表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

第5話 忍び寄る影と、ティータイムですの♥

 翌日。

 王都の午後は、驚くほど静かでしたの。

 ――にもかかわらず、テーブルの向かいには、昨日火花を散らしたニンジャお嬢さまが座っております。


「改めてお招き感謝しますわ。まさか貴女とお茶することになるとは。」

「ええ。紅茶の香りと爆薬の香り、意外と共通点がありますの♥」


 アヤメ・ツバクラ嬢。

 東方公爵家の令嬢であり――そして今、殿下の新しい婚約候補。



「そういえば、殿下から伺いましたわ。

 “元”婚約者が、まだブーメランを投げているとか。」

「まあ。元という言葉は便利ですのね。

 呼び方ひとつで、過去も人も軽くできますの♥」


 私は笑いながらも、カップの底に沈んだ紅茶の渦を見つめた。

 沈むものと、回るもの。――軌道の違い。


「殿下も、誤解しているんですのよ。

 わたくし、ギルドに入ったのは“立ち直るため”ではなく、“立ち向かうため”ですの。」

「立ち向かう?」

「名誉ですの。失われた名は、放っておいても帰ってきませんの♥」



「ふふ……そういう貴女、嫌いじゃないわ。」

 アヤメはカップを置き、軽く視線を上げた。

「けれど、このお茶会が終われば、私は殿下の婚約候補。

 貴女は、破棄された側。――つまり、敵ですわ。」


「敵なら結構。

 ですが、お忘れなく。

 ――私のブーメランは、必ず帰ってきますの♥

 名誉も、想いも、全部まとめて。」


 アヤメの唇が、わずかに笑った。

「……だから貴女は危険なのよ。

 回転の理屈で、運命まで巻き取るんですもの。」



 ちょうどそのとき、扉を叩く音。

 ギルドの使者が慌ただしく報告する。

「緊急任務です! 地下水路で異常反応、殿下の視察中に魔物が――!」


 アヤメと私、同時に立ち上がる。

「……殿下が?」

「どうやら、助ける側と見られているようですわね。」

「では、証明して差し上げますの。

 どちらが本物の令嬢か、軌道で決めましょう♥」


 紅茶の香りが冷めていく。

 二人の影だけが、まだ揺れていましたの。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