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星屑の傭兵  作者: 磯野海月
第4章
28/41

ラシームの葬儀

「スゴイ! これが、傭兵戦艦ゴールデン・スピアか!」

「そうでしょう、マーフィーさん。ドックから船を眺めるには、ここが一番いいポジションなんです」


「わたしも、こんな角度から、目で直にゴールデン・スピアを見たのは初めてよ」

「ロビナさん。やっぱり、モニターで見るのとじゃ、迫力がまるっきり違うでしょう」


ロビナとマーフィーは芝犬少年型のBHバイオ・ヒューマノイドプッチイに連れられて、タワーズのゴールデン・スピア専用ドックの作業用テラスから、ゴールデン・スピアの黄金色に輝く船体を見下ろしている。


プッチイは、ゴールデン・スピアのメカニックチームで働いている、くりっとした目とふさふせした茶色い毛なみの柴犬、愛敬のあるBHバイオヒューマノイドだ。


「ゴールデン・スピアって、本当にその名のとおり、艦全体が金色なんだ。・・・プッチイ、これってまさか、本物の金を使っているのかい?」


「まさか、マーフィーさん、違いますよ。でも、ゴールデン・スピアの外装は、金箔を張る以上のお金がかかるハイテク装備がしてあるんです」

「へ~、どんな?」

「ゴールデン・スピアの外装は、光学可変多層ポリーマーで覆われていて、回りの環境に合わせて、どんな色や模様にも瞬時に変わることができるんです。

その上、ステルスシステムによって、レーダー反応や赤外線反応まで隠蔽することができるんです。

まさに忍者ですね。でももう、このことは業界ではバレバレですけど・・・」


「フ~ン そのおかげで、神出鬼没な活動ができるのか。でも、そんなことは、マニュアルには記載されていなかったな?」

「ここは軍事組織だから、そういうことは結構あるんです。でも、じきに慣れますよ」


ロビナはさっきから、腕時計を見ながらさかんに時間を気にしている。

「マーフィー、プッチイ、悪いけれど、私はそろそろ、お葬式の手伝いに行かなくちゃ・・・」

「確か、チーフの葬儀は13時から・・・。ゴールデン・スピアが入港してから、1時間後だったね。でも、準備は業者に任してあるんじゃないの?」


「それは会場のセッティングだけよ、わたしは実行委員の一人なんだから、先に行ってなきゃ」

「僕とプッチイも一緒に行ってもいいよ、何か手伝うことはある?」


「今のところ何もないから大丈夫よ。みんなと一緒に後から来てね。それと、念を押すようで悪いけど、今度のお葬式は公葬だから、ちゃんと支給されてる儀礼服で来てね。

喪章と黒ネクタイは支給してあるけれど、黒い靴下は、自前の物を用意してある?」


「え、黒い靴下? それは聞いていなかったよ。あったっけ?」

マーフィーとプッチイはお互いの顔を見合わせた。


「白い靴下じゃだめなんですか?」

「もう、訊いてよかった。儀礼服はブーツじゃないんだから、あたりまえでしょう。黒い靴下は公売部にあるから、ちゃんと買って履いて来てね」

「うん・・」

ロビナはマーフィーとプッチイがうなづくと、足早に階段を降りていった。


カイヤン・ラシームの葬儀会場になっている、タワーズの第3ホールのゲートの前で、ロビナは落ち着かない様子で通路の先に目を凝らしている。

そこに、葬儀の開始時間ギリギリに、マーフィーとプッチイが息せき切って駆け込んで来た。


「何やってるの、二人とも! もう式がはじまっちゃうでしょ!」

「すみません、マーフィーさんと公売部まで黒い靴下を買いに行ったんですけれど、無かったんで、外まで買いに行ってたんです」


「もう、ゲートを閉めるから二人とも早く中に入って」

マーフィーとプッチイは、急かされて、ロビナから献花するための白バラを受け取ってから会場に入った。


会場ではすでに、儀礼服を着たゴールデン・スピアのクルーやタワーズの主要なメンバーが、着席している。


「あなたたちはあっちよ」

ロビナが指差したあたりで、マリアが手招きをしている。

「あ、マリアさんだ」

プッチイはマーフィーより先にマリアを見つけて、後列の席に急ぐ。

「遅かったわね」

「すいません、黒い靴下が無かったんで・・・」

「さ、もうすぐ始まるわよ」


マーフィーとプッチイが着席してからすぐに、葬儀が開始された。


献花や追悼のスピーチ、遺言のビデオなど、1時間ほどで、葬儀は終了した。

マーフィーたち、メカニック部門のスタッフは最後列で、一番最初に会場から出た。


会場から広いロビイにゾロゾロと人が出てくる中、マリアとマーフィー、プッチイの三人は、ベンチに腰を降ろして、葬儀の参列者たちを眺めている。


「マリアさーん」

ロビナがマリアたちの姿を見つけて駆け寄ってきた。

「ご苦労さまロビナ、もうあとの用事はないの?」


「うん、後はもう業者まかせだから、みんなと一緒に打ち上げに出れるわ」

そう言って、ロビナはマリアの隣に腰掛けた。


マーフィーは次々と会場から出てくる、タワーズの要人たちを、見て多少興奮ぎみだ。

「ねえ、プッチイ、あのキャプテンと一緒に出てきた人達は?」


「あ、マーフィーさんは初めてでしたね。

あのクリムゾンのロングヘアーの人が、フェノメナ・カサンドラさん。

イーフリートのキャプテンです。


その隣の黒い髭の人が、鉄龍のキャプテンの鐘馗しょうき大人。

あと、その後ろの身長が2メートルもあるトラのBHバイオヒューマノイドが鉄龍のサブキャプテンの猛虎さん。

それとバーミリオンのショートヘアーの背の高い女の人が・・」


「知っているよ。セブンシスターズのロクサーヌ・ファイヤーさん、その隣の黒のロングヘアーの女の人が、ヴォルフガング・シャイターンさんだろう。セブンシスターズはプロマイドやアルバムが出てるほど有名だからね」


