表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/109

第15話 「学園のアイドル」

俺は手紙を握ったまま、体が動かなくなった。


───どうすんだこれ。これは明らかにラブレターだし、んー……どうすんだ!?


俺は混乱が止まらなかった。


しかし、予鈴は鳴り、担当教師も入ってきていた。


この場で固まっていたって仕方がない。


俺はポケットに手紙を突っ込んで自分の席に戻った。


このシチュエーション、デジャブすぎる。


雅の時と同様に、ラブレターのことで頭がいっぱいになり、他の思考を停止させていると、いつの間にか放課後になっていた。


他の生徒達が帰って行くのを見てようやく気づいた。


「あれ、もう放課後?」


くそっ、まずいまずい。


まだ心の整理がついてないってのに。



俺は机に頭をつけながらどんと肩を落としていた。


考えすぎて疲れてきた。


でも、マジでどうしよう。


これは妄想抜きでほぼ100パーセントラブレターだ。


いや、また俺の勘違いなのか?


今までそれでどれだけ恥ずかしい思いをしてきたことか。


よく考えてみると、こんなあからさまなラブレター、普通送ってくるか?


これこそ、何かのイタズラだったりするんじゃないか?


そうだよな。だってラブレターを送られる要因が一つもないもん。


雅の時だって、小学生の頃の出会いを持ち出してきた。


高校に入ってから女子とまともに関わったことはまず無い。


かと言って、高校に入る以前の記憶にも、雅以外に関わりを持った女の子は居ないはずだ。


いや、また俺が忘れてるとか?


実はどっかで窮地からその子を助けてたりとかしたりして。


……って、だから妄想!やめろ俺!


そんな感じで自分の中の理性と妄想が格闘を繰り広げていた。


と、その時だった。


「あ、あの……直之、くん……」


この声は……。


聞き覚えのある声が聞こえ、俺は一旦思考をやめ、頭を上げた。


「ん、おお、雅。どうした?」


生徒達がほとんど帰った教室に現れたのは、友達の逢坂雅だった。


「えっと、今日も……あの、お願いします」


そう言いながら、雅は見慣れた3枚のカードを出した。


ここ1週間は、放課後に選択肢カードを引くのが当たり前になっていた。


カードの内容は大抵、2人で一緒に帰るか、最近俺たちがハマっているスマホゲームをするかのどちらかが多い。


友達らしいことをしたいという雅の要望だった。


いつもなら、はいはいと二つ返事ですぐにカードを引くところだが、今日はどうしても手が出せなかった。


「あー……今日はちょっと用事があってさ。ごめんだけど今日だけ引かなくてもいいか?」


「あ、え……はい。全然、大丈夫、です……」


彼女はそう言うが、少し落ち込んでいるようにも見えた。


「本当にごめん。じゃあ俺は行くとこあるから、また明日ね」


「あ、はい……また、明日……」


挨拶を交わし、俺は教室を出ていった。


雅には悪いが、ちょうど決心をつけるいいきっかけになってくれた。


俺は急いで空き教室に向かった。


とりあえず、行ってみて確認するしかないからな。


空き教室に着き、俺は一つ深呼吸をした後、扉を開けた。


雅のように、また教卓に隠れてるんじゃないかとも想像したが、今回はちゃんと視界に入るところにいた。


教室には1人、見覚えのない女子生徒がいた。


しかし、俺は一瞬でわかった。


彼女は雅に匹敵するほどの……美少女だと。


夕日に当たっても尚透き通るような肌に大きな瞳。


幼さが残る顔立ちだが、誰がどう見ても美少女と認識するだろう。


「待っていましたよ。橋田直之……先輩」


俺と目があった瞬間、彼女は俺のことを先輩と呼んだ。


どうやら1年生のようだ。


「え、えっと、この手紙をくれたのは君で間違いないかな?」


俺はポケットから手紙を取り出して見せた。


これもまたとんでもないデジャブ。


「はい。その通りです。私は先輩がとても気になっていました。ずっと前から」


「ずっと前からって……俺たち初対面だよね?少なくとも俺は君のことを知らない。君は誰なんだ?」


こんな美少女知らない。1年生だし、会う機会がそもそもほとんどないはずだ。


「私ですか?私は1年の春川彩乃と言います。自分で言うのもなんですけど、私結構有名なんですよ?」


その名前には聞き覚えがあった。


学園の三姫と呼ばれている3人の女子生徒の1人だったはず。


「春川彩乃……て、あの春川彩乃っ!?!?」


「そうですよ。すぐに気づいてくれると思ったのに……でも、そんな抜けたところも最高です!」


え?え?なんで彼女が俺のことを……!?


まったく意味がわからない。


「で、でも、俺たち初対面なはずだ。俺だって名前を聞いたことがあるだけで、俺は君のことなんて知らない」


「そうですね。私も先輩とちゃんと顔を合わせたのは初めてです。高校に入ってからは」


「えっ……それって……」


おいおいまじかよ。


これは……雅の時とまったく同じパターンなのか?


そして、そんな予感は見事に的中した。してしまったのである。


「私が初めて先輩に出会ったのは、中学2年生の時でした」


………………………。


またこれかよ!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは。臥龍と申します。 一気に読んでみました。甘い雰囲気が好きです。 毎日更新とはすごいですね、尊敬しちゃいます。 執筆応援してます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