コロニーでの激闘 その3
5分ほどで、スチール・ホッパーは公園に到着した。
ティロールから通信が入る。
「シャドウ! 敵のアサルトマシーンが緑地帯から、飛び立ったぞ!」
「ああ。こっちでも目視で確認したところだ」
シャドウが見ている外部モニターの隅に、ルーが両手を合わせて、初動を遅らせてすまない! というポーズをとっている。
「行き先は、やはり、首相府か?」
「いや、違うようだ。Dー3地区から4地区?何の目的で・・」
「これから、追いかける」
「了解、こっちも敵の目的を調べる」
スチール・ホッパーは急発進して、アサルトマシーンを追跡する。
「ルー! 聞こえるか? 道路を走っていたんじゃ、追い付けない。少し荒い運転をするけど、しっかりつかまっていてくれ!」
シャドウは外部スピーカーから、ルーに呼び掛ける。
「荒い運転って、今でも十分荒っぽいぞ! エッ!?」
ルーが前方を見ると、高層ビルが正面に立ちはだかっている。
「ワッ!!よせ!やめろ!!ぶつかるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
スチール・ホッパーは高層ビルに衝突する寸前に、ロケットノズルを全開し、ビルの壁面を一気に垂直に駈けあがった
。
「ウキャァッ!!オワッ!!アヒャー!!」
スチール・ホッパーは、高低差のある高層ビル群の屋上を、次々と飛び移る。その度に機体が大きくバウンドし、乗っているルーが跳ね上げられた。
これじゃ!フツーの人間は、乗っていられない! だから、あたしに一緒に来いなんて、言った訳だ・・・。
ルーは少しガッカリしたが、今はそれどころではない!
スチール・ホッパーは今は、高さ200メートルはありそうな、高架の上を走っている。
そこにティロールからまた、無線が入る。
「シャドウ! どうやら、アサルトマシーンのやろうとしていることが、分かったぞ!」
「こんな、郊外の外れじゃ、もうすぐエアロックだ、まさか?・・エアロックか!」
「どうやら、そうらしい。D-4地区、第8区画。今は閉鎖されているが、ここにコロニー建設時に使用された、工事用の大型エアロックがある」
「そこを攻撃された場合、どうなるんだ?」
「ここは、三枚の隔壁でしきられているが、ロックを破壊すれば、それぞれ簡単に開く。このエアロックが開放すれば、このコロニーの空気は計算だと、15分で完全に無くなる」
「やつら、とうとう、講和会議を失敗させるために、大量殺戮をやる気だな」
「今、やっと緊急避難命令が発動されて、住民がシェルターに避難を始めたが、避難の完了まで、病院や学校まで含めると、最低1時間はかかるぞ」
「分かった! 僕とルーとで、なんとか阻止する」
シャドーとルーを乗せた、スチール・ホッパーは工事用大型エアロックのあるコロニーの外れに、たどりついた
。
「チクショウ! もう、一枚隔壁が開いているぜ!」
ルーが見上げると、高さ100メートル幅80メートルもある、大きな隔壁の中央が、既に、観音開きになっている
。
「1秒でも惜しい! ルー、このまま中に入る!」
二人を乗せたスチール・ホッパーは、速度を緩めずにエアロック内に突入した。
「間に合った!」
正面、300メートル先に、敵アサルトマシーンが、ホバリングしながら、レールガンを撃ち込み、隔壁のロックを破壊している最中だ。
「敵は正面後ろ向き! もらった!」
ドシューッ! スチール・ホッパーは、二門のレールガンを同時に発射した!
ドッカーン!! レールガンの砲弾は、正確にアサルトマシーンの後部エンジンを直撃し、敵は炎を上げながら落下した。
グウラシャーンンン!! アサルトマシーンが墜落すると、その衝撃で二枚目の隔壁が、開く。
「なんとか、間に合った」
シャドウはスチール・ホッパーを止めた。
ピッピピ、ピッピピ!
その時! スチール・ホッパーのコマンド・ナビゲーション・システムから、ミサイル接近のアラームが鳴る。
「マズイ! 二機めだ! ルー! しっかりしがみつけ!!」
スチール・ホッパーはロケット・ノズルを最大噴射で発進する。
「ウワッ!」
ガクン! あまりの急加速で、さしものルーも、もう少しで振り落されそうになる。
ドグワーッンンン!!!
