偽装艦スカッツ
そのころ、輸送船に偽装したアースユニオンの戦艦スカッツに、ケレス小惑星連合のパトロール艦が接近しつつあった。
「艦長。ケレスのパトロール艦に補足されました。臨検すると言ってきています」
「このT-623の全通信を外部と遮断してから、もう2時間ほどだ、ほぼ予定通りのことだ」
「攻撃しますか?」
「ああ、もちろんだ。アサルトマシーンを出せ。ミダス中尉はどうした」
「ミダス中尉アサルトマシーンでスタンバイしています」
「つなげ」
ブリッジのモニターにアースユニオンの精鋭アサルトマシーン、AU-11・オーガンのコクピット内が映る。
ミダス中尉の顔は網膜投影装置とヘルメットでほとんど見えない。
「やっと出番ですか」
「そうだ」
「たかがパトロール艦では、面白味に欠けますけれど」
「大した自信だな。だが、お前の腕は買っているぞ」
「パトロール艦が接艦してきたら、背後から飛び出して、一瞬でブリッジだけをつぶすんでしたね」
「そうだ。相手に通信させる隙をあたえるな」
「了解しました」
ミダス中尉はニッと口元から自信の笑みを漏らした。
「艦長、ケレス小惑星連合の辺境警備艦隊は、メルクリウスラインにほとんど主力が張付いていて、こんな場末のコロニーまでは手が廻らないはずですから、そんなに情報遮断に神経質にならなくとも・・・」
副官がそう言い終わらないうちに、ボルツ艦長は険しい表情をして答える。
「私が心配しているのは、ケレス辺境警備艦隊などではない」
「それ以外といいますと?、・・・」
「ゴールデン・スピアだ」
「まさか、ゴールデン・スピアがこのエリアに来ていると・・・」
「AI(人工知能)の推測によると、その可能性が15%ある。『24時間前、シュタリア戦線でゴールデン・スピアが確認されて以後、所在が不明』という情報が暗号通信ではいった」
「この作戦は、ゴールデン・スピア本艦と、その傭兵が出てこれらない。というのが大前提で立てられたはずですが、そうなるとかなり難しいことに・・」
「まだ分からん。だから慎重にならざるをえんのだ」
艦長は腕ぐみをして艦長席の背もたれに依りかかる。
そのうちパトロール艦が接艦するために、偽装艦スカッツにかなり接近してきた。
「ミダス機でます」
アサルトマシーン・オーガンはリニア・カタパルトが開くと偽装艦のイミテーションの艦腹を突き破って、一気にパトロール艦の背後に飛び出す!
それは一瞬であった。
オーガンは正確にパトロール艦のブリッジを、一撃でレールガンで撃ちぬいた。
張り詰めた沈黙の後、ミダス中尉からレーザー通信がはいる。
「完璧です。パトロール艦のエンジン停止。生命反応も消失。完全に沈黙しました」
「よくやった。艦に戻れ」
「この船はどうしますか?」
「構わん、ほうっておけ」
「了解」
ブリッジを破壊されたパトロール艦は、慣性でゆっくりと小惑星T-623の方向に流れていった。
マリアとマーフィーはオータムファクトリーのドックで、ドックのゲートにとある細工をし、古い輸送船にビートルボム(対人自動地雷)を仕掛けた。
「ここまでアサルトマシーンを餌に、ガルトザムのやつらをおびきだし、逃げきってシェルターに隠れられれば、後は、なんとかなると思うわ」
「マリアさん、本当に行くんですか・・・」
「ええ・・・。アサルトマシーンはお願いね」
マリアはマーフィーのと向かい合って、その顔をじっと見つめると、両手でギュット握りしめた。
「マーフィー、ありがとう。あなたに会えて本当によかっった」
マーフィーの手マリアの温もりが伝わる。
目を細めたマリアの横顔。
切ない・・・。
何と言ったらいいなだろう・・・。
ただ・・・、絶対にさよならだけは言いたくない!
これが恋なのだか、それとも別の感情からなのだかは、マーフィー自身にもよく分からない。
ただ、目の前で他人の犠牲になって死んでいく女性がいたら、マーフィーは絶対にそれに耐えられない。なぜなら彼の母親がそのような人であったからだろう。




