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星屑の傭兵  作者: 磯野海月
第2章
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急襲ガルトザム

ウォーーーーーーン!ウォーーーーーン!ウォーーーーーーン!

マリアとマーフィーが作業を続けていると、突然、緊急サイレンが数秒間だけ鳴る。しかしその後、何ごともなかったかのように、また静かになってしまった。


「今のは、何か変ね」

マリアは慌てて腰にぶら下げたツールベルトから、携帯端末機を取り出すと操作をし始めた。

「どういうことなんですか?」

マーフィーは携帯端末機が空中に四角く投影した、ホログラフ・ディスプレーを覗き込む。

「これは、大変だわ! 通常回線は内部も外部も全部アウト。見ての通りこのコロニーの通信および管制ネットワークが、完全にハックされたようね」


「じゃあ、さっきのは?・・・」

「つまり、このコロニーの管理システムが、物理的に完全に敵の手に陥ちたということだわ」


「敵?」

マーフィーはマリアの説明を聞いても、突然このコローニーで、いったい何が起きたのか、理解出来ないでいる。


ふいに、域内放送のスピカーから音声が流れ始めた。

「何が、起きたんですか?・・・」

「し! 静かに、これは、このコロニーに侵入した敵の放送よ!」


マリアとマーフィーは、スピーカーの前に釘づけになった。


「我々は傭兵チーム、ガルトザムだ、・・・ゴールデン・スピアの協力者に告げる。こちらはこのコロニーの中枢を完全に制圧している。現在、男3名女5名の人質を確保している。こちらは交渉の用意がある。域内ネットの第一映像にチャンネルを合わせろ」


域内放送はそれを五回ほどくり返して終わった。

しまった!・・・。どこかで、情報が漏れていたんだわ・・・。

マリアはがくっと、うなだれた。


「どうして!? こんな場末のさびれたコロニー占領して、何か利益があるんですか」

「それは、恐らくこれのせいよ」

マリアは目の前にある二機のアサルトマシーンを指さした。


「これはそんなに価値があるマシンなんですか?」

「このマシンは、将来は世界情勢をも左右する可能性がある。としか今は言えないけれど」

「マリアさん、このコロニーへは、だれかほかのメンバーと一緒に来てはいないんですか?」

「実は、わたし一人なの・・・。このアサルトマシーンの受け取りのミッションの立案から、実行まで全部」


マリアはそう言って、携帯端末機を操作する。


「域内ネットの第一映像チャンネルに、今、アクセスするわ。無線を経由して間にダミ

ーの端末を使って、こちらの居場所は相手にサーチされないからだいじょうぶよ」


「そんな大事なマシンなら、どうして一人なんかで・・・」


マーフィーはそう言いかけたが、マリアの表情を見て、語尾を濁らせた。


携帯端末のモニターに域内ネットの映像が映しだされる。

画面では、コロニーのコントロールセンターの職員らしい数人の男女が、後ろ手に縛りあげられているようだ。


中央に、リーダーらしい戦闘サイボーグが出て来た。

顔面以外はほとんど機械化しいて。その容貌はかなり凶悪そうだ。

そのサイボーグは、カメラの方を向くと、話しだした。


「おれは傭兵団ガルトザムのジャッカルだ。このコロニーの住人たち、よーく聞け。

お前たちはゴールデン・スピアとは何も関係が無い。さぞ迷惑なことだと思っているだろう。

おとなしく我々に、新型アサルトマシーンを差し出せ、情報をよこすだけでもいい。

目的さえ達成すれば、我々はここからすぐに去る。

だが、こちらの要求が受け入れられなければ、こういうことになる」


ジャッカルは人質の中から一人若い女性を引っ張りだしてきて、髪の毛をつかむと、無理矢理口を開かせ、そこに銃を突っ込む。


「イヤーー!! たすけて!」

若い職員らしい女性は、膝まづいたまま哀願し涙を流している。


そこに、中年の管理職らしい男性が前に飛び出して来た。

「やめろ、何をするんだ! 私はこの管理セクションの責任者だ。彼女らが逃げ遅れたのも、みな私の責任だ。殺すなら私から先にやれ」


「そうか・・・。じゃあ、お前から死ね!」

表情をまったく変えずに、ジャッカルはその姿勢のまま片足で、中年の男性を蹴りあげた。

ドゴッ!と鈍い音がしたかと思うと、武装サイボーグの金属製の尖った爪先が、男性の下顎から脳天まで突き破っている。

男性は血潮と脳漿を巻き散らして、その場に崩れた。

「アァァァァァァ!!!」

若い女性は、そのしぶきをもろに顔面にかぶって、口に銃を突っ込まれたまま、気絶してしまった。

「これは掃除が必要だな・・・」

ジャッカルは自分の体に着いた血糊を、犠牲者の上着でぬぐった。


「もう見ていられない!」

マリアはモニターのスイッチを、拳でドンと叩くように切った。


 なんと声をかけたらいいのだろう・・・。

マーフィーはうつむいたマリアを、心配そうに後ろから見守る。

「こんなことになってしまって、本当にごめんなさい。あなたがわたしを、あいつらに突き出したって構わないわ」


「そんなこと、できるわけないじゃありませんか」

マリアは両手の拳を強く握りながら、肩を小刻みに震わせている。

マリアがこんなことをしているのも、何かよほどの訳があるのだろう。

マーフィーはそのことについて詮索するより、何かマリアの役に立ちたい・・・。そう思った。


「マリアさん・・・」

「もういいわ・・・。後はわたし一人でなんとかするから、あなたは危険な目に会う義務はない。だから、早くここから逃げなさい」

「でも・・」

「早く行って」


 マリアはマーフィーに無理に微笑んでみせた。

その辛そうな顔を見たとたん、それまでためらっていた言葉が、マーフィーの口を突いてでた」。


「僕に・・。僕に手伝わせてください!」

「何言ってるの。死ぬかもしれないのよ」

「やりかけた仕事は、最後までやらないと気がすまない質だから」

「わたしは、傭兵チームに入った時から覚悟はできているけど、あなたは民間人でしょ」

「僕もあなたも、技術者に変わりはないでしょう。

アサルトマシーンを動かすことなら、僕の方が、まだ、あなたよりもましだと思います」


マーフィーのその言葉に、マリアは驚いてマーフィーの顔をじっと見つめる。

そして、ほんの少しの間だけ目をつぶって考えると、マーフィーの両肩に手を置いて。

「ほんとうに、ばかな子ね・・・。でも、ありがとう」

目を細めながら微笑んだ。


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