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第26話 「元地味子のアプローチが凄い」


───最近の俺の日常はおかしすぎる。


雅に3択カードを選ぶように言われたあの時から、俺の平穏だった人生の歯車は狂いまくりだ。


雅のあがり症を治すという名目で友達になり、それからというものは非常の待ったなし。


学園の三姫のうちの2人からの突然の告白。これだけでもうおかしい。


知らぬ存じぬでやんわりと断れば、友達から始めようとか言われるし。


いつもは和希だけしかいなかった俺の周りには、常に学園の美少女の誰かしらがいる。


なにそれ天国かっ!……と言いたいところだが、そう上手くはいかないもので。


最近では、クラスの男子からの嫉妬の視線が痛すぎる。


「くそ、うらやましい」とか、「なんであいつが」だとかこそこそと言われる毎日。


いや、「なんであいつが」ってのは、俺が言いたい台詞なんだが。なんで俺が……。


付き合いたい女子ランキングっていっても、それは極めて客観的なものだったと気づいた。


どれだけ可愛くても、知り合ったばかりですぐに付き合いたいだなんて微塵も思わなかった。


そんなことするのは、相当女に飢えた野獣ぐらいだ。


……俺は違うからな!彼女いない歴=年齢のチェリーボーイだけど、飢えてはない。


とにかく、俺の人生は現在、非日常の一途をたどっている訳だ。


これは俺の感だが、まだ何かありそうな気がする。


そんなことを考えていた時の……これだよ。


「せんぱーい!私もカード作ってきましたあ!さあ、選んで下さーい!」


1限目後の休み時間から俺の教室に突入してくる美少女が1人。


瞬間男子生徒からの鋭い視線を一身に感じた。


その手には見覚えしかない3枚のカードが見える。


おいおい、冗談だろ。こいつまさか……。


「……ちょっと彩乃さんや、それは何のつもりだ?」


「ほぇ?いやぁ、だって逢坂先輩がいつもやってるの見て、なんか面白そうだなって」


雅にインスパイアされちゃったって訳か。いつか言い出すかとは薄々思っていたが、こんな早くにくるとは。


「ほら、早く選んでくださいよ!」


「やだよ。お前何か変なこと書いてそうだし」


以前の二の舞にだけは絶対なってやるものか。


「変なことなんて書いてませんって。なんなら見せてもいいんですよ?」


「え、まじ?」


「はい!私は逢坂先輩と違って、がんがんさらけ出しちゃいますよー」


確かに、雅と今の彩乃では性格がかなり違う。


本当にあの地味子だったのかと割と本気で疑う。


「じゃあ見せてくれ。それで決めるわ」


そう言うと、彩乃は手に持つカードを3枚とも渡してきた。


こりゃまた斬新だな。てか、こんだけ堂々としてるんなら、選択肢カードを使う必要ないじゃねえか。


とりあえず、俺は1枚ずつ内容を見ていく。


1つ目───先輩が私に壁ドンしながら愛を囁く。


2つ目───先輩が私の耳元で愛を囁く。


3つ目───先輩が愛を囁きながら、私に無理やりキスする。


………はい、これはアウトだわ。少なくとも3つ目はあかんわ。


「さあ!好きなのを選んで下さい!」


何がおかしいんですか?と言わんばかりの顔をしながらそんなことを抜かす彼女に俺は呆れ果て、カードを全て投げ捨てた。


「あー!ちょっと何するんですか!?」


「何するんですか、じゃねえわ!なんだよこれ!」


結局全部俺が愛を囁いてるし、そもそもその状況がやばすぎる。


3つ目のは、証言次第じゃ完全に犯罪だろ。


「いやぁ、こうしたら先輩が私に愛を囁いてくれるかなと思いましてね。えへへ」



えへへって……いやだから可愛いなおい。


しかしまあ、何度も言うが、本当に信じられない。こんな明るいやつが、中学ん時の地味子だなんて。


「はぁ……もういいから、早く教室戻れよ」


さっきから周りの視線がずーっと痛いんだよ。


「ええ!?選んでくれないんですか!?逢坂先輩のはちゃんと選んでるのにぃ!」


「選ばねえよ。雅はお前みたいに変なことカードに書かねえからな」


「いやいや、わかりませんよお?もしかしたら、私なんかよりもえげつないやつを入れてたかもしれないですよ?」


それはない。あくまで友達の範囲でのことしか書かれていないはずだ。まあ、たったの1回だけ、ちょっと自分の精神力を試されるようなカードを引いたことはあったが……それは言わないでおこう。