「今はタワーズに、戻っている艦は、ゴールデン・スピアとイーフリートと鉄龍の三隻ですけれど、残りの二隻も戻っていれば、さらに有名人が見れたんですけれどね」


「マーリア、ロビナ、プッチイ、久しぶり、特にプッチイとは一月ぶりかな」

後ろからにいきなり、ロビナとプッチイの間から顔を出して、白無垢の毛の猫型BHバイオヒューマノイドの女性が、二人の肩を自分に抱き寄せ、頬擦りをはじめた。


「ルーさん! びっくりした」

「こら、ロビナどうして先に帰っちゃったんだ?」

「えー、だって、ノーマさん一人だと心配なんだもん」

「あたしが一人だと、どうなんだって?」


ロビナが気がつくと、すぐ前にノーマ・レイが立っている。

「うっ、ノーマさん、いたんですか?」

「いたわよー、あたしを心配してくれてるんだって? そりゃうれしいわ。そんならその

お礼に、いつものやつをやってあげるわねー」


「いえ、そういうつもりじゃ、ちょっ、ちょっと待ってください!」

「遠慮することないのよー、ルー、ロビナを押さえといて!」

「オッケー!」

ルーは後ろからしっかりと、ロビナに抱きつく。

「そら、ウリャウリャリャ!」

ノーマは、やにわにロビナの長い耳をつかんでくすぐり始めた。


「やめ、そんな、いひひゃ、アン、アン!!」

「これで、どうだ、ゴニョゴニョゴニョ」

「ヒィヒィ、フフュミュウ、ブヘッヘ、アヒャーアンアン!!」

ロビナはのけぞりながら、体をよじってじたばたしている。

「アヒャオ~! あ、ダメ、そんな、マーフィ~、助けて~!!」

ロビナはたまらず、マーフィーの袖を引っ張る。


「マーフィー? お前がマーフィーか?」

「そうですけど・・・。はじめまして。マーフィー・ウォンです」

ルーはロビナから手を放し、マーフィーの顔をじっと見つめる。

マーフィーは、ルーの猫のような、縦に割れた虹彩で、穴があくほど見つめられ、思わず、身を引いた。


「目で分かる。アハ!気に入った。マーフィー、お前って本当にいいやつだ」

ルーはマーフィーの両肩に手を掛け、彼の頬をペロッと舐めあげた。

「どうやら、マーフィーはルーにも気に入られたみたいね。初対面なのにBHからこんなに好かれるなんて」

マーフィーは、ルーに舐められながら、ノーマの顔を見上げる。


「・・・いいの、なんでもないわ」

そこに、猛虎とファイヤーが他のタワーズの他の幹部たちと別れて、こちらに歩いて来た。


「おう! ノーマ、ルー、マリアにロビナ、久しぶりだな、元気にしてたか!」

「こら! 猛虎、でかい声だすな、葬式なんだぞ、元気はないだろうが、無神経なんだから」

「そうか? 声のでかいのは地声だからな、

カイヤンのじいさんも、明るく元気に葬式やってくれって、遺言ビデオで言ってたじゃないか。

ガッハッハ、気にするこたないぜ!」

猛虎はファイヤーの背中をポンと叩く。

軽く叩いたつもりが、猛虎が怪力のせいか、ファイヤーは前につんのめりそうになるが、バランスをうまく取って、彼女は50cmほど前に跳んで着地した。


