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星屑の傭兵  作者: 磯野海月
第2章
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小惑星T-623

プロトタイプか?。

こんなタイプのアサルトマシーンは、今まで見たことがないな・・・。

一人の少年が、ブルーメタリックに塗装された二機の新品のアサルトマシーンを、テラスから見下ろしている。


 現在は休止しているドックに、仕事の内容も告げられぬまま、今日、彼はたった一人呼び出されて来ていた。


彼の名は、マーフィー・ウォン17才。この小惑星コロニー T-623のオータム フアクトリーの整備士兼テストパイロットだ。


「ちょっとー、そこの君! 暇ならこのマシンのキャリアー(搬送用固定台)のマニュアル・リフトオフ(手動解除)手伝ってくれない?」


よく見るとアサルトマシーンの下から、作業ヘルメットをかぶった若い女性が顔を覗かせている。

「すいませーん、今行きまーす」

マーフィーは、リフトで下に降りて行った。


「ここはドックなのに居住区との続きで、人工重力が1Gなっているから作業がしにくいわ」


「あなたが、依頼主ですか?」

「そうよ」


きれいな人だな・・・

近くで見ると、歳は二十二三だろうか。無造作に束ねた栗毛色の髪が、ヘルメットの間からこぼれている。


「はいこれ」

彼女はいきなり、マーフィーに工具バッグを手渡した。


「わたしは右側の4箇所を解除するから、あなたは左側の3箇所をお願い」

マーフィーは、彼女が中腰になって機体の下に潜っていくのを、後からついていく。

狭い機体の下では、ちょうどマーフィーの顔のすぐ前に、ジーンズを切って作ったショートパンツが、形のいい彼女のヒップにピッタとリフィットして、揺れている。


思わず、マーフィーは目のやり場に困って、うつむきかげんになる。そのせいで、マーフィーは目の前のでっぱりに、頭をゴツンとぶつけてしまった。


「あいた!」

「なにやってるの、ヘルメットつけてないからよ」


彼女は後ろを向くと、頬を膨らめ、吹き出しそうになるのをこらえながら、マーフィーを見ている。

「ぼくをからかってるんですか?」


マーフィーは少し赤い顔をして、彼女を少し伏し目がちに見た。

「・なわけないでしょ! そんなことより仕事、しっかりお願いねー」


彼女は少しわざたらしく微笑むと、右に進んでいく。

「これは最新型のアサルトマシーンなのに、マニュアルで機体を固定しているなんて、かなり珍しいですね」

マーフィーは工具を取り出すと、何気なく彼女に聞いてみた。


「タイタンで造られたこの機体は、今までのマシンとは全く異なるコントロールシステムを採用していて、メインシステムを起動しない限り、外部からの制御はほとんど受け付けないのよ」


「タイタンで造られた全く今までとは異なるシステム・・・。それってもしかして、EOT(超古代技術)のことですか?」

「それ以上の事はもう話せないわ」


彼女は急に表情を固くして、そう答える。

「すいません、余計なことを聞いしまって」

「いいのよ・・・。それより男の子はそれぐらいのことで、気安くあやまるものじゃないわ」


「すいません」

「ほら、また言った」

彼女が可笑しそうに声を出して笑う。それに連られるようにして、マーフィーも笑ってしまった。


EOTとはエンシェント・オーバー・テクノロジーの略称である。

太陽系の各地の開発が進むにつれて、火星やイオ、タイタンなどで謎の高度な文明の遺物が発見された。測定の結果、その年代は推定約200から300万年もの過去の物であることが判明した。


この中には、人類がかろうじて使いこなせる物も幾つか存在し、実用化された物もあるが、多くは人類の現在の科学力では解析不可能な代物であった。


「あなたって、面白い子ね。わたしは、マリア・エイブラム。・・・ある傭兵チームに所属している技術者よ」

「僕は、マーフィー・ウォンです。ここのオータムファクトリーで、整備士とかテストパイロットなんかをやってます」


「あなた、年はいくつ?」


「17です」


「まだ若いのに、たいしたものね」


「そんなに器用っていうわけじゃないんです。ここは過疎地域で、慢性的な人手不足なものですから」


「アサルトマシーンの扱いは?」


「操縦も動かすくらいなら、少しできます」

少しもじもじしながら、電動スパナーを手に持つと、マーフィーは作業にとりかかった。


そのころ、小惑星T-623の出入港管制室では、エンジンのトラブルを理由に無理矢理入港して来た、一隻の小型貨物船への対応に追われていた。


「まったく!なんという礼儀知らずの船だ」


管制室長はモニターに映っているその船を、いまいましそうに眺めている。

その時、突然管制室のドアが開いて、見知らぬ男が中に入って来た。


「何だね、君は、ここは関係者以外立ち入り禁止だよ」

その男はニヤッと笑うと、サブマシンガンを両手に構える。

「何を、馬鹿なことを!」

「平和ボケというやつか、クソ田舎だからか。馬鹿なのはお前たちの方だ、こんなに易々とコロニーの中枢に、外敵を進入させてしまうんだからな」

ズダダダダズダダダ!!

サブマシンガンの銃声が、10秒ほど管制室に鳴り響いた。


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