戦う覚悟
「艦長、ガルトザムのキャプテン・ゲイザーからレーザー通信入りました」
「つなげ」
スカッツの艦長の前のディスプレーに、柄が悪そうでいかつい男の顔が映る。
「ボルツ艦長、最初とは随分話しが違う。こんなに手間食うんじゃ、約束の二倍はもらわないと合わないぜ」
「考えておこう・・・。ただし、あと三時間以内に目的の物を確保しろ。そうしなければ契約金は半額だからな」
「そうですかい! だが! その代わりうまくいけば、約束の二倍もらいますからそのつもりで」
ゲイザーは面白くなさそうな顔をすると、通信を切った。
「ケッ、勝手なことばっかり言いやがって! おれたちばかりこき使っておいて、自分は高みの見物とはな。まあいい、後はこっちの好きにやらせてもらうさ。おい!ジャッカルを呼び出せ!」
マリアとマーフィーは、ジャンク置き場の古い通信衛星を起動し、状況を把握しようとしていた。
「ここから、20キロほど先の小惑星の影に一隻、戦艦らしいのが隠れているわ」
「この距離と方向なら、あのブースターで、なんとか逃げきることができそうですね」
「心配なのは、このコロニーに対する直接的被害ね。ところで、このコロニーの住人は?」
「もうすでに、みんな緊急避難していると思いいます。このコロニーは、頑丈なシェルターが大小合わせて200以上ありますから」
「それを聞いて安心したわ。これ以上なんの関係もないあなたたちに迷惑をかけたくないもの」
「マリアさん、僕も戦います! 少なくとも僕は迷惑だなんて、思っていません」
「こればかりは、あなたに任せられないわ!」
「マリアさん、僕だって戦闘の基礎訓練ぐらいはやっています。女のあなたよりは戦える!」
「そんなことを言っているんじゃないわ! あなたは実際に人を殺したことがあるの!!?」
「・・・・ありません」
マリアのこの一言に、マーフィーは困惑してしまった。
「そうでしょう・・・。あなたには私達傭兵集団のように人殺しやそのまねごとは、やっ
て欲しくしくないの」
「マリアさんは自分を犠牲にするつもりですか?。このコロニーの人と、こんなアサルトマシーンのために」
マリアさんは死ぬ覚悟ができているのか?・・・。
しかしそんなことは、今のマーフィーにとって理解しがたい、いや、認めがたい。
「人質が開放された後に、僕がマリアさんの元に駆けつければ、一緒に脱出できるんじゃないですか?」
「それは、やってほしくないわ!」
「どうしてですか!?」
「もしあなたまで、戦闘に巻き込まれてしまったら、だれがここからアサルトマシーンを持ち出せるの!?」
「僕がアサルトマシーンを操縦すれば、それでマリアさんを拾えれば、何とかなります」
「絶対それはだめ! さっきも言ったようにあのマシンはとても危険な代物なのよ!」
「それは、やってみなければ、分からないじゃありませんか!」
「発狂して、死んでしまうかもしれないのよ! そんな危険なことは、あなたに頼めないわ!」
「死ぬ危険があるのは、マリアさんも同じでしょう! だったらここまで来て、もう、そんなことを言っていられないんじゃないですか!?」
「これ以上民間人のあなたを、危険な目に合わせるのは、ゴールデ・ンスピアのエージェントとして、絶対に認めることはできないわ!」
「それはどういう意味ですか?」
「わたしたちゴールデン・スピアは、なぜ、多くのコロニーや小国家に信頼されて、防衛や戦略の一端を任されていると思う?・・・」
「それは、最強の傭兵チームがあるからでしょう」
「もちろん、それもあるけれど、もっと重要なことがあるわ。それは、ゴールデン・スピアが、民間人の生命を守ることを信条としているからよ」
「だからそれほど、人質の救出や僕の安全にこだわるんですか?」
「わたしがこんなことを言うのも、わたし一人の個人的感情からではないのよ。こんな考え方をしている傭兵集団なんて、他にはこの世に存在しないわ。だから、それだけは誇りに思っているの」
それだけは、か・・・。
マーフィーはその言葉のなかに、マリアが傭兵チームという戦争にかかわる集団に所属していることが、彼女の本意ではないことを感じた。
「・・・分かりました」
ここまで言われては、マーフィーはまだ納得しきれないままだが、マリアの作戦に同意せざるをえない。しかし、本当にこのまま、マリアを一人で行かせてしまっていいものか、迷っている。