間一髪! スチール・ホッパーの後方にミサイルが着弾した。
「あちっちちい!!」
爆炎が後ろからスチール・ホッパーを舐める。
「ルー! 大丈夫か!」
「フ~! なんとかね~。自慢の銀毛がだいぶ焦げた」
に右に曲り、そこで止った。
「シャドウ!これから、どうするんだ」
「二手に分かれる。僕がおとりをやるから、ルーはスチール・ホッパーのレールガンを片方外して、敵を後方から狙撃してくれ」
「よし! 分かった」
スチール・ホッパーのレールガンは、機体から外してバズーカ砲のようにして使用することもできる、ただ、その重量は30キロにもなり、普通の人間では、到底撃つことはできないだろう。
「今、狙撃に最適なポイントを探す」
シャドウはスチール・ホッパーのコマンド・ナビゲーター・システムでベスト・ポジションを見つけた。モニターに立体図が投影される
。
「僕はこの通路まで、敵を誘導してくるから、ルーはここまで登って、待機。後は自分の判断で狙撃してくれ」
「地上からじゃだめなのか?」
「だめだ。地上からの角度だと、この出力のレールガンじゃ、アサルトマシーンの防御シールドを貫通できない」
「しゃあない! やってやるよ」
「頼む! 確実に後部のエンジンを狙ってくれ。レールガンは機体から外すと、自動装弾できないから、一発だけだ」
「撃ち損なえば、反撃を食らって、おじゃん、か・・・」
「僕は君を信じている! 10分で、この位置まで敵を誘導してくる。それじゃ!」
シャドウはスチール・ホッパーに乗って発進した。
「信じてる! か・・・。嬉しい響きだな。・・・」
エヘ、ナーンチャッテ! ルーは少し照れている。
ルーは指示された、地点の下までやってきた。
「こんなもんをかついで、10分以内にここを登るのか~! こりゃ、あたしでも厳しいぞ~・・・」
見上げると、シャドウの指定した狙撃ポイントは、50メートルも上にある、人がやっと一人入れるくらいの穴だ。しかも、そこまで登って行くのに、掴まれる箇所は壁面のパイプくらいしかない。その上、壁面はオーバー・ハングしている。
ルーは覚悟して登り始めた。
「ハア、ハア、ハア~、やっと着いた」
ルーは3分ほどで、壁面を登りきった。かなり、きつかった様子で、壁面の穴に入ると、片膝を立ててあえいでいる。
休む間もなく、ルーはレールガンを固定して、狙撃体勢をとる。
「もう来た!」
一分も早く、レールガンのターゲットスコープ・モニターにスチール・ホッパーの姿が映る。スチール・ホッパーは不規則蛇行運転しながら、後方のアサルトマシーンの攻撃をかわしつつ、こちらに向かって来た。
チャンスは一度だけ・・・。
スチール・ホッパーが発射角の斜め前方を走り抜ける!後に続いて敵のアサルトマシーンが、狙撃のベストポジションに侵入した。
「ばっちり! いただき!」
ルーが発射スイッチを押そうとした瞬間、アサルトマシーンの後部から、二発、ミサイルが発射された!
見つかったの!?・・・。
プワッと冷や汗が吹き出す。
「ワッッッ!!!」
ルーはレールガンを発射するが、ソリッド(弾丸)は一発のミサイルに命中しボンッと爆発する。
ボンン! 続け様に、ルーの居る穴を、ミサイルが襲う!
「ヒヤーーー!!!」
ブワァン! ルーは穴から飛び出し、壁面にしがみつき、寸でのところで直撃を免れる。
アサルトマシーンはホバリングして停止し、レールガンの照準をルーに合わせた。
やられるっ!
グアッツン!!
そこにスチール・ホッパーがジャンプして、体当たりをかけて来た!
アサルトマシーンはグラッと揺らぐが、防御シールドを展開しているため、あまり損傷は無い。
スチール・ホッパーは着地と同時に方向転換し、アサルトマシーンに向けてレールガンを発射しようとしたが、今の衝撃でレールガンが故障してしまったようだ。
「チッ!しまった、バリアー、マキシマム展開!・・・これもだめか!」
ドキューン! ドキューン!
