第50話 「デート」
───それからあっという間に1週間が過ぎ、週末の朝を迎えた。
今日は俺が風邪の時に看病に来てくれた彩乃へのお礼という名目で、2人で遊びに行くという約束になっていた。
事前に決めておいた待ち合わせ場所に、俺は15分前に到着した。
もう遊園地の時の失敗は繰り返すまいと、今回は早めに就寝した。
そして、待ち合わせ場所に着いてから10分ぐらいたった頃に、彩乃の声が聞こえた。
「せんぱーい!お待たせしましたー!」
手を振りながら俺の方に走ってくる彩乃に、俺は少し見蕩れてしまった。
なんか、前より気合いの入った服装だ。正直、可愛いとしか言えない。
「すみません。どのくらい待ちました?」
「そ、そうだな……」
そこで1度俺は口を噤む。
……ここはお約束の台詞を言った方がいいのだろうか。
「そうだな、俺もついさっき来たところだけど」
意外と恥ずかしいな、これ。どうしよう、カッコつけすぎたか?
「そうだったんですか?良かったぁ」
おお、ちゃんと信じてくれたみたいだ。
「そんで?今日はどこ行くんだよ。その辺は何も決めてなかったけど」
「そーですねぇ……ま、とりあえず適当にぶらつきましょー!」
「そ、そんなんでいいのか?」
これまでは、雅が考えた方3つの選択肢の中から俺が選んでいたから、適当なんて言葉を聞くのは久しぶりな気がする。
「いいんですよ!デートなんてそういうものですって」
「そ、そっか。まあそっちがいいなら、いいんだけど」
俺は着いていくだけだし。
「よーし!じゃあ早速行きましょー!」
高らかと拳を突き上げ、楽しそうに笑う彩乃に、俺は果たしてついていけるのか心配になった。
「ほーら、せんぱいももっと楽しそうにしてくださいよー!」
「お、おう」
そして、実質初めて女の子と2人の……デートが始まった。
街中の様々な場所を行ったり来たり、最初に何をしたかも覚えてないくらいに、俺たちは歩き回っては目に止まったところで何かしらして……そんな時間が続いた。
「ほーらせんぱい!まだまだ色んなとこ行きますよー!」
「ちょ、ちょっとまって……休憩させてくれっ!」
もう2時間は歩き回ってるのに、ピンピンとしている彩乃に、体力に自信の無い俺はついていける訳もなく、息を荒くしながら彩乃を追いかける。
「そーですねぇ。結構いい時間ですし、お昼でも行きますか」
「そ、そうしてくれると助かる……」
くそっ、なんか負けた気分だ。
女性経験がないとはいえ、まさか後輩にここまでリードされるなんて……情けないにも程があるな、俺。
───そして俺達は近くにあった適当な店に入り、軽く食事を済ませた。
「美味しかったですねー、せんぱい!」
「まあ、美味かったけど……」
食った途端からまたはしゃぎ出して、正直まじでついていけない。
「さあさあ!次はどこに行きましょうか」
「も、もう行くのか?」
「当たり前です!時間は有限なんですよ?せんぱいともっと遊びたいんです!」
今日は彩乃の為の企画だ。俺がどうこう言う筋合いはない。
だが………。
「な、ならせめて、屋内で遊べるとこにしないか?」
もう彩乃のペースで歩き回る元気は俺にはない。
どこか屋内で長時間滞在出来るとこじゃないと身が持たない。
「うーん、そうですねぇ……あ、じゃああそこに行ってみましょう!」
そう言って、彩乃は俺の手を掴んで走り出した。
「おいっ、ちょっとまっ……!」
飯食った直前に全力疾走とか、普通にゲロっちゃうから!彩乃の体はどうなってるんだよ!?
手を引かれるまま、俺達が向かったのは、駅から10分歩いた所にあるボウリング場だった。
「デートと言えばボウリングですよ!」
「そ、そういうもんか?」
ボウリングなんて、何年ぶりだろう。
小さい頃、家族と何度か行ったっきりで、同世代の……それも女の子となんて夢にも思わなかった。
まあ、ここなら腰を下ろせる時間もあるし、普通に楽しめそうだ。
「じゃあせんぱい、スコア負けた方罰ゲームですからね!」
おお、なんか高校生っぽい。
しかし、いくら俺でも、勝負となれば女の子相手でも本気だ。
さっきから彩乃に振り回されってばかりだし、ここいらで見返してやらねば。
「よ、よっしゃ。やってやる」
運動神経がいくら悪くても、ボールを真っ直ぐ転がすぐらいなら。
ぐらいなら………。




