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果樹園の魔法使い~カサヴァシアの祈り  作者: こんぎつね
1章 精霊が住まない世界 カサヴァシア
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12/19

切り拓く者

【前話までのあらすじ】

意気揚々と基地へ戻ったレゲッドは、異邦人――果樹園パーティを始末したと班長タウルに報告した。 しかし作戦の目的は「異邦人を生け捕りにせよ」というものだった。 責任問題に焦るタウルとは対照的に、レゲッドは楽観的だった。果樹園パーティの武具を回収できれば、責任どころか褒賞がつくと考えていたのだ。

そして、武具回収作戦には新たな戦士が投入されることとなった。

12話 切り拓く者

◇◇◇


―ヴェルラ国領土 ソメズの森


 レゲッドの放った緑炎の濁流は、アシリアのルースの笛の音に触れた瞬間、木の葉へと姿を変え、風に散っていった。


 あの戦いの余韻がまだ森に残る中、ライスとギガウは、精霊の住まない世界で不調に陥ったアシリアの看病を続け、リジとスレイは食料の調達に出ていた。


 その時、スレイは微かに精霊の気配を感じ取った。

それは惑わしの術によって、2人を永遠に森へ閉じ込めようとする者の気配だった。


 しかし、その術者の首には、すでに氷のアシリアの刃が当てられていた。


「――動くな。動けば殺す。お前、何者だ」


「 ..」


 術者はまだ十代の若者だった。

後ろ手を掴むアシリアの力がわずかに緩むと、術者は暴れようとした。

しかし、アシリアの刃が首の薄皮を切ると、すぐに抵抗をやめた。


「お前が私たちを襲った奴らの仲間なら、このままここで殺す。緑炎を使った奴の仲間か?」


「 ..ふっ」


 術者は蔑むように、軽く笑いを漏らした。


「アシリアさぁん」


 スレイとリジが走り寄ると、術者はあきらめから全身の力を抜いた。


「こいつね。私たちに術をかけたのは。両手を上げて、ゆっくりとこちらを向きなさい」


 不調のアシリアに代わり、リジの剣先が術者の首に当てられた。


 術者がゆっくりと向きを変えた。

その瞳にアシリアの姿をおさめた瞬間、意外な言葉を発した。


「か、母さん!!」


 しかし、もう一度アシリアの顔を確かめると、膝から地面へ崩れ落ちた。


「母さん? こいつはいったい誰?」


 リジがアシリアを見た。

アシリアからは殺し屋の気配が消え、何かを察したような、悲しい眼差しをしていた。


「お前の名は何という」


「オーフェル..」


「やはりな..」


 アシリアとスレイだけが、何かを察しているようだった。


「ちょ、ちょっと、2人だけで納得していないで、私にもわかるよう説明してよ!」



「リジさん。この人はエルフです。いえ、エルフの血を持つ者です。オーフェルとは、エルフの言葉で――道を拓く者――という意味なのです」



「なるほど。だからアシリアを見た瞬間、母親に間違えたのね」



 しかし、リジは警戒を緩めず、オーフェルに剣を向けつづけた。



「すいません。あいつらの仲間だと思って..」



 オーフェルは膝をつき、うつむいたまま謝罪した。



「オーフェル。私たちは――花の詩に導かれて来た。何があったかを教えてくれないか」



「え..花の詩..?」



「私はリジ。私たちは、こことは違う世界から来た。まずは事情を話しなさい」


 リジは喉元から剣をどけたが、鞘には戻さなかった。


 そして.. 果樹園パーティは、オーフェルを通じて、この第2世界カサヴァシアがどのような世界であるかを知ることになるのだった。

投稿は火曜日、金曜日の22:00です。お楽しみに♪

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