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癒やしの札と第三の進路  作者: 孔雀丸


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第14話 反転する癒やし

七人の鬼を沈黙させた校庭に、束の間の静けさが訪れます。


けれどそれは、終わりの合図ではありませんでした。


歩美の黄色い札が鬼を人間へ戻そうとする力なら、その正反対の力を持つ者もまた、この物語には存在します。


浜坂由加里――角羅。


同じ「回復札」という名を持ちながら、まったく逆の方向を向く力。


治すはずの手が、何をもたらすのか。


「癒やし」という言葉の意味が、大きく揺らぐ一話です。


それでは、第14話「反転する癒やし」をどうぞ。

 校庭に、風が戻ってきた。

 さっきまでの喧噪が嘘のように、地面には七つの影が転がっている。

 悪路漢(あくろかん)邪顎(じゃがく)冥顎(めいがく)鱗華(りんか)麗刃(れいじん)咬覇(こうは)、そして牛竜(ぎゅうりゅう)

 誰も動かない。

 呻き声だけが、夏の熱気にまとわりつくように低く響いている。

 友紀(ゆき)朱迅剣(しゅじんけん)を握ったまま、荒い呼吸を整えていた。

 (れん)は倒れた七人を一人ずつ視線でなぞり、動く気配がないかを確認している。

 (つばさ)翠輝剣(すいきけん)を杖のように地面へ突き、崩れそうになる膝を支えていた。

 誰も「勝った」とは言わなかった。

 言葉にすれば、何かが壊れてしまう気がした。

 歩美(あゆみ)は、自分の右手を胸元へ引き寄せていた。

 指先が震えている。

 七枚の黄色い札を、次々と敵の身体へ貼りつけた感触が、まだ皮膚の上に残っている。

 紙の薄さと、その下で暴れた鬼気の重さの落差が、腕の芯まで痺れさせていた。

 冥顎の悲鳴。

 邪顎の絶叫。

 咬覇の呻き。

 それらが、耳の奥で別の記憶と重なる。

 治せるかもしれない。

 そう呟いて、傷ついた恨卑へ札を貼った瞬間の光景。

 灰になって崩れていった小さな鬼の姿。

「勝った」という言葉が、喉の途中で止まった。

 代わりに込み上げてきたのは、自分が今、何をしたのかという問いだった。

 膝の裏が冷たい。息を吸うたび、肺の底に小石でも詰まっているようだった。

 南海(みなみ)が歩美の背中にそっと手を添える。

「歩美、大丈夫?」

 歩美は頷こうとして、頷けなかった。

 その時、校門の外から小さな音が聞こえた。

 チリン。

 澄んだ、鈴の音だった。

 風で鳴った自転車の鈴か、誰かの鞄についた飾りか。

 そう思えるくらい、最初は無害な音だった。

 しかし音は、少しずつ増えていく。

 右から聞こえたと思えば、次の瞬間には左から。

 校舎の窓、体育館の屋根、グラウンドの隅。

 複数の方向から、同時に鳴っているように感じられる。

 翼が翠輝剣を構え直した。

「……ただの鈴じゃない」

 音を聞くたび、倒れている鬼たちの呻きが、一瞬だけ遠く感じられる。

 音による位置感覚の攪乱。

 翼はそう直感し、周囲へ短く警告する。

「霊気が乗っている。位置を惑わされるな」

 その言葉が終わるより早く、校門の向こうに人影が現れた。

 黒と鮮やかなピンクの装甲鱗に覆われた少女。

 角羅細剣(かくらさいけん)を、肩へ担ぐように携えている。

 歩き方は、戦場へ来た兵士のものではなかった。

