表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果樹園の魔法使い~カサヴァシアの祈り  作者: こんぎつね
1章 精霊が住まない世界 カサヴァシア
PR
13/18

フルーネ村の残響

【前話までのあらすじ】

森の中、リジとスレイに惑わしの術をかけようとする者がいた。

捕らえられた男は、アシリアを見るなり自分の母親と見間違える。

男の名はオーフェル。

それはエルフの言葉で――道を切り拓く者――という意味だった。

アシリアは、オーフェルが――花の詩に関わる者であることを察する。

13話 フルーネ村の残響

◇◇◇


 リジ、アシリア、スレイが持ち帰ったのは、マルコブタのほかに、オーフェルという若者であった。


「アシリア..突然ベッドからいなくなっちゃうんだもん。心配したよ」


「すまない、ライス」


「それで、その人は誰?」


「こいつはオーフェルだ。エルフの血を継ぐ者だ。おそらくは――花の詩の関係者だろう」


「そうなの!? いったいこの世界で何が起きているの?」


 ライスはアシリアに食いつくように質問した。

それは、一刻も早くロス・ルーラの魂を持つ子供を見つけたいという焦りからだった。


「落ち着くんだ、ライス。詳しいことは、このオーフェルから聞けばいい」


・・・・・・

・・


 ライスたちは、戦闘があった場所からわずかに離れた場所で休むことにした。

なぜ――わずかに離れた場所――にしたかと言えば、アシリアがそうしたほうがいいと言ったからだった。


 ギガウはミツメ木の種を植えると、身を隠せる場所と水の確保をした。


 ミツメ木の幹の中は簡易的な宿となり、根と葉は土と空気中の水分を吸収する。

幹に傷をつければ、湧き水のように水が滴るのだ。


 ライスは持ってきた乾いた黒い実を砕き、沸騰したお湯に投入した。

それを木製のカップに注ぎ、オーフェルに差し出した。


「これ飲むと落ち着くよ」


 オーフェルはカップを恐る恐る口元に近づけると、驚いて遠ざけた。


「こ、これは何ですか? 今まで嗅いだことのない匂いだ」


「それは魔女の飲み物だよぉ」


「えっ!」


「ちょっと、リジ、変なこと言わないでよ。

それはね、私の果樹園で育てているカルデの実をお湯で溶いた飲み物だよ。

大丈夫だから飲んでみて」


 オーフェルはゆっくり啜った。


「あ、甘い。それに鼻に残る、苦くて深みのあるこの香り.. すごくいい」


 オーフェルはさっきより多めにすすると、ハァと息を吐いた。


「どう、おいしい?」


「はい。僕、これ好きです」


「ほんと? よかった」


 オーフェルは、張りつめていた心がほどけていくのを感じた。

それが、この不思議な飲み物のおかげなのか、ライスの笑顔のおかげなのかはわからなかった。


 ただ、目の前の人たちは信用してもいい――そう思いたかった。


「僕の村は..この世界で数少ない、エルフの血を受け継ぐ村でした。村の名はフルーネ村。

僕たちはエルフの血を継ぐとはいえ、その血は薄まり、普通の人間と変わりません。ただ、長い歴史の中で、時々―祖先がえり―をする者がいました。

僕の母もそのひとりでした。母の名はルレイサ。

あの花の詩は、母が詠ったものです」


「なるほど..花の詩は、すべてのエルフが詠えるものではない。ルレイサの祖先に、森の巫女がいたのだろう」


「はい、アシリアさん。母もそう言っていました。

だから母の血を受け継ぐ僕も、惑わしの術が使えるのです」


「それで、フルーネ村で何が起きた?」


「それが..僕は知らないんです」


「知らない.. だと」


「 ..はい」


 オーフェルはうつむいたまま答えた。


「僕の留守中に起きた出来事です」


「なるほど.. そうか。

お前はいなくてよかったな。

 ..フルーネ村の人々は死に絶えたのだから。

これは、きっと誰かの裏切りにあったのだろう」


 アシリアは、氷のように冷たい目でオーフェルを見た。


「裏切り.. アシリアさんに何がわかるというのですか」


「 ..レゲッド。奴が操る緑の炎。

あれはフルーネ村の人々の悔恨の炎だった。

人が恨みを抱くとき、そこには決まって裏切りがあるものだ。

だが、ひとつわからないことがある。

なぜレゲッドがそんな炎を操れるのかだ..」


「そんな.. ま、まさかっ、あいつら!」


 オーフェルは顔を歪めて言った。


「オーフェル、何か思い当たることがあるの?」


 ライスがオーフェルに質問した時だった。


「みんな、静かに。精霊の縄張りに何者かが近づいている」


「あいつら、やっぱり確かめに来たんだね」


 戦闘があった場所には、ギガウが精霊の縄張りを敷いていた。

それはアシリアの提案だった。


 多くの殺しの仕事をしてきたアシリアには、わかっていたのだ。

奴らがもう一度、仕事の結果を確かめに来ることを。

それが、殺し屋の性なのだと。

投稿は火曜日、金曜日の22:00です。よろしくね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