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果樹園の魔法使い~カサヴァシアの祈り  作者: こんぎつね
1章 精霊が住まない世界 カサヴァシア
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15/19

レトへ

【前話までのあらすじ】

戦士たちは闘いの現場に戻り、果樹園パーティの死体と戦利品を回収しようとした。 しかし何ひとつ見つからず、彼らは捜索隊を編成して追跡を始めることにする。


その場に現れた銛使いの少女リコトを見た瞬間、オーフェルの瞳には抑えきれない憎しみの炎が燃え上がった。

15話 レトへ

◇◇◇


 リジへの攻撃は、伝説の防具・銀鴉ギンアがしっかりと防いでいた。

気を失ったのは、弾き飛ばされた際に後頭部を地面へ強く打ちつけたからだ。

銀鴉は――敵からの攻撃――こそ自動で防ぐが、自らぶつかってしまう衝撃までは守ってくれない。


 リジが目を覚ますと、果樹園パーティは次の行動の計画を話し合った。


「いつまでもこの森にいるのは危険だ。どこかへ場所を移したほうがいいな」


「あいつら、闘いのあとすぐに仲間を連れて戻ってきた。もしかして、遠くない場所に拠点があるんじゃないの」


「リジの言う通りなら、奴らとは反対の方角に進む?」


「いや、この先は森が深くなる一方だ。私たちはこの世界を知らなすぎる。エルフの私でも知らない森を、むやみに奥へ行くのは避ける」


 それぞれが意見を出すものの、情報があまりにも少なく、進むべき道を決めかねていた。


「それなら..ここから南に下れば街がある。このヴェルラ国の中央都市レトだ。馬で一日半はかかるけど、ここにいるよりは安全だ」


 オーフェルが、ひとつ有益な情報を落とした。


「この国はヴェルラというのか。しかし中央都市なら、さっきの奴らの仲間がいるだろ?」


「いいえ。あいつらはこの国の戦士じゃない。エルアドルの戦士だ」


「エルアドル..聞いたことある。確か..アーロス国を裏切った国。リジ、そうだよね」


「そうね。確かにそんな名前だった」


「あんたたち、異邦人だろ? アーロス国を知っているのか..まさか復讐の戦士か!?」


「え? 復讐の戦士? 違うけど..」


「なるほど..そういうことか?」


「アシリア、何かわかったの?」


「なぜあいつらが私たちを襲ってきたのかだ。今のオーフェルの言葉でわかった。 オーフェル、復讐の戦士とは..旧アーロス国の二十戦士のことだろ?」


 オーフェルは頷いた。アシリアは話をつづけた。


「ライス、復讐の戦士っていうのはゼルド国の戦士のことだ。おそらくこの世界では、いつの日かゼルド国の戦士たちが復讐のために現れる――そんな言い伝えが広まっているんだ。

ロレイスが語ったあの出来事から、どれほどの年月が過ぎているのかわからないが、伝説というのは、時に人の心に恐怖を植えつけることもあるんだ」


「ゼルド国? そんな国は知らないけど、私たちは小さいころから世界の終わりを聞かされているんだ。

――古のアーロス二十戦士が世界を滅亡に導く――って..

昔、世界を追放された戦士たちが復讐にくるんだ..」


「オーフェル、アーロス国の人々は――追放――されたんじゃないわ。裏切りに遭い、私たちの世界に来るしかなかったの。

ゼルド国っていうのは、アーロス国の血を継ぐ人々が暮らす国なのよ」


 ライスは“追放”という言葉に黙っていられなかった。

国を追われ、それでも誇りを失わずに生きようとするゼルド国の人々の名誉を、そんな言葉で汚されるのが許せなかった。


「しかし復讐の戦士が世界を滅亡させるってのは、少し怯えすぎじゃないのか?」


 ギガウは、大げさな伝説に少し呆れ気味に言った。


「そうか? あの白い魔獣ロレイスはそんなに弱い魔獣だったか。闘ったお前がいちばんよく知っているはずだ。

人の想いが、あのような強さを導き出したんだ」


 白い魔獣の圧倒的な強さを思い出したギガウは、すぐに考えを改めた。


「なるほど、わかったわ! だからこの森を警戒していたのね? きっとこの森のどこかにも天樹の扉があるんだわ」


「そうか..あいつらが有無を言わさず襲ってきた理由も説明がつくな」


 合点がいったギガウは、バスンと拳を打ち鳴らした。


「それじゃ、やっぱりこの国の中央都市レトは危ないんじゃないの?

この国の領土にエルアドル国の戦士がいるってことは、友好国…または属国なんじゃないの?」


 政治的な話となると、リジが鋭く切り込んだ。


「いいえ、リジさん。このヴェルラ国は永遠に中立を保つ国なのです。

長い歴史の中、国々の闘いを見守り続けてきた――ソメズの森を持つヴェルラ国の中央都市レトには、各国の戦士の立ち入りが制限されているのです」


 オーフェルの説明を聞き終え、ライスが静かに頷いた。


「うん、オーフェルの言葉通りなら、やっぱり私たちは中央都市レトに向かうのが最良の選択だね。 さっそくだけど、スレイ、頼りにしてるよ!」


 スレイは超感覚を集中させ、耳をピクリと動かした。


「ライスさん、街を、人の気配を捉えたよ!」


 こうしてライスたち果樹園パーティは、スレイを先頭にヴェルラ国中央都市レトへと出発した。

新投稿は火曜日、金曜日の22時に投稿します。お楽しみに♪

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