「たくっ! 馬鹿力なんだから」

「あ、すまねえ・・・」


「二人とも相変わらずね。この後、幹部は会議でしょ、あんたたちは行かなくていいの?」

「なーに、ノーマ、俺達は幹部って言ったって末席さ。いてもいなくても、会議にゃ関係ないさ。

それに俺は休暇中だ、頼まれたってごめんだね」

「ファイヤー、セブンシスターズの他のメンバーは?」

「ウルフィー(ヴォルフガング)はキャプテンのお供で会議だけど、他はパトロールよ。あたしは今日は非番なんだ」


「そういう訳で、この面子でこれから飲みに行こうってことさ。俺は一応幹部だから、接待費で全部飲み食いを落とせるぞ」

猛虎はポケットからタワーズの幹部専用クレジットカードを、ノーマの目の前に取り出して見びらかす。


「こういう時だけ幹部なのね。でも、そのカードいいわね。あたしに貸して!」

「おっと、いけないぜ、借金の女王にこれは目の毒だったな」

猛虎はサッと、カードをしまった。


「よし、そうと決まれば、街にくりだそう。あたしが、いいジャパニーズ・フード食わせる店を教えてあげるよ」


「チョット、チョット待ってください、みなさん。マリアさんは自主的に謹慎している最中なんです。僕はマリアさんが行かなければ、外食する気になんかなれません」

「いいのよ、プッチイ。わたしは寮で一人、チーフの冥福を祈っているわ。みんなは気にしないで行って」


「そうだったね、マリア・・・。でも、みんなはお前を慰めるために誘っているんだ。お前がいなくちゃ話しにならないな」

ファイヤーは困ったなと、腕を組む。


「そーねー。じゃあ、マリアの寮でやるなんてどうかしら? この間マーフィーの歓迎会をやり損なっちゃったから、ちょうどいい機会だわ」


「エー、ノーマさん。またそのパターンですか? マリアさんが迷惑じゃ・・・」

「マーフィー、今回は、この間みたいなことにはならないわよ。マリアだって迷惑だなんて、思ってなんかいないはずよ。そうでしょ?」

ノーマは座っているマリアの肩に手を廻した。

「ええ・・・・」

マリアは小さくうなづく。

「そういうことで、カイヤン・ラシームを忍ぶ会をマリアの寮でやることに決定。これから買い出しね」


「そうか、じゃあプッチイ、車両課に行ってワゴンを一台借りて来てくれ。俺のIDカード渡すから、これがあれば、面倒な手続き無しですむぞ」

「はい!」

プッチイは猛虎からIDカードを受け取り走って行った。



「我々に理解できるような説明のしかたをして欲しいものですな、キャプテン・シャドウ」

「もう一度いう。タワーズに侵入した敵はアースユニオンのインスペクター(統括者)のうちの一人で、彼は死んだ」


「アースユニオンにインスペクターが存在して、しかもそれがネットワークを自在にハックできる異能者で、それを君のところのパイロット候補生が消滅させた・・・。それも、これも、到底我々には信じがたいことだ」


