宇宙港警察
「敵は戦闘サイボーグなのか! 鎮圧に向かった戦闘員はどうなった?」
「全滅です。こちらに連絡する余裕もないくらい、アッという間にやられました。
監視カメラも敵の映像を捉える前に破壊されて、敵の情報がつかめません」
「艦長! 今、メディカルルームのドクターから連絡が入りました。この艦に侵入した敵は、ゴールデン・スピアのノーマ・レイと名乗ったそうです。ドクターはこの艦から、先に脱出すると言っています」
「ノーマ・レイ!!」
ボルツ艦長の顔が、引きつった。
「すぐに全員この艦から脱出する。また今回の作戦も失敗だ!」
「まだ判断が早いのでは?・・・」
「早くはない! あいつは私を絶対に殺しに来る! あいつを殺すことは出来ないだろうが、20分後にこの艦を自爆するようにセットして、脱出する。この船が私のスカッツじゃなくて、不幸中の幸いだ」
ボルツ艦長は真っ先にブリッジから逃げ出した。
「マーフィー!!しっかりしてよーー!!」
ロビナは意識のはっきりしないマーフィーに肩を貸しながら、よろよろと通路を歩いている。
艦内はノーマが暴れたせいか、あちこちで火災が発生しているが、自動消火システムも作動せずに、燃えるがままにまかせている。
「ゴホッ、ゴホッ、 マーフィー、大丈夫?」
ロビナは一休みするために、マーフィーを座らせ壁に依りかからせた。
「もうあと少しで、脱出用小型艇のあるところよ。がんばりましょう」
ロビナは再びマーフィーを立たせようとしたが、マーフィーはついに意識が無くなって、壁に依りかかったまま、動かなくなってしまった。
「ア~ン!! マーフィーしっかりしてよ~!! こんなところで寝ちゃったらだめだよ~!!」
ロビナはマーフィーの耳元で大声を出してみたり、頬をつねったりしてみたが、マーフィーには何の反応も無い。
「どうしよう。困ったな~・・・」
・・・このままマーフィーを置いて行くなんて、わたしは出来ない。何かショックを与えれば、マーフィーは気がつくかも。例えば痛みのような・・・。でも、マーフィーに怪我をさせるなんて、いやだし・・・。ものすごく痛いけれど、怪我をしない方法・・・。男の人がものすごく痛がること・・・。
「そうだ!! いいことを思いついたわ! マーフィー、後生だから堪忍してね!」
コキーーーン!!
ロビナは一瞬ためらってから、マーフィーの股間に思い切りパンチを打ち込んだ。
「ウヲォォォーーー!!!!ムムムムム!!! 」
マーフィーはあまりの痛さに、飛び上がり体をくの字に曲げたまま、通路をピョンピョン飛び跳ねる。
「マーフィーごめんなさい!! 大丈夫?」
「あっ、あまり・・大丈夫じゃないけど、目が覚めたよ、あ、ありがとうウサコちゃん」
「マーフィー、わたしの本当の名前はウサコじゃないの。本当の名前はロビナ・ベアトリックス・ヤンセン。隠していてごめんなさい」
ロビナはマーフィーの背中を摩る。
「ロビナちゃんか・・。いい名前だね」
ロビナは少しはにかみ、頬が赤い。
「さあ! 急ぎましょう。もうすぐ小型脱出艇のある、エアロックよ」
マーフィーは内股ぎみに歩きだした。
ロビナとマーフィーはやっとのことで、小型脱出艇のある場所にたどりついた。
「ア~!!! 脱出艇がこわされてる!!」
5隻ほどあった、脱出艇はすべて破壊されていた。これではこの船から逃げ出す手段がない。
「どうなってるの~!? 困ったわ~!」
「ロビナちゃん、とにかく別の脱出の手段を考えたほうがいい」
ロビナとマーフィーは脱出艇を見下ろして考えこむ。
「ロビナー! 元気にしてたー!」
そこにノーマが、何か大きな物を引きずりながら歩いてきた。
「ノーマさん!! 元気はないでしょう! こっちは大変だったんだから」
ロビナはプーっと膨れっ面をして、ノーマを見る。
「あら、ごめんなさい。でも、あなたたちが心配で、ここまでやってきてあげたんだから文句は無しよ」
「ノーマさん、さっき言っていた用事はすんだの?」
「それがねー、ブリッジはあたしが行った時には、もう裳抜けの空でだれもいなかったわ。ボルツたちは、どこか別のルートで脱出した後だったみたい。それとねー、ブリッジを調べたら分かったんだけれど、この船、あと10分くらいで自爆するように、セットされているわ」
「エ~!! そんな~ !!」
ロビナとマーフィーは同時に声を張り上げる。
「ビビロワさん、いや失礼しました。ノーマさん、脱出艇は見ての通り破壊されてしまって、使えませんよ。あなたは宇宙空間でも平気かもしれないけれど、僕とこの子はどうしたらいいんですか!?」
「えーと、君。マーフィーだったけ。心配しなくても大丈夫よ! あたしがこれを、なんとか見つけてきてあげたから」
ノーマは差し渡し2.5メートルほどのカプセルを、マーフィーの前にズズズと引きずり出した。
「これは?」
「見れば、わかるでしょう。かなり年代物だけれど、脱出カプセルよ!あなたたちはこれで、脱出できるわ」
「ノーマさん、これって、一人用でしょう。それに自力で動けないよー。その上、保障期限もとっくに過ぎちゃってるー」
「ロビナ、あんたはチビさんなんだから、詰め込めばマーフィーと二人でも、なんとかなるわよ。二人がこれに乗ったら、あたしがこれを外に放り出してあげる」
「ロビナちゃん、もう考えている余裕はないよ。ノーマさんを信じよう」
「そうそう。美人のお姉さんを信じなさい!」
マーフィーは脱出カプセルのハッチを開いて、中を確認した。
「バッテリーも生命維持装置も生きてる。これならなんとかなりそうだ。ロビナちゃんおいで」
「う、うん・・」
ロビナはちょっとためらってから、脱出カプセルに入る。カプセルは一人用のため、マーフィーとロビナな体は抱き合うように向かい合ってピッタリと、重なる。
「ちょっときついなー」
「気持ちいいでしょ? ロビナ。こんないい少年と、二人っきりで抱き合って、うらやましいわねー」
「アーン。恥ずかしいよー、みんなには内緒にしてー」
「ノーマさん、それじゃお願いします」
マーフィーは内側からカプセルのハッチを閉めた。