「まあそれはいいから、とりあえず教室戻っとけ」


「ええ?もっとお話しましょうよー」


「もう少しで授業始まんぞ?」


そんな会話をしていると、背後から和希の視線を感じた。


「おーい、俺のこと忘れてるだろうお前ら」


2人だけの世界に入っていた俺たちをジト目で見ながらそう言った。


「あ、ああ悪い。こいつが急に変なこと言ってくるから」


「ちょっと酷くないですかー?」


「うるさい、さっさと帰れ」


そんなやりとりをしていると、和希はにまっと笑った。


「にしてもお前ら急に仲良くなったよな。もしかして付き合ってんの?」


その質問を否定しようした俺の口を塞ぐように彩乃が前のめりになって俺の視界に入ってきた。


「え、やっぱりそう思いますか?えへへ」


えへへじゃねえよ。勝手に舞い上がりやがって。可愛いけど!


ちなみに、和希には彩乃と昔会ったことがあるとだけ言って、告白のことは話していない。


理由はどうであれ、俺は学園でも屈指の美少女に告白されてしまったんだ。


もしどこからかそんな情報が漏れたら、全校の男子生徒に一瞬で吊し上げにされそうだ。


彼女にも口外しないようにもう一度よーく言っておこう。


「付き合ってはねえよ。まあ、友達だ」


「へえ……友達ねぇ。そういえば、あの生徒会長とも最近よく話してるみたいだけど。そこんとこどうなんよ?」



沙耶香先輩のことはまだ話していなかったはずなんだが、和希にはもうばれていた。


「いや、まあ、あれだ……友達ってやつだ」


「はは……また友達かよ」


和希は呆れ果てた顔で愛想笑いを浮かべている。


まあそうなるわな。


と、そうしているうちにようやく次の授業の予鈴がなった。


なんかだいぶ長く感じた。


「ほら、予鈴鳴ったぞ。早く行かないと間に合わなくなるぞ」


「はーい、仕方ないですねぇ……じゃあまたすぐに来ますね!」


( ははー、もう来なくていいぞー)


心の中でそう言いながら俺は教室を出ていく彼女に手を振った。


あぁ、なんかどんと疲れたな。


でもこれでひとまず一息つける。


と、思っていたが。


「おいおいナオ、お前いつからハーレム主人公にジョブチェンジしたんだ?」


そうだった、まだ和希がいたわ。


「はぁ……そんなんじゃないんだってまじで」


こんな精神的疲労だけが蓄積していく状況のどこにハーレムの楽園があるっていうんだ。




「とぼけんなって、逢坂さんに続きあの春川彩乃に生徒会長の工藤沙耶香……まじでどうなってんだよナオ」


そんなの、俺が知りたいっての。


「はぁ……まじでどうなってんだろうな」


最近本当に、ありえないこと続きで俺も気が滅入っているんだ。


特に彩乃の積極性は恐怖さえ感じるようになってきた。


だが、今になってあの時の言葉を思い出す。


(───変わった私を見ててください)


そりゃ、見てまうわ。あんだけゴリ押されたらな。


しかし、それはそれだ。さっきの3択カードは流石に度が過ぎている。


特に3枚目のアレはモロにアウトなやつだ。


壁ドン?、耳元で囁く?、無理やりキス?なにそれ、どこの乙女ゲーに出てくるイケメンキャラだ。はたまた少女漫画の読みすぎか。



あの癖の強い3択カードはもう2度と見たくないと本気で思った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公、ちょっとおもしろ・・いや、大変ですねぇ〜。
[一言] グイグイ来るな彩乃。 今のところ彩乃有利では!?
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