第3話 狩猟ギルドの仲間たち、ですの♥
ギルド生活、二日目ですの。
昨日の爆風事件以来、〈真銀の風〉では私の話題で持ちきり。
――“爆裂令嬢”“回転災害”“人間兵器”。
呼び名が増えるたびに、私の社交ステータスが上がっていく気がいたしますの♥
そんな私に、ギルドマスターは満面の笑みで言いました。
「セレスティア嬢、君に監視役をつけようと思う」
「まぁ。信頼の証ですのね♥」
「……そう思うなら、ありがたい」
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紹介されたのは三人の狩猟士。
剣士のレオン。常識と胃薬を兼ね備えた青年。
毒魔導士のミラ。白衣姿で眉をひそめる理論派。
獣使いのノルン。リスを肩に乗せた天然少女。
「あなたが……あの爆発を?」とミラ。
「ええ、少し風通しを良くしただけですの♥」
「王都の地形が変わってたけどな」とレオン。
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初任務は、地下の毒霧地帯に現れた巨大トカゲの討伐。
私たちは湿った洞窟を進みます。
「空気が悪いわね」とミラ。
「硫黄と酸素が反応して有毒ガスを生成していますの」
「……そんなことまでわかるの?」
「ええ。貴族教育では、紅茶の香りの抽出から学びますの♥」
ミラが息を呑む。
「あなた、毒学の基礎理論を独学で再構築してる……!」
「お褒めにあずかり光栄ですの。――そろそろ、投げてもよろしいかしら?投げても?なげ」
「何なのこの人」
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私は静かにブーメランを抜いた。
鏡のように輝く刃の裏に、薄く紫の粉。
「待て、その粉は!?」とレオン。
「“霞氷”。空気に触れると一瞬だけ凍りますの♥」
投擲――。
ブーメランは青い閃光を描き、毒霧を切り裂いた。
巨大トカゲがうねり声を上げた瞬間、
粉が爆ぜ、霧が一斉に凍結する。
鈍い音とともに、ブーメランが弧を描いて戻ってきた。
私は指先で軽やかに受け止め、微笑む。
「ご安心くださいまし。私のブーメランは、絶対に返ってきますの♥」
ミラは息をのんで呟いた。
「……美しい。毒も、軌道も、理論も完璧」
「美しさとは、制御と回転の調和ですの。
それを乱すのは、だいたいレオンですわね♥」
「おい!」
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討伐完了の報告を終え、帰還する途中。
ノルンがぽつりと言った。
「ねぇ、セレスティアさん。ブーメランって……どこまで飛んでも帰ってくるの?」
「そうですの。帰ってこないなら、それはまだ途中ということですの。」
その言葉に、三人とも黙った。
私は前を向く。
この軌道の先に、きっと私の居場所がある――そう信じて。
いい話




