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第55話 「敵視」


あれから数日過ぎたとある日の休み時間────。


俺は考え事をしながら、廊下を歩いていた。



───みんなのことを見ててって言われたものの、あれから特に変わったことはないんだよなぁ。


結局、休み時間に他愛のないことを話したり、昼休みに中庭で弁当を食ったり、偶に食堂で弁当を食ったり……食ったり……食ったり……。


……あれ?一緒に飯しか食ってなくね?


それまではなんだかんだで色んなハプニングが起きてたけど、彩乃とのホテルイベントがあってからキッパリ無くなったな。


まあ、これが普通なんだろうけど。


ことある事にドキドキイベントがあったら俺の身が持たないしな。


気長にやっていくしかない、か……。


そんなことを考えながら教室に戻ろうとしていた、その時。


黒髪美少女が視界の端に入ってきた。


工藤沙耶香先輩だ。

なんか、考え事をするたびにばったり会うよな、この人とは。


彼女は両手いっぱいにファイルの束を持っていた。


生徒会の仕事だろうか。


と、そんな時。


「きゃっ!」


足がもつれたのか、転んで両手に持っていたファイルを廊下にぶちまけた。


あらら、そりゃそんだけ持っていたら足元が見えないだろうさ。


俺は彼女に声をかけながら近づいた。


「大丈夫ですか?沙耶香先……」


そう言って、手を伸ばしかけた時、俺の助力を遮断するかのような声が聞こえた。


「大丈夫ですか!工藤会長!」


そして、沙耶香先輩の隣に駆け込む1人の男子生徒が視界に入ってきた。


その男が彼女の傍に寄るやいなや、廊下にいた生徒達がざわつき始めた。


「副会長の笹原くんよ」


「はわぁ、かっこいいわぁ」


「会長を誰よりもすぐに助けるなんて、優しい!」


「工藤先輩と笹原くんってお似合いよねぇ」


「付き合ってるのかしら……」


そこら中で「笹原」という名前が飛び交い、女子生徒の瞳のハートが浮かび上がっている。


笹原裕翔……そういえば、いつかの雨の日に沙耶香先輩が話題に出てたやつだっけ。


成績はいつも学年トップ。顔も女子受けの良いイケメン顔の才色兼備で、おまけに優しい。非の打ち所ない優等生だ。


なんだこの完璧超人は。少女漫画の中からでも出てきたのだろうか。


名前は知っていたが、実際に間近で見たのは初めてだったが、確かにこの男は沙耶香先輩と並んでいてとても自然だ。


しかも優しいじゃないか。ちょっとした優しさですぐ落ちるようなチョロインの沙耶香先輩はなんで俺に告白したんだろう。


今更になって不思議に思った。


どこから見てもお似合い……。


と、そんなことを考えながら俯瞰して見ていると、笹原裕翔が俺に視線を合わせてきた。


なんだろう、なんかガンつけられてる感じがする。


目が合った瞬間、彼は沙耶香先輩から見えないように、俺に憎悪のような視線を送ってきた。


どこか、俺を目の敵のように見てきた。


な、なんだその顔は……俺、あんたになんかしたか?


と、そんな時、別方向から大きな音が聞こえた。


「うわぁっ!!」


そんな叫びと共に、1人の男子生徒が運んでいた教材を廊下にぶちまけた。


なんだ、今日は廊下に物をぶちまけるデーなのか?


しかし、他の生徒達は沙耶香先輩の方に意識が向いていて、誰もその男子生徒を見ていなかった。


俺は沙耶香先輩の方から視線を逸らし、その見ず知らずの男子生徒の方に向かった。


「だ、大丈夫か?」


教材を拾いながら、怪我がないか確認を摂る。


「あ、ああ。悪い」


「その教材重そうだな。俺も運ぼうか?」


「え、いいのか?別のクラスなのに」


「別にいいって。暇だし」


「あ、ありがとう」


教材を半分持たせてもらい、男子生徒の指示に従って一緒に運び始めた。



そんな時、工藤沙耶香と笹原裕翔は───。


「会長、こういうのは副会長で、男の僕が運びますので、ちゃんと言って……」


落ちたファイルを拾いながらそう言う裕翔だったが、沙耶香の方を見た瞬間、言葉を詰まらせた。


「はわぁ……ナオくんが見知らぬ生徒を……優しいわぁ……」


ふわふわした表情をしながら、直之が男子生徒を手助けしているのを見ていた。


誰が見ても明らかだ。完全に恋する乙女の顔をしている。


裕翔は強く歯噛みし、とうとう声をあげた。


「ちょ、会長!僕も今手伝ってるんですけど!」


「え?あ、うん。ありがとう笹原くん。本当に助かったわ」


感謝こそされるが、直之に向けていた態度とはまるで違う。


───くそっ、なんで会長はあんなやつをっ。


決して顔には出さないが、胸の内で激しい憤りを覚えていた。


───あんな地味なやつのどこがいいんだ!絶対に許さないぞ……橋田直之。




ざっと1ヶ月ぶりの更新となりました。これまで楽しみにしてくださっていた方、お待たせして大変申し訳ありません。

今後の更新についてはまだ未定なので、次話の更新はいつになるかは分かりませんが、まだまだこの作品は終わらないので、どうか暖かい目で見守ってくださると幸いです。

この日までブックマークを消さずに待ってくださった方、本当にありがとうございました。これからも更新頑張りますので、どうか応援よろしくお願い致します!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 何だかんだと、この作品を気に入っておりまして・・・ 久しぶりの更新嬉しいです。 ハーレム化しておりますが、タイトル的にはヒロイン1人なんでしょうかね? この辺りもこれからの注目ポイントだ…
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