 舞台の袖から現れる役者のように、軽く、弾んでいる。

 校門を越えたところで、少女は片足を交差させ、両腕を大きく広げて一礼した。

「お待たせしました。倒れた役者さんを起こす、特別公演の始まりでーす」

 明るい声が、静まり返った校庭に響く。

 その背後から、無数の影が這い出てきた。

 恨卑(こんぴ)が校門の柱を這い、壁を伝う。

 疾牙(しつが)が獲物を探すように首を細かく揺らす。

 怒突(どとつ)が頭部の棘を震わせ、地面を踏み鳴らす。

 十彩獣団(じゅっさいじゅうだん)の面々は、瞬時に身構えた。

 友紀が朱迅剣を構え、綾実(あやみ)紫舞盾(しぶじゅん)を掲げる。

 伊織(いおり)は矢を番え、健太(けんた)玄牙棒(げんがぼう)を握り直す。

 しかし少女――角羅(かくら)だけは、明るく笑ったままだった。

 背後の鬼たちが、生徒や教師へ明確な殺意を向けているのとは対照的に。

 友紀は、その落差に寒気を覚えた。

「新手……いや」

 蓮が低く呟く。

「数が違う。戦力差が一気に広がった」

 しかし角羅は、十彩獣団へ向かって攻撃を仕掛けようとはしなかった。

 視線はまっすぐ、倒れている七人の鬼たちへ注がれている。

 その目的が、戦闘への参加ではないことを、友紀たちはまだ知らなかった。

 ◇

 角羅は、踊るような足取りで冥顎のもとへ近づいた。

 歩美たちの警戒など気にも留めない様子で。

 全身を内側から焼かれる苦痛に耐える冥顎を見下ろし、心配そうに首を傾げる。

「痛いの? 痛いの、飛んでけーってしてあげるね」

 その声には、本気の心配が滲んでいた。

 冥顎は答える余裕もなく、地面に爪を立てて呻くだけだった。

 歩美は、角羅の腰に複数の札入れがあることに気づいた。

 角羅が取り出したのは、黒い紙にピンク色の文字が描かれた札だった。

 大きさも、指で挟む持ち方も、歩美の黄色い札とよく似ていた。

「あの札……私と、同じ……?」

 思わず、声が漏れる。

 翼がすぐに首を振った。

「形は似ている。でも、込められている力が違う」

 歩美へ短く告げながら、翼は角羅の札から漏れ出る鬼気を注視していた。

 その気配は外へ広がるのではなく、対象の奥深くへ潜り込もうとしている。

 歩美の札とは、根本的に流れる方向が逆だった。

 角羅は歩美の声に気づき、嬉しそうに振り返った。

 戦場で同じ仕事をする仲間を見つけたかのように。

「あ、黄色い看護師さんだ。あなたもお札で治すの?」

 歩美は答えられなかった。

 数分前まで、自分の札で七人を苦しめていた。

「治す」と、単純に言い切ることができなかった。

 角羅は歩美の沈黙を、拒絶とは受け取らなかった。

 にっこりと笑い、明るく続ける。

「じゃあ由加里(ゆかり)と同じだね。治す人が二人。今日は病院ごっこだ」

 その言葉に、悪意は一切なかった。

 しかし背後では、恨卑の一匹が負傷した生徒のほうへ近づこうとし、伊織が矢を向けて牽制している。

 無邪気な笑顔と、その背後で蠢く殺意。

 同じ画面に置かれたそれらが、歩美の背筋を冷やした。

 歩美は、角羅が自分を敵ではなく、同じ役割を持つ者として見ていることに、言葉を返せなかった。

 喉の奥で、行き場を失った言葉が渦を巻いている。

 同時に思い出す。

 自分もつい数分前まで、「敵を治しているのか、倒しているのか」分からないまま、震える手で札を貼り続けていたことを。

 ◇

 角羅は冥顎の左脛に貼られている、歩美の黄色い札を観察した。

