第69話 「男女の遊び」
その後俺達はしばらく温泉を堪能し、1時間後の集合時間まで規定の場所でフルーツ牛乳を片手に和希と談笑していた。
温泉によって発生した体内の熱が冷めた頃には、温泉にずらずらとお客さんが入っていくのが見えた。本当に俺達はナイスタイミングだったみたいだ。
そして、女性陣と合流した後、レクリエーションスペースにて30分程卓球をした。
にしても雅達の浴衣姿にはしばらく視線が行きっぱなしだった。後頭部からうなじにかけてのラインや襟元から垣間見得る鎖骨とか、なんともまあ……うん、エロいとしか言えなかった。
せっかく温泉に入ったので、汗をかかない程度に軽く体を動かすのに卓球はうってつけだ。
しばらくして夕食の時間になり、バイキング会場に向かって適当な席につき、そして食事を始めた。
バイキングとは言え、7000円の費用の中に含まれたオプションのようなものだからそこまでの物は期待していなかった。
なんでも好きなだけ食べられるというのがビュッフェの魅力だが、そもそも「なんでも」の質が悪ければその魅力は薄まってしまう。
が、ここに並んでいたのは目を引くものばかりだった。
肉、魚介、主食系……バリエーションは想像以上に選り取りみどりだし、それぞれ手の込んだ作りだとすぐに分かるような品で驚いた。
これが7000円の宿泊費の中に含まれているとは到底思えない。
ほぼ貸切だった温泉と言い、今回の旅行は良いことづくしでバチが当たりそうだ。
食後は各々すぐに部屋へと戻ることになった。
部屋にたどり着くと、俺はどすんと畳の上に寝そべり仰向けになる。
「がぁあ〜、もう動けねぇ……」
「ははっ、食いすぎなんだよナオは」
普段そこまで食べるタイプではない俺でさえも吐きそうになり、胃薬まで服用する羽目になるほど食べてしまった。バイキング恐るべしだ。
「もうこのまま寝てもいいかも〜」
「いや、流石にまだ早いだろ」
部屋の角にあるテレビの台にひっそりと置かれているデジタル時計に目をやると、そこには8時10分と表示されていた。
幼稚園児や小学生が寝るには頃合の時間かもしれないが、高校生からすれば現時刻はまだ夜とも言い難い。
しかし、温泉と食事による満腹感と満足感に俺の瞼はどしっと重くなっていた。
遊び疲れがまだとれていないのかもしれないが、このまま目を閉じれば俺は朝まで起きない自信があった。
「おいおいまじで寝るなよ」
「ん〜、無理かも。なんか話してくれよ」
このまま無言の部屋にいたら確実に寝てしまう。が、俺だってこんな早い時間に寝てしまうのはもったいないと感じている。和希に何か話題を振って貰えば目も冴えるだろう。
「そうだなぁ……お、じゃあ女子部屋に遊びに行くってのはどうだ?」
「え、まじ?」
和希の突飛な発言に俺は一瞬にして目が冴えた。
「おうよ。せっかくあんな美少女達と遊びに来てんだから、夜も皆で遊ばねえとな」
急なことで驚きはしたものの、和希の言うことにも一理ある。
こんな男2人のむさ苦しい部屋でべちゃくちゃとくだらない話をして時間を潰そのも何だかもったいない気がする。
どうせ時間を潰すなら皆で一緒に遊びながらの方が有意義だ。
「そう、だな。じゃあ行ってみるか」
俺は腹を抑えながらゆっくりと立ち上がり、和希と部屋を出ようとした。その時。
コンコンッと部屋の扉を叩く音が聞こえた。
解錠して扉を開けると、そこには今さっき向かおうとしていた部屋にいるはずの少女3人がにこにこしながら立っていたのだ。
「あれ?皆揃ってどうしたんだ?」
「そんなの遊びに来たに決まってるじゃないですかぁ」
「そうだったのか」
俺は内心ほっとしていた。
実のところ、和希と一緒とはいえ女子の……しかもあんな美少女達のいる部屋を訪問することに俺はかなり緊張していた。
あちらから来られたのは想定外だが俺としてはありがたい。
「売店でお菓子とか飲み物とか色々買ってきたから皆で食べましょー!」
そう言う彩乃の両手には程よく膨らんだビニール袋があった。そしてそれは他の2人も同様だ。一体どんだけ買ってきたんだよ。
まあでも、こういうのって旅行って感じがして良いな。中学生の時の修学旅行でも、3年の初期に予定されている高校の修学旅行でもこんなイベントなんて想像すらしなかった。
テーブルを端に退かし、広々とした畳部屋の真ん中に持っていた袋を置き、囲むように俺達は座った。
各々コップに好きな飲み物の注ぎ、適当にお菓子を広げる。
「それで、集まったのはいいけど、結局何をするんだ?」
俺はスナック菓子をひとつまみしながら皆に向かって聞く。
こうしてお菓子を食べながら会話するっていうのもありだが、せっかくだし皆で何かしたいと考えていたのは俺だけではなかった。
「そうよ。そもそもここに来ようと言い出したのは彩乃さんなのだから、何か考えがあったのでしょう?」
そうだったのか。やっぱり彩乃の行動力はこの中でも群を抜いているな。
「フッフッフッ……勿論ちゃんと考えてきましたよぉ?」
得意げな表情の彩乃を見た俺達は一抹の不安を抱いた。
また何を企んでるんだか。
「こうして皆で集まってすることなんて1つしかないでしょ!」
「な、なんだ?」
「皆でって……旅行でありがちなのはトランプとかボードゲームとかかしら?」
セオリーに沿った模範的な推測をする沙耶香先輩を彩乃はチッチッチッと人差し指を立てる。
「男女で集まってやることですよ?瀬戸先輩は分かりますよね?」
「おう。男女でやることなんてひとつしかねえよなあ?」
2人はちゃんと意思共有ができている模様だ。
男女でやること……男女……ん、男女!?
俺は一瞬卑猥な想像をしてしまう。それは沙耶香先輩と雅も同じだったらしく、顔は真っ赤に蒸し上がっていた。
「な、なななななに考えるの彩乃さん!?ま、ままままさかあなた!」
「え?何そんなに慌ててるんですか?」
「だ、だってその……ほら、私達はまだ高校生だし……」
「ああ、もしかして沙耶香先輩……むふふ、なるほどぉ」
何かを察した彩乃はにやり口角を上げる。
「違うッスよ先輩。俺らの考えてるのはそんなやましいことじゃないっスから」
「そ、そうなの?じゃあ勿体ぶらないで早く教えてよ!」
自分が弄ばれてると思い声を上げた沙耶香先輩に彩乃と和希は目配せし、2人で声を合わせて言った。
『それは……王様ゲームだ(です)!!』




