第2話 ギルド入門と、ブーメラン・ボムですの♥
王都最大の狩猟組織〈真銀の風〉――。
その重厚な扉を、私は今日も優雅に押し開きましたの。
「失礼いたしますの。新人、セレスティア・アーデンベルクですの♥」
受付嬢が書類を落としました。
奥の席の屈強な男たちは口をぽかんと開けています。
「……あの、ここは貴族の面接会場ではなくてですね」
「承知しておりますの。狩りの舞踏会ですわ♥」
そう答えて微笑んだ瞬間、彼らは悟ったようです。
“あ、こいつ本物だ”と。
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「新人の担当は俺か……」
ため息混じりに現れたのは、剣士の青年――レオン。
黒髪で常識人。つまり、私の対極。
「今日はイノシシ退治だ。簡単な任務だから派手な真似は――」
「承知いたしましたの♥」
私はにっこり。
レオンはその笑顔を見て、もう一度ため息をつきました。
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森の中、獣の気配。
私はスカートの裾を軽く結び、ブーメランを構えます。
「ま、待て、そんな服で動けるのか!?」
「貴族はどんな場でも優雅ですの♥」
イノシシの咆哮。
その瞬間、私は腰のスイッチを押しました。
「行きますの――ブーメラン・ボム、発射ですの♥」
青銀の軌道が弧を描き、眩い閃光が爆ぜました。
地面が震え、レオンの髪が逆立ちます。
「ぎゃああああっ!?」
「ふふ、軌道完璧ですの。……あら?」
ブーメランが帰ってこない。
次の瞬間――上空からズドォン!
煙の中、私は土埃まみれで立ち上がりました。
「少々タイミングを誤りましたの♥」
「少々どころじゃねぇ! 森がえぐれてるぞ!」
確かに、イノシシも森も見当たりません。
風だけが通り抜けていきます。
「……ですが、目標は確実に仕留めましたの」
「いや、それ“仕留めた”って言わねぇんだよ!」
レオンは叫びながらも、私の背後を見て目を見開きました。
ギルドの使者たちが拍手していたのです。
「新人のわりにやるじゃないか!」
「見事な軌道だった!」
私は軽くお辞儀をしました。
「私のブーメランは絶対に返ってきますのよ♥」
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その夜、私はギルドの掲示板で見習いから“正式狩猟士”に昇格。
ただし備考欄にはこう記されていました。
『破壊範囲:王都三十メートル』
――優雅とは、規模の問題ではありませんの。




