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果樹園の魔法使い~カサヴァシアの祈り  作者: こんぎつね
1章 精霊が住まない世界 カサヴァシア
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緑炎の報告

【前話までのあらすじ】

老戦士の置き土産――緑炎のサンショウウオは巨大に膨れ上がり、今にも破裂しそうだった。

破裂すれば、緑炎によってライスたちは石と化す。

力を使い果たしたライスと、足を負傷したギガウを残して逃げることはできない。

リジが残る覚悟を決めた時、衝撃とともに緑炎が天を貫いた。

炎の濁流が迫る中、アシリアの笛の音が緑炎を枯葉へと帰した。

炎の正体――それは、エルフの無念と深い悲しみであった。

11話 緑炎の報告

◇◇◇


―エルアドル駐屯地


 ここはヴェルラ国領土内にあるエルアドル駐屯地。


 今、雄々しい牛の角を携えたヒューラという馬が、土煙を上げながら駆け込んできた。


「――どおぉ!」


 馬を制御する掛け声が、施設内の戦士たちの耳に届く。


「なによ、レゲッド。あんた無事だったの? てっきり遺体回収に行かなきゃいけないと思ってたわ」


 緑炎を操るレゲッドが馬をつなごうとしていると、小屋の小窓の向こうから女が声をかけてきた。


 それは労いとも、嫌味ともつかない調子だった。


「リコトか.. お前、まだ根に持っているのか」


「 ..別に。でも、私だったら逃げ帰るなんてしなかったわよ。デボォに聞いたもの。あんたたち、異邦人にやられて逃げてきたんでしょ」


「デボォはどうした?」


 レゲッドはリコトの言葉に取り合わず、自分の用件を優先した。


「治療室で寝てるわよ。情けない。やっぱり私が行くべきだったのよ」


 そう言い残し、リコトは馬小屋から離れていった。


「わがまま娘が..」



・・・・・・

・・



 レゲッドは馬をつなぎ終えると、施設内の作戦室の扉を開けた。



「おお、これはこれはレゲッドさんじゃねぇか。

どうれ..あっちに抜かした腰を忘れて来ちゃいないか?」


「ヴァーグ、お前じゃあるまいし..

何かこの部屋、やけに小便くさいの.. 

そういえば昔、闘いにチビった奴がいたのぉ」


「て、てめぇ」


 ヴァーグは髪留めを頭から振りほどき、長い髪をだらりと垂らしてレゲッドを睨んだ。


「やめろ、ヴァーグ。髪を留めておけ」


 作戦室には十人ほどが座れる円卓が置かれ、その奥──

エルアドルの瞳を模した紋章旗の下に、丸坊主の女戦士が静かに座っていた。

彼女は深く落ち着いた声で場を制した。


「..くっ」


 髪を留め直したヴァーグが大人しく席に戻るのを確認すると、

丸坊主の女戦士はレゲッドへ視線を向け、質問をはじめた。


「異邦人は特殊武具を持っていると聞いたが本当か?」


「特殊武具..ジュバグか。本当だ。五人のうち、巨躯の男は大きな槌を持ち大地を操った。ひらひらの布飾りの服を着た女は、空気を操る剣を持っていた。確認できたのは二人だが、他の奴らも持っていたかもしれない」


「なるほど。すると奴らは戦士か? やはり、はるか昔に異世界へ逃げたとされるアーロス国の戦士の末裔か。ならば伝承通り、復讐に舞い戻ったということか.. 本国に急いで知らせ、警戒態勢をとらねばなるまい」


「その必要はないぞ。全て始末した」


「なんだと!?」


「私の新たな呪具─緑炎の杖―はなかなかいい。今頃、奴らは爆流炎に呑まれ、彫刻になっている。ここに飾っておくか?」


「馬鹿者! 貴様、ランザン様の勅令を忘れたか!」


「あ~あ、こりゃ大変だ。タウル班長、彫刻の横にあんたの首も飾られそうだな」


 椅子に深く座ったヴァーグの足が、円卓の上にドカリと置かれた。


「なに、タウル班長、心配することはない。奴らの武具も本物かもしれない。あれを全て手に入れれば、むしろランザン様から褒美をもらえる」


「..そ、それならば、回収に行かねばなるまい」


「手に入れればな.. うまくいくもんかねぇ」


 そう言うと、ヴァーグは椅子を回転させ、円卓から立ち上がった。


「ヴァーグ、どこへ行く」


「回収に行くんだろ。なら、急ぐ必要があるだろ、班長様」


 そのままヴァーグは作戦室の扉を開け、出て行った。

投稿は火曜日と金曜日の22:00です。

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