 札から放たれる光が、装甲鱗の内側へ細い根のように食い込んでいる。

 人間だった頃の生命力を、無理やり引き上げようとしていた。

 冥顎の黒い鬼気がそれを押し返し、体内で衝突している。

 角羅は歩美の札を直接剥がそうとはしなかった。

 代わりに、その上から自分の黒とピンクの札を重ねる。

 二枚の札が触れた瞬間、乾いた破裂音が響いた。

 紙が燃える音ではない。

 張り詰めた空気そのものが、割れたような音だった。

 黄色い光と、黒い鬼気を帯びたピンク色の光が、渦を巻きながらぶつかり合う。

 二つの力は混ざらなかった。

 互いを異常と判断し、相手を排除しようとしている。

 冥顎の体内では、一度浮かびかけていた人間としての輪郭が、黒い鬼気に押し戻されていく。

 皮膚の下に一瞬見えていた人間の脚が、装甲鱗の奥へ沈んでいく。

 歩美は、その光景を目の当たりにして息を呑んだ。

 自分の札が冥顎を「人間へ戻そうとしていた」ことを、初めて視覚的に理解する。

 二枚の札は同時に燃え上がった。

 黄色い炎と黒い炎が互いを食い合い、灰すら残さず消滅する。

 歩美は、自分の札が完全に無効化された瞬間を、初めて目にした。

 角羅は、札が消えた場所へ、新しい反転回復札を貼りつける。

 ピンク色の鬼気が冥顎の身体へ流れ込む。

 焼け焦げていた装甲鱗が、内側から押し上げられ、硬い音を立ててつながっていく。

 左脛の傷が塞がる。

 乱れていた鬼気の流れが整い、人間性が押し戻され、鬼としての状態が「正常」として再固定されていく。

 冥顎は荒い息をつきながら、片膝を立てた。

「治った……?」

 歩美は、呆然と呟いた。

 角羅は得意げに胸を張り、明るく宣言する。

「はい、元気になりました。次の患者さん、どうぞー」

 ◇

 角羅は、邪顎、鱗華、麗刃、悪路漢、咬覇、牛竜の順に治療を続けていった。

 その一人ひとりを、角羅は人数ではなく、まるで舞台の幕のように数えていく。

 邪顎は、自力で歩美の札を剥がそうとしていた。

 指先まで黄色い光に焼かれ、槍を握る力を失っている。

 角羅はその手を軽く叩いた。

「触っちゃ駄目。黄色いお札は、鬼さんには熱すぎるからね」

 子どもを注意するような口調だった。

 歩美の札を自分の札で相殺し、邪顎の胸へ反転回復札を貼る。

 身体から漏れていた黒い霊気が、逆流するように戻っていく。

 槍を握れなかった右手へ、力が戻る。

 邪顎は礼を言わず、歯を食いしばって立ち上がった。

 続いて角羅は、鱗華のもとへ進む。

「第三幕、嫉妬のお姫様」

 鱗華は弱っていても、その呼び方に鋭く反応した。

 一瞬だけ、人間だった頃の鎌谷菜摘(かまだになつみ)の顔がよぎる。

 祝われる智徳たちを睨んでいた、あの孤独と嫉妬。

 反転回復札が貼られると、人間の輪郭が再び装甲の奥へ沈んでいった。

 焼けた鬼気が回復し、刀を握る手に力が戻る。

 麗刃には、角羅はさらに軽い調子で呼びかけた。

「第四幕、逃げ足の速いお姉さん」

「褒めてないでしょ、それ」

 麗刃は不満そうに返しながらも、傷が塞がっていく感覚に身を任せた。

 肩と脚の傷が消え、刀身へ再び鬼気が宿る。

 治療が終わるとすぐ、麗刃は戦うよりも先に撤退経路を確かめるように視線を巡らせていた。

 悪路漢の番になると、角羅は少し楽しげに告げた。

「第五幕、赤い顔の筆頭さん」

 悪路漢の身体には、歩美の札によって呼び起こされた、人間としての姿が一瞬だけ浮かんでいた。

 轟木栄一(とどろきえいいち)