カイヤン・ラシームの葬儀の後、タワーズの第一会議室で、タワーズの幹部が集まって、先日の事件について会議が行われている。

ゴールデン・スピアのキャプテン・シャドウに先程から質問をしているのは、タワーズの非傭兵部門の軍事部門責任者、チャンドラー・ナーガ司令官だ。


「信じることができないのは、そちらの勝手だ。アースユニオンの本体に関する情報が、明らかになっていないのは、周知の事実だから。その物的証拠を見せろと言われても、どうしようもない。死体も消滅してしまったのだから」

「では、アースユニオンのインスペクターの存在も、そして彼がタイタンから届いたアサルトマシーンを手に入れるために、わざわざタワーズに一人で侵入したということも、君の誇大な推測でしかないのではないか?

それとも君は何か特別な情報源でも持っているのかね?」


「情報源については公開する義務はない」

「それでは話しにならん」


「キャプテン・シャドウ、チャンドラ司令、その件については、もうこれ以上討議してもしかたない。それより、今回の事件の責任について、論議すべきではないのかね?」

見かねて、タワーズの非軍事部門の責任者のフェリック総務長が、二人の会話に水を差す。

「そうだったな、今回の事件はすべて、現在タワーズの警備の任務を当番している、イーフリートのメンバーの怠慢にある。この場の全員が異議ないはずだ」


チャンドラ司令が傲慢そうにのけぞりながら、フェノメナを見下ろすように見つめると、フェノメナは重たい口を開いた。


「チャンドラ司令。今回の敵の侵入はすべてこの、フェノメナ・カサンドラにある。私がタワーズに来て以来最大の失態だ。どんな処分も受けよう」


「待ってくれ、フェノメナ。気持ちは分かるが、君は責任を一人でとる必要はない、今回の事件の当事者はゴールデン・スピアだ。僕はフェノメナを訴追したりするつもりは無い。彼女は最も適切な対処をして、タワーズの被害を最小限に留めた」


「キャプテン・シャドウ、それでは示しがつかないではないか、この問題をどう決着するつもりだ?」


「今回の事件の被害は、ゴールデン・スピアとイーフリートで折半する。それで終わりだ。かまわないねキャプテン・フェノメナ?」

「すまない、私がそれを決められる立場ではない。キャプテン・シャドウ」


「私は不服だな、弁償して終わりというだけではな」

「チャンドラ司令。何度もいうが、今回の事件は防御不能の事態だった。この僕以外はね。そのためにわざわざ敵は、僕をウェル2までおびき出して足留めをしたんだ。だから、責任の半分は僕にある」


「それが理解できない。どうして敵は君だけを、タワーズから引き離す作戦に出たというのかね?」


「それは、恐らく、彼を完全に殺すことができるなが、この僕だけだと思っていたからだろう」


「それが、新米のヒョッコにあっけなくやられてしまった? おかしな話だ」

「彼女、フィヨリーナ・リリアンティスは経験は無いが、僕に近い能力を持っている。それが彼、インスペクターの誤算だったんだろう」

「それは初耳だな。そんなデータがどこにあるんだね。あの小娘が君のようなテラブル・モンスターだなんてな」


その一言で、シャドウはサングラスの下から、キッ! と鋭い視線をチャンドラ司令に投げかけた。チャンドラ司令の背中に本能的に戦慄が走る。


「こ、これは失礼した! 今の発言は取り消す。気にしないでほしい」

チャンドラ司令はシャドウから目をそらしながら、額の冷や汗をハンカチで拭った。

そこに突然、今まで沈黙をとおしていた鐘馗しょうきが、話を強引に仕切る。


「まあ、そういうことで、今回のことは、ゴールデン・スピアとイーフリートの折半でお金を出す。

それですべて解決文句無し。

ワタシも賛成ね。フェリック総務長もあとのみなも、いいあるね?」

「異議無し」

他の傭兵チームの幹部たちは、口々に鍾キに賛同した。


「まだ問題は残っている。ウェル2でキャプテン・シャドウと戦闘して、その後行方をくらませた戦闘サイボーグはどうなっているのだ?」

「チャンドラ司令、面目ないが、現在まだ捜索中だ。ウェル2は知ってのとおり、雑多な歓楽施設が営業していて、潜伏するのにはうってつけの場所が数多くある。うちのインとヤンが捜索にあたっているが、コロニー警察の協力も思うように得られない状況だ」


