アレンという冒険者~某国某所のギルド受付嬢:Bさんの証言~
はあ、今度は何ですか。
……はい? 『アレン』について??
アレンは……シンゲツさんにイジメられていた『動物使い』の彼、ですよね?
確認したい事がある? はあ、わかりました。
ええと。アレン君は……私の知る限りは、まだまだ半人前の冒険者といったところですね。
正直、当時の実力は冒険者の基礎能力を身に着けていない。
一人でスライムを倒せるか怪しいくらいの戦闘力でした。
え? 何故、そんなレベルのアレン君が冒険者としてシンゲツさんのパーティーに加わっていたか??
ああ……そこは、ここ――C公国特有の事情があります。
ご存知でしょうが、C公国には低ランクダンジョンが存在しません。
ダンジョンの外から抜け出したモンスターですら、冒険者見習いが相手するレベルではないものばかり。
こうなると冒険者見習いどころか、初心者もC公国では成長できない環境にあります。
はい、そうですね。
普通でしたら低レベルのダンジョンがある他国へ向かう方が賢明でしょう。
しかし、世の中、そうはいきません。
たとえば、ご両親をなくした子供が何とかお金を稼いで、生活するにはどうしたらいいのか。
子供一人で他国に向かえるでしょうか。
少なくとも、この国ではそういった子供への支援は行われておりません。
なので、冒険者見習いの子供は他パーティーの下働きをします。
そのついでで、弱ったモンスターのトドメをお零れで貰い。
強くなるしか方法がないのです。
ええ、この国では当たり前の光景です。
アレン君もそうでした。
彼はスタンピードによりご両親を亡くし、一人で生活しておりました。
最初はアレン君も普通の仕事で日銭を稼いでいましたが、それだけでは家賃も払えず食事もギリギリの生活。
なので、彼もまた冒険者見習いとして、何とかシンゲツさんのパーティーに加入したのです。
何より……アレン君は他の子と違ってジョブが恵まれていなかったせいで、誰も冒険者見習いとして雇わなかったのが大きかったと思います。
だって『動物使い』ですよ?
個人の戦闘能力は優れていませんし、テイムできる動物だってダンジョンでは役に立たない。
だから……
ん? え??
『動物使い』の資格について?
ええと……すみません。私はあまり詳しくなくて……
国家『動物使い』試験……へえ、そういうのがあるんですか。
シンゲツの……なんですか?
寄生虫???
はっ? アレン君が??
い、いえ、私には分かりませんよ!? え、前にそんな事、私言ってましたっけ……???
あ、ああ!
アレン君がシンゲツさんを返り討ちにしたって話はしましたよ!?
でも、アレン君がシンゲツさんに寄生虫を放ったかは、その分からないと言いますか……
た、確かに、連想はできますけど。
虫に寄生されていたのは分かってましたよ!? 確かに!
ででも、あの、アレン君がそんな事するような子には、思えなくて。
……え?!
し、知りません! 私、知りませんでしたそんな事!!
『動物使い』の資格の詳細を把握していなかったのは本当で、そんな、罪になるなんて!
え。待って下さい!
まさかアレン君が捕まるとかならないですよね!?
彼も、資格とか何も知らないと思います! それに子供じゃないですか!
それを踏まえて、公正に判断して下さい。お願いします! あの子があんまりで……!!
★
「どうだった?」
「ああ、やっぱり。案の定って奴だ。全く、ギルドに勤めているんだからジョブの資格くらい把握しておくべきだろ」
C公国のギルドから出て来た弁護士の服装『法服』を纏った男性『ドゥーシュ』が悪態をつく。
『ドゥーシュ』も33名の転生者の内、1人である。
だが、彼には戦闘能力がない。
どう考えたって不利な状況で出る幕もないと半ば諦めていたのだが――
Bランクパーティー『コスモツリー』。
人形使い『フランチェリナ』。
彼らの敗北と、弁護士のジョブの立場から得られた情報を基に、ある仮説へ往きつつあった。
ドゥーシュは一息つきながら、ギルドの外で待ち構え、声をかけてきた少女と話し合う。
「やはり、本体は寄生虫――『魔喰虫』だ。あの神は『魔喰虫』の方を始末したいのだろう」
「でも、それは変。だったらシンゲツじゃなくて寄生虫を殺せって言わない?」
「あのな。現場の状況を見ても、シンゲツじゃなくて『魔喰虫』が暴れているのは分かるだろ。『魔喰虫』がシンゲツの肉体を乗っ取っている。だからシンゲツの中身は死んでいるし、『魔喰虫』がシンゲツみたいな扱いにしたんだ」
少女の方は納得いかない表情を浮かべていたが、ドゥーシュは「だが」と切り替える。
「これで欠片は揃った。合法的に『魔喰虫』を殺処分できる。これで俺がゲームの勝者だ……!」




