表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星屑の傭兵  作者: 磯野海月
第4章
35/41

包囲作戦

現地に到着したタワーズの面々は、作戦指令車両でティロールから現状の説明を受けている。

「DF-145地区は完全に封鎖した。現在まだ敵はポイントbー30に潜伏している。正確な場所はここだ」


ティロールは全員の携帯端末にマップデータを転送する。

「ここは、キュアーズ・ビジネスセンタービルがある所だな」

「そうです。キュアーズ・ビジネスセンタービルは、このコロニーの第2階層から第3階層を貫いて立っている大型建造物です。

知ってのとおり、現在はこの地区の再開発に伴うインフラ工事のため無人状態です。

敵がこの場所を選択したのは籠城するのに最も最適な場所と判断したからでしょう」


「ティロール! 雷風は、雷風はどうするね!?」

ヤンは沈痛な面持ちで、訴える。


「雷風は休暇中だったため、EPN(電子識別標識。戦闘時これを身につけていることによって、脳波や心拍数などを発信し、生存を確認できる)を所持していないので、残念ながら生存は確認できません」


「ヤン、あなたはこのミッションに参加してはだめよ。妹についていてあげなさい。必ず雷風は私たちで救出する」

フェノメナはヤンの肩を両手で押さえた。


「でも、インはもう命に別状はないね、雷風はワタシたちかばってこんなことになったよ! ワタシ黙って見ていられないね!」


ヤンは泣き出しそうになる。

「心配するなって! 雷風は俺の弟分なんだぜ、このおれが面倒みなくてどうするんだ。お前はここでティロールを手伝って、ミッションサポートしてな」


「ヤンさん、キャプテンや猛虎さんの言うとおりにしましょう。心配ご無用! だって、この私がいるんですもの」


マリー・ルイーズは自信ありげにヤンをなだめた。


「とにかく、このミッションは雷風の救出をメインにすえて、実行することにします」

「すまない! 本当にあのヤローは女の前じゃ格好つけたがって、こんな状況になったのも、あのヤローの身から出た錆だ。

その尻ぬぐいみたいなことになっちまって、申訳ない!」


猛虎は全員の前で頭を下げた。

「では作戦の説明に入ります。敵はどういうわけか? キャプテン・フェノメナとの接触を要求してきました」


「そこが、どうも腑に落ちない。

ティロール、どうしてうちのキャプテンなのか? あの女、敵が最初に戦ったのは、キャプテン・シャドウのはずだ。

復讐のつもりなら、彼の身柄を要求してくるはずだが」


「ヴォルフガングさん、私も同感です。

今回の敵の行動はかなり理解し難いというか、理にかなっていないような気がします。

それとも何かの策略か?」


「それが、ワタシもあの女の様子、とても変だと思ったね。戦闘形態に変化してから、訳のわからないことを言い出したり・・・」


「どういうことですか、ヤンさん?」

「それが、姉さん、私はここにいるとか、心が苦しいとか・・・」

フェノメナの顔がヤンの言葉を聞いて、青ざめた。


「ヤン! スペクターのボディーは、あと他には何と言ったんだ!?」

「キャプテン。あとは、何も・・・。ただ苦しんでいるような・・・」

フェノメナはヤンの肩をゆするが、これ以上ヤンから言葉が出ないと、がくっと項垂れて黙った。

普段見られないフェノメナの感情的な様子。


「キャプテン、気持ちは分かるが、あのスペクターのボディーの中身はもう別人なんです。エキドナの異常な言動も、脳を移しかえた時の接続不良か、調整の異常だと思う」


「違うわ、ウルフィー。あのボディーには心がある。今まであのボディーに入って死んでいった者たちの心が・・・」

無口なジーンが口を開くと、全員は静まりかえった。


一呼吸ほどおいて、ヴォルフガングは、

「私はそんなもの信じない! いや! 信じるのはごめんだ! もしそうなら、あまりにもキャプテンが・・・」


ヴォルフガングはデスクを拳で叩き、言葉を詰まらせる。


「ウルフィー、みんなもういい。いいんだ。ティロール、続きをやってくれ」


「分かりました。キャプテン・フェノメナ。敵は現在ギュアーズ・ビジネスセンタービルの38階にいることが、ポジトロンセンサーで確認できます。

雷風は確認できませんが、恐らくここに一緒にいると推測されます。

そこでまず、猛虎とマリー・ルイーズは敵に気づかれないように、内部の非常階段から二階下の36階に侵入。

そこでXK-A12を天井に向けてスタンバイ。

その後38階にキャプテン・フェノメナが侵入。

雷風の位置を確認後、ゴーサインを出し、マリー・ルイーズがコンクリートの天井を二枚ぶち向いて、真下から攻撃します。

XK-A12は自走式小型レールガンで、小振りながらかなり強力なのでうまくいけば一瞬で片がつくはずです」


「ポジトロンセンサー頼りの盲撃ちなんですねえ。ちょっと不安もあるけど、なんとかでますよう」


「もし失敗した場合はどうする?」


「次の手もちゃんと用意してありますよファイヤー。

敵が健在ならば、その後、隣のビルからB2煙幕弾を38階に向けて発射、その隙にアンカーワイヤーを壁面に打ち込み、ルーとファイヤーのチームが38階に侵入、雷風の身柄を確保。キャプテン・フェノメナ、ヴォルフガングとジーンのチームが敵を陽動、

その間、ルーとファイヤーは雷風を連れて安全圏に離脱します」


「私とジーンで陽動か、・・・攻撃は?」

「ヴォルフガングさんとジーンさんは近接戦闘において、最も敵の攻撃回避能力が高いので、陽動役に選びました。そのままなんとか、38階のテラスか、窓際のポイントに敵を誘導してください。

残りの2チーム、アッシュとノーマ、ザザとバロンらで周囲のビルから狙撃します」


「俺とマリー・ルイーズが定位置に着く前に、敵に発見されて攻撃される恐れは?」


「それが、一番の問題です。敵はどうやら、ヤンの報告ではサイバーボディーに入った後の調整が不十分らしく、センサー類の機能が人間と同じくらいではないか、ということなんですよ、それを考慮に入れて立てた作戦なんですが、とにかく発見されたら、猛虎さんはマリー・ルイーズを庇って、即逃げてください」


「ま、ティロールも、これ以上の作戦はもう考えつかないでしょうから、これでやるっきゃないわね」


「ノーマ、そんな言い方はティロールに悪いな。とにかく最善をつくそう。勝負は時の運だ。戦闘には思いがけないようなアンラッキーもラッキーもある。仲間を信じ命を預けるのが、我々傭兵の信条だ」


バロンがこの場をまとめ、全員がうなづく。

「では、これから20分で所定のポジションに到着、30分後に作戦を決行します」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