沙紀さん。ですか
「貴女が。ニシオさんでしょうか」
ある日、女の人が私を訪ねてきました。
凄い美人さんです。マリリン・モンローさんに似ているかもです。
「失礼ですが、貴女は」「春川沙紀と申します」
どなたでしょうか。記憶にありませんが。
見た目からしてまだ学生さんでしょうか。着ているものは質素ですが気品があります。
きっと親御さんに大事に育てられたのでしょうね。
「どうして、久さんに近づくのですか」「はぁ」
近づく。近づく。近づいた覚えは無いのですが。
確かに見合いはしましたが、ご飯を一杯食べないと損だと。
相手していたのはたっちぃだし。私は。
「成り行き。でしょうか」「やめてくれませんか」
むか。なんか見下されて嫌な気持ちです。背丈が低いから。と思っておきましょう。
「なにをですか」「久さんは私の婚約者です。泥棒猫のような真似はやめてほしいのです」
むか。
「人を泥棒呼ばわりしないでください」
「ごめんなさい。年上の方に感情的になって」
場所変わって近くの喫茶店。珈琲の香りの素敵なお店です。
沙紀さんはしゅんと落ち込んでいます。本当に綺麗な人です。
なんであんなのに惚れているんでしょう。もっといい男がいるじゃないですか。
森本さんみたいに素敵な人が世の中にはいると思います。
「完全に私の誤解なのですね」「私には立派な婚約者がいます。火乃さんと風鳴さんの陰謀です」
沙紀さんは学生さんという話は本当のようです。
沙紀さんは賢いですし、丁寧ですし、同性として憧れてしまいます。年下ですけど。
「やっぱり、ポチの事を気に病んでいるんですね。彼」「? 」
「由紀子さんがおっしゃっていたじゃないですか」「犬のお話ですか」
「彼、うちの犬を蹴り殺してしまいまして。それ以来ほとんど」
常識が無いとは。思っていましたが。頭が変な人だったんですね。あの方。
「状況が理解できないのですが」理解したくもないですが。
「大人しい子だったのですが」そんな可愛い犬を蹴り殺すなんて。酷い男です。
「そうです! 本当に一言も二言も喋ってくれないんですッ 」
「ですよね。何か言ったら余計な一言ですもんねっ 」
喫茶店の皆さんが冷たい視線を私達に送っているのに気がついた私たちはお店を出ましたが。
私達二人は無神経な男たちに対しての会話をとめることはありませんでした。




