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第27話 「会長がとんでもなく初だった 前編」


昼休み───トイレの帰りに廊下でばったりと奴に出会ってしまった。


「あ、せんぱーい!!」


「うげっ」


彩乃の声が聞こえるやいなや、俺はあからさまに嫌そうな顔をしてやった。


「うげって、酷くないですか?というかこんなところでばったり会うなんて偶然ですね!」


休み時間は来なかったから観念したのかと思ったが、2年の階の廊下で出会ってる時点で偶然ではない。


「嘘つけ。どうせ教室に来ようとしてたんだろ」


「へへ、バレちゃいましたか。でも休み時間は行きませんでしたよ?」


いや昼休みも休み時間うちなんだけど。


なんか別のタイムイベントとでも思ってるのか?


「はぁ、まあいいや。言っとくが、もうあの変な3択はやめてくれよ」


「わかってますって。だから……えい!」


瞬間、彩乃はまるで小動物のように俺の腕に飛びついてきた。


「な、なにをっ!?」


「えへへー、私は気づいたのです!最初からこうすればよかったと」


飛びついた腕に自分の体を擦り寄せて来る彩乃。


同時に周りからの視線が一斉に刺さる。


だが、そんなことがどうでも良くなるぐらい、俺は動悸が激しくなり、顔も熱くなった。


これはあかん。雅と手を繋いだ時より断然。


そう、これは雅と初めて会った時に事故で押し倒してしまった時ぐらいのやばさだ。


俺、女子と密着しちゃってるよ!


なんかいい匂いする。それに、腕に僅かな柔らかい感触が……って、これはまさかっ!?!?


俺は彩乃が密着している部分を見て目を丸くした。


決して大きいとは言えないが、俺の腕に当たっているのは正しく、女性特有の……アレだった。


「どうですかぁ先輩……?」


超必殺、上目遣いを使いそんなことを聞いてくる。


わかったぞ、これが……「あざと可愛い」ってやつだ。


というか、そろそろ俺の理性が限界だった。


「ちょっ、もういい加減離れろ!!」


俺は残った理性をフル活用し、彩乃を引き離した。


ふぅ、危ねぇ。もうちょっとで元気になるとこだったぜ。


「ねえ先輩、ドキドキしたでしょ」


「う、うるせえ。こっちは耐性ないんだよ……」


くそっ、年下の女の子にいいようにされるなんて、相変わらず俺ってやつは情けない。


自分の女性経験のなさを痛感していた、その時だった。


「ちょっとそこの2人、廊下の真ん中でそんな不純なやめて貰えないかしら」


その声に少し背筋が凍りつきそうになった。


振り向くと、そこには生徒会長の工藤沙耶香がいた。


「生徒会長だ」


「今日もお美しいわ」


「あの凛々しい佇まいがたまらねえ」


廊下にいた生徒達の視線は俺達から一瞬で彼女の方に移った。


「あ、これは、えっとですね……」


「言い訳は結構よ。校内での不純異性交流は厳禁よ。分かっているわね」


「は、はい……」


え、なにその冷たい視線。怖いんですけど。


「今回は見逃してあげるけど、今度見つけたら反省文は覚悟しておいてちょうだい」


「はい……すみません」


そうだった。普段学校にいる時はこの態度なんだっけ。


生徒会長としての威厳を保ちたいだとか、こういうイメージが根付いてもう後戻り出来なくなったとかだったっけ。


にしても、やっぱり学内での工藤先輩は確かに凛々しい。


これが学内一の人気を誇っている由縁なのだろう。


「ほら、お前もさっさと自分の教室戻っとけ」


「はーい」


彩乃は不機嫌そうな顔しながらその場を去っていく。


「じゃ、じゃあ俺も教室戻るんで……」


ことが済んだと判断した俺は教室に戻ろうとした。が、その時。


「ちょっと待ちなさい、橋田くん」


「はい?まだ何か?」


「今回の件を不問にする代わりに、ちょっと今から手伝ってもらいたい仕事があるのだけど、いいかしら?」


ああ、そういうことか。そりゃ、ただで見逃してくれるわけはないか。


「あ、はい。いいですよ」


「そう。じゃあ着いてきてちょうだい」


そう言って歩き出す彼女に俺も後を着いて行った。



────向かった先は、ひと気の少ないあの空き教室だった。


……てか、またここかよ。ここに来る時はいつも何かしらあるんだよなぁ。


「えっと、それで、仕事っていうのは何ですか?」


「………いわ」


目を伏せながら、小さな声でぼそぼそと何か言っていた。


「え、何ですか?」


「ずるいわ!!春川さんと、あ、あんなことするなんて……っ」


誰もいない昼休みの空き教室に、赤面した彼女の声が響き渡った。


…………ん???


「えっと先輩、ずるいって……」


言葉の意味が理解出来なかった俺はもう一度聞き返そうとした。


と、その時彼女は腕を組みながらこう言った。


「わ、私にも何かして。でないとさっきのこと、見逃してあげないわ」


なんだそれ。


仕事というのは当てつけだったのか。理解はしたが、なにかするって言ってもな……あ、そうだ。


「あー、じゃあ、はい」


俺のは1度経験がある。それに、あの後姉を使ってシュミレーションもしたし、もうあの時のように取り乱したりはしない。


少し割に合わないかもしれないが、俺は彼女の手を握るという選択をとった。


うおぉ……やっぱ女の子の手はすごいな。


柔らかくて温かいのは一緒だが、雅より少し指が長い感じがする。少ししっとりしていて、手が吸い付いていくみたいだ。


俺はだいぶ冷静になれていた。


まあ彩乃が腕に飛びついてきた後だからだろうか。手を繋ぐという行為がだいぶましに思えてくる。


「えっと、これでいいですか?」


きっと先輩は、俺なんかよりもずっと冷静でいるんだろうな。


と、思いながら彼女の方に視線を向けた。


だが、そこには顔を朱色に染めたまま固まっている生徒会長がいた。


………あれ?


「ど、どうしました?」


「……」


顔を赤くしながら何か驚いたように目を丸くしていた。


あぁ、これは……。


「も、もしかして先輩、照れてますか?」


「そ、そそそうじゃなくてっ!!」


これは完全に照れているな。もうなんか呂律回ってないし。可愛いけど。


初めて雅と手を繋いだ時の俺より動揺してるんじゃないか。


やばい、俺もなんか照れくさくなってきた。


彼女のことだから、異性に対してももっと余裕のある人だと思ってたけど、そうでもないのか?


なんか立場逆転してるな。


「も、もう無理!これ以上はこ、子供ができちゃうわー!!!」


急に手を話したと思ったらそんなことを叫びながら壁に向かって走り出した。


案の定、彼女はすごい音を立てながら思い切り壁に激突した。



え……いや、えぇえ!?

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[一言] なんとも可愛らしい嫉妬だね沙耶香
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