フェノメナの隣に座っている、イーフリートの参謀を務める、ヴォルフガング・シャイターンが、鋭い視線をあげながら答えた。


「言い訳は聞きたくないな、とにかく早急に彼女を捕縛して、アースユニオンのインスペクターに関する情報を得たいものだ」


「その件に関しては、完全に僕のミスだ。手が空きしだいですまないが、捜索は僕も協力する。以上だ」


シャドウは、そう言い終わると、ガタンと席を立つ。

「どうしたのだ、キャプテン・シャドウ。会議はまだ終わっていないが?」

「もう、僕がいなければ困るような案件はない。僕はこれから大事な用事がるんだ。お先に失礼する」


「アア、そうね、ワタシも大切な用事思い出したあるよ。ワタシもこれで失礼ね」

鐘馗しょうきもシャドウに続いて席を立った。

「私もだ」

さらにフェノメナが立ち上がると、傭兵チームの幹部たちは全員席を立った。

タワーズの他の幹部たちが茫然と見送る中、シャドウたち傭兵チームの幹部全員はぞろぞろと、廊下に出ていく。

「いいのか、シャドウ? 君にしては、少しおとなげないな」

バロンは後ろからシャドウの肩に手を乗せた。


「ああ、構わない。連中の文句をこれ以上聞いていても時間の無駄さ」

「はっはっは! せいせいしたあるよ。ワタシもちょうどお腹が空いてイライラしてきたところだったね」

鍾キは前に迫り出した自分の腹をポンッと叩く。

「そうだ、時間も時間だし、みなさん、食事でもしていきませんか?」


「オオ! レイモンドそれはいい提案ね! それならワタシの娘夫婦がやってる菜館チャイニーズレストランで食事するね。味のほうは、ワタシの保証つきね」


「それはいいですね。みなさん、じゃあ、そこにしましょう。キャプテン・フェノメナにヴォルフガングさんたちと食事だなんて久しぶりで嬉しい限りですねえ」


何を考えているのか、レイモンドはフェノメナとヴォルフガングの間に割って入って、二人の手を握る。

その様子をみてムッとしたマーガレットは、後ろからレイモンドのクツの踵を踏んづけた。


「オワッ!!」

レイモンドは両手を二人の女性と繋いだまま、みっともない格好で前につんのめる。

両サイドのフェノメナとヴォルフガングは、笑いながらレイモンドの手を引いて彼を起こしてやった。


「あぶないじゃないか、マーガレット氏! 私はまだ怪我が完治してないんだから」

「あら、ごめんあそばせ!」

レイモンドの抗議をマーレットは当然のことのように、鼻であしらった。

その場の雰囲気が和むが、シャドウは、

鐘馗しょうき大人、悪いけれど、僕は今日は遠慮させてもらうよ、気分がのらないんだ」

そう言って申し訳なさそうに、下を向いた。

「何! ワタシの娘夫婦の店の料理、不味くて食べられない言うあるか?」


「いや・・・別にそういうわけじゃ・・・」

「なら、来るよろし! 絶対に後悔させないある!」

鐘馗しょうきはシャドウの背中に横から腕を廻して、がっちり彼をつかむ。

シャドウは一つため息を付くと、あきらめて鐘馗しょうきに従った。


一同はタワーズの正面ゲートで、ハイヤーを待っている。

シャドウは鐘馗しょうきにピッタリと横から体を寄せられながら、すこし人目を気にしている様子だ。

鐘馗しょうき大人、帰ったりしないから、もうその手を離してくれないか」

「気にすることは、ないあるよ、友情の印ね」

「それは分かっているが・・・」

「何、どうかしたあるか?」

「ゲイのカップルと思われたくないんだ・・・」

その一言で、シャドウ以外の全員が爆笑したのは、言うまでもない。


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