第16話 「春川彩乃の過去 前編」
私、春川彩乃は当時、中学2年生だった。
今は学校のみんなから人気を集めて、男の子の間では学園のアイドルなんて言われたりしているらしい。
でも、中学2年生の私は、今とはまったくと言っていいほど別人だった。
人と話すのが苦手で、自分に自信が持てなかった。
見た目も、お下げの三つ編みで、眼鏡をかけていたので、クラスメイト達からも、根暗女とか、ヲタクだとか噂されていた。別にヲタクじゃなかったけど、根暗ではあったと自分でもわかっていた。
なるべく人と関わらないように、いつも隅っこで地味に過ごしてきた。
こんなんじゃダメだって思ってたけど、やっぱり人と話すのは嫌だった。
そして、それには明確な理由があった。
私は人の表情を見て、何となくで不明確だけど、その人の本性がわかったのだ。
それに気づいたのは、中学1年生の頃で、最初は思い込みだろうと思って、普通に会話できていた。
でも、ある出来事から、これは私の思い込みじゃなかったと確信した。
ある日の放課後、私は同じクラスの男の子に告白された。
でも、まだ中学1年生だし、恋愛なんてしたことなかったから、そういう感情がわからないといって告白は断った。
その次の日、1人の女の子からこう言われた。
「ねえねえ春川さん、昨日告白されたって本当?」
そう言ってくる女子生徒の顔には好奇心に満ち溢れたような表情が浮かんでいたが、その裏に確かな負の感情があることに気づいた。
「え、うん。でも断ったよ」
また気のせいだろうと、その時は思っていた。
だけど、その日の放課後、下校途中で忘れ物に気づき、教室に戻った。
教室の扉を開けようとした時、誰もいないはずの教室から声が聞こえた。
少しだけ扉を開け、そこから覗き込むと、今朝話しかけてきた女の子含め、3人の女子生徒がいた。
「ねえ、春川さんってさ、ちょっと調子に乗ってるよね」
「あ、それわかるぅ!ちょっと可愛いからって、なんか気取ってるって感じ?」
「そうそう!ああいう子が1番嫌われるタイプだよね!」
私の机の周りでそんな会話をしていた。
「そういえば、春川さん昨日東くんに告白されたらしいよ」
「えっうそ!?それで?」
「振ったんだってさ」
「うわー何それ、東くんに告白されて振るとかありえないわー」
「東くん可哀想。てか、本当に調子乗ってるんだね、春川さんって」
そんな会話の最中、今朝の女子生徒が思い切り私の机を蹴りながら叫んだ。
「なんであいつなのよ!私の方が……東くんのこと好きだったのに!マジでムカつく!」
それを見て、今朝の違和感は確信に変わった。
表には出さなくても、裏ではまったく違う感情があって、そっちが本心なんだって。
私に対する怒り、憎しみ、嫉妬がすぐにわかった。
そして、次の日学校に行った時、クラスメイトの私を見る目はあからさまに変わっていた。
教室に入ると、1人の男子生徒が近づいてきた。
告白してきた東くんだった。
「おい。お前さ、俺が告白したことみんなに言いふらしたみたいだな」
「……え?」
不意に言われたことに私は気の抜けた返事を返した。
「とぼけんなよ。みんな言ってるぞ。お前が俺のことバカにしてたってな」
「そんなこと……私、してない」
何の話かさっぱり分からなかった。
しかし、クラスメイト達は皆、私を冷たい目で見ていた。
そんな中に1人、不気味な笑みを浮かべる1人の女子生徒がいるのに気づいた。
それを見て、私は理解した。
言いふらしたのは、あの子だってすぐにわかった。
───あぁ……女って……人って、怖い生き物なんだ。
そんなちょっとしたことで、こんな恐ろしい目に遭うのなら、私は誰とも関わりたくない。
それからだ。私が自分を隠すようになったのは。
常に存在感を消し、陰でひっそりと過ごす学校生活が始まった。
まあ、そんなことをしなくても、私に話しかけてくる人はもういなかっただろうけど。
それから1年が経ち、中学2年生になったある日、私は具合が悪いと言って、保健室で1日中過ごすことにした。
本当に具合が悪かったわけじゃない。ただその日は、学校祭の準備期間で、学校全体がイベントに向けて盛り上がっていた。
もちろん、クラスメイト達も。
そんな中、私なんかがいたらきっと皆嫌がる。そう思ってたどり着いた選択肢がこれだった。
私は保健室のベッドで静かに時間が過ぎるのを待っているだけだった。
と、そんな時、2人の男子生徒が保健室に入ってきた。
どうも、たまに後書きの方が筆の乗る作者のくろぉばあです。毎度のことながらまずは一言言わせてください。この作品を読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます!ブックマークも着実に増えてきて、投稿開始5日目にして、初めて日刊ランキングに乗ることが出来ました。しかも37位!!皆様には本当に感謝しかありません。全体からすれば、とても小さなことなのかも知れませんが、作者としては、今この作品を面白いと思ってくださる方を大切にしていきたいと思っております。
これからも皆様のために執筆活動を頑張りたいと思うので、どうか応援よろしくお願いします!




