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夜明けまで恋して  作者: 鴉野 兄貴
飲み友達と杯と

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8/70

真夜中の闖入者

 「いらっしゃいませ。お一人ですか? 」

しばらくして扉が開き、女将が穏やかな笑みを浮かべる。


 その視線の先には、あまり見かけぬ顔の男。

「ええ。一人で申し訳ありません。今度来るときは彼女でも連れてきて売り上げに貢献しましょう」

いませんけど。そう男は言い切ってウインク。「女将さん。独身ですか? 」

女将の穏やかな笑みは動かない。「ふふ。お上手ですね」「そうですか? 」


 「……ホルモンうどんで……あとカンパチのおつくり。飲み物は後で」「はい」

常連二人はカウンターに座った見知らぬ青年に注意を向ける。


 青年と言うべきか、少年と言うべきか、老人というべきかわからない。

青年が口に運ぶのは丁寧に皮を剥かれた刺身。

皮際の表面に縦3つ、横2つの綺麗な切れ込みが入っている。

「美味しそうですね」青年はそういうと割り箸を割り口に運ぶ。

ニコリ。その笑みは子供のように見えた。


 二合酒を手酌する仕草は、老人のようだ。

不思議な青年に瞳を凝らす。二人。小柄で細身に見えるが、手足は太い。


 「兄ちゃん男前やなっ?! 」

出来上がった男に曖昧に微笑む青年。


「いえ、お兄さんには敵いません。私はこの通りですので……お姉さんのように素敵な女性もいませんし」

そういうと、出来上がった男以上に出来あがった女は顔を赤らめた。


 「二十歳そこそこでしょ? お上手♪ 」

そういってしなだれかかろうとするのだが、青年はずっと遠くに座っている。

出来上がっている男は女の行動に苦笑いしかけるが。「もっとこっちきいやっ? 」と愛想良く言い放つ。

この辺、年齢が生み出す余裕を感じさせる。


 「いえいえ。素敵なご夫婦の時間をお邪魔する気は……それに、私はお姉さんと同い年くらいですから」

そういって、女性的な笑みを浮かべ、手酌した二合酒を二人に掲げる。

「お二人の仲に。乾杯(完敗)」

……冗談らしい。その所作は酒が入り、少し女性的だ。


 「はははっ! 面白いわぁ?! 」

酔った男はカウンターから立って、青年の肩をペチペチ叩く。

青年は曖昧に笑っている。その笑みはなぜか艶かしい。


 「40前ですよ? 私」

「へっ? 」「へっ? 」

女将も一瞬だけ驚いたが、黙ってうどんを作る。


 生卵と混ざった甘いホルモンの味と、臭みのある焼きうどんが出る。

青年はそれを美味しそうに食べていく。見た目に反して大食漢だ。


 「……みえないね」「えっ? そうですか? 」

「ホント、上手いこと言うわねぇ。この子……キズちゃんもコレくらい言ってよ」「莫迦いえ」

二人は愉しそうにお互いの身体をつつきあう。偶然か故意か、時々手がお互いの局所に触れる。


 青年は柔らかな笑みを浮かべ、二合酒を口に含んだ。

仕事明け。今宵も彼は一人酒。

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