。光盾『アイギス』については聖女のお前も把握しているよな」
「うん。あれは元々聖女教会にあったものだから。性能については古い文献しか残ってない眉唾程度の情報しかないけど」
「アレを無力化し、最悪扱えたなら……このまま正面から向かっても返り討ちにあうだけだ。いくら法的に追い詰めたとして力で圧倒されれば意味がない」
「同じ光魔法なら、私が対処出来る筈」
「あのな。そういう問題じゃないんだよ。とにかく、このままターゲットと接触するのは不味い。だから、状況を利用する」
「……他に何か手段があるの?」
「『動物使い』アレンの目撃証言で、アレンが暴君『ムゲン』を所有している旨があった……あくまで目撃証言だがな」
「『ムゲン』?」
「究極最強武器『ムゲン』……アイギスと同じく擬人化師に擬人化された武器の一つだ。……それを利用する」
★
「この魔力……ここにおったのは『アイギス』か?」
フワフワと黄緑がかった金髪を靡かせる少女が、アイギスが暴れた村に舞い降りていた。
あの事件の混乱から落ち着きを取り戻し、以前と同じD連邦の中継地として活気づいている。
だが、アイギスの膨大な光の魔力は大気中に漂っていた。
「彼奴と出くわすのが先とはのう……仕方ないが顔を合わせておくとするか」
少女が閃光のように大気を駆けていく。
ニノマエと次に接触するのが、転生者の誰かでもなく、全く無関係な第三者でもなく、新手の第四勢力とは誰が想像しただろうか。