スチール・ホッパーはアサルトマシーンからレールガンの応酬を受ける。
ドドゥッワ~ンン!! スチチール・ホッパーはレールガンの直撃を受け大破し、炎を吹き上げ横倒しになる。
「シャドウゥゥゥゥゥゥーー!!!」
壁につかまりながら、ルーは絶叫した。
「あたしなんかのために! あたしなんかのために! バッキャッヤローーーーエッ???」
ルーには見えた。炎の中から、人影がゆっくりと、出てくるのが。
「シャドウ!? シャドウなの!!」
燃え上がる炎から、シャドウがゆっくりと姿を現した。衣類も焦げていなければ、怪我もないようだ。ただ、こころなしぼんやりしているように見える。
「シャドウ! 何やってんだ! 早く逃げろ!」
ドキューン! レールガンのソリッド(弾丸)がシャドウを直撃する!
カミサマ!! ルーは一瞬目をつぶった。
「そんな! 信じられない!?・・・・・」
目を開けると、シャドウはレールガンのソリッドを片手でつかんでいる。シャドウが軽く指を動かすと、鋼鉄製のソリッドは、まるで砂糖菓子のようにポロポロと崩れる。
「ウヲォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
シャドウは防御シールドを展開している、敵アサルトマシーンに突進した。
「ヤメロー!!シャドウ!!黒焦げになっちまうぞー!!」
グワーーーーーンンンン!!!! バリバリバリバリ!!!!
シャドウとアサルトマシーンのバリアーが正面から衝突し、干渉波が発生し、火花があたりに飛び散る!
機体を下に向け、推力数100トン! アサルトマシーンはエンジンを目いっぱいふかす、だが、その機体はピタリと止った。
「そんな、バカなことが!」
ルーは自分の目を疑った。こんなことは、どんな戦闘サイボーグやバイオ・ヒューマノイドのパワーでも出来ない芸当だ。
「ヌガガガァァァァ!!!!!」
シャドウは素手で防御シールドを一気に引き裂く!
ピシッ! アサルトマシーンの機体に無数の細かい亀裂が広がった。
「爆発する!!!」
ルーは思わず、目をつぶった。
ボシューーーン!! アサルトマシーンは、爆発ではなく、軽く弾けるというような感じで、細かい砂粒くらいの粒子になって、飛び散った。
あたりに立ちこめた細かい砂煙が晴れると、シャドウがポツンと立っている。あの全長18メートルもあったアサルトマシーンは、砂粒になって四散し、中のパイロットはおろか、ネジ一本見当たらない。
「シャドウー! 平気か・・・」
「ルー・・・大丈夫だ」
ルーは壁面から降りて、シャドウに近づく。今見たシャドウの特殊能力のあまりの凄まじさに、驚いているようだ。
「すごかったな。アサルトマシーンを素手で破壊してしまうなんて・・・」
「暴走しそうになった。自慢できることじゃない・・・」
シャドウは何か、ほっておいてくれという風で、ルーに背を向ける。
・・・火星でみたシャドウの戦いも、すごいものだった。
ルーはシャドウと自分の隔たりを、思い知らされたように感じた。
だが、ルーにはそんなことは、どうでもよかった。。
「危ない思いをさせてすまない。ルー、怒っているかい?」
「ウウン、全然」
ルーは、はっきりと答えた。
・・・あたしがシャドウが大好きなのは、どんなことがあっても変らない。火星で、あたしが野良猫みたいに、心がズタズタになって、体もボロボロの致命傷だったのを、命をかけて助けてくれたのは、シャドウなんだ。
・・・心の底まで受け入れてくれなくてもいい。シャドウはあたしと火星で約束したんだ。あたしの家になってくれるって。
・・今日はフィヨがシャドウにくっついていないから、いいチャンスだ。
ルーは猫が甘えるように、後ろからシャドウの背中に自分の頬を擦り寄せる。
「アッ、そうだ、連絡するのを忘れていた」
シャドウは、ティロールに無線をいれた。
いい雰囲気だったのに・・・。
ルーはチョット口惜しそうだ。
「ティロール、アサルトマシーンは二機とも破壊した」
「もうコロニーの内部には敵はいないから安心してくれ。だが、今入った連絡によると、予測通り、シュタリアにアースユニオンの艦隊が出現した」
「戦力はどのくらいなんだ?」
「駆逐艦5、アサルトマシーン・AU-10が10機ほどだ。どれも装備は月並みだな」
「それなら、ゴールデン・スピアに残してきた、ノーマとフィヨリーナだけで十分やれるな」
「ああ、バロンがいない分、少しノーマが忙しいかもしれないが、作戦指揮はナオミが取っているし、ローズ・パイパーにオプション・ヘッジホッグ・キャノンを装備させたから、あっと言う間に終わるだろう」