 その名を持つ男の輪郭が、確かにそこにあった。

 角羅は道化師の笑みを止め、不思議そうに首を傾げる。

「中に、人がいる?」

 その台詞には、悪意も哀れみもなかった。

 ただ純粋な疑問。

 角羅自身が、鬼の内側に人間が残っているという事実を、まだ十分に理解していない証拠だった。

 悪路漢は掠れた声を張り上げた。

「見るな! さっさと治せ!」

 歯を食いしばる音が、まだ声に混じっていた。

 角羅は驚いたように肩をすくめる。

 すぐに笑顔へ戻り、明るく言った。

「はいはい。怒る患者さんには、笑顔のお薬です」

 札を相殺し、胸元へ反転回復札を貼る。

 赤い装甲鱗が再生し、悪路漢の手が再び松影(まつかげ)を握った。

 悪路漢は、自分が救われたことよりも、人間の姿を見られたことのほうを、許せずにいた。

 咬覇の番になると、角羅は言った。

「第六幕、大きな口の怖い人」

 咬覇は、角羅の札を警戒していた。

 しかし自力では立ち上がれず、治療そのものを拒む余力はない。

 札が貼られると、歩美の札によって呼び戻されていた人間としての生命力が押し込められ、鬼気が全身を満たしていく。

 咬覇は立ち上がりながら、歩美と角羅を鋭い目で見比べた。

 観察力に優れた男は、瞬時に二つの札の性質を看破する。

「同じ回復札じゃねえ。完全に逆だ」

 低く、確信のこもった声だった。

 続けて、周囲の全員へ聞かせるように言い放つ。

「黄色い方は鬼を剥がす。黒とピンクの方は、鬼を塗り直してやがる」

 その一言で、能力の本質が誰の目にも明らかになった。

 翼は、咬覇の表現は乱暴だが本質を突いていると認めざるを得なかった。

 歩美の札は鬼化を異常と判断し、角羅の札は人間性を異常と判断している。

 そうだとすれば、この二つの力は、最初から相容れないものだった。

 最後に角羅は、牛竜のもとへ向かう。

 牛竜は札の苦痛に耐えながら、視線を校舎ではなく、母校のグラウンドへ向けたままだった。

 鬼として倒されてもなお、その視線は動かない。

 角羅は牛竜の額を軽く叩いた。

「最終幕、一番打者くん。まだ試合は終わってませんよー」

 牛竜の胸へ反転回復札を貼る。

 乱れていた鬼気が安定し、折れかけた角と傷ついた脚が回復していく。

 牛竜は再び立ち上がり、拳を握った。

 しかし回復しても、母校を破壊することへの迷いだけは、完全には消えていなかった。

 七人が一人ずつ立ち上がるたび、友紀たちの優位が確実に失われていく。

 七人目が立った瞬間、数分前まで確かにあった勝利が、跡形もなく消え去った。

 歩美は震える声で呟いた。

「私の札は……鬼の傷を治せなかったんじゃない。人間だった状態へ、戻そうとしていたんだ」

 翼が続けて分析する。

「角羅の札は、鬼の状態を正常と判断して、鬼気を回復させている」

 蓮がさらに付け加えた。

「傷を塞ぐだけじゃない。歩美の札で表に出た人間性を、もう一度押し込めてる」

 角羅は治療を終え、満足そうに両手を叩いた。

「全員、元気になりました。由加里、ちゃんと役に立ったよね?」

 その問いは、目の前の誰にも向けられていなかった。

 この場にいない、金津美里(かなづみり)へ。

 認めてもらおうとする言葉だった。

 ◇

 回復した七人を見て、生徒たちから悲鳴が上がった。

 校舎の入口には、避難しきれなかった生徒たちが身を寄せ合っている。

 その中から、一人の男性教師が前へ出た。

 左腕から血が流れている。

 脚は震えている。

 呼吸も乱れている。

 それでも彼は、拾った金属製のモップを両手で構え、生徒たちの前に立った。

 刀にも、鬼の装甲にも通用しないことは、本人が一番よく分かっていた。

 握る手が震える。

 それでも小声で、背後の生徒たちへ指示を出し続けている。

「下がれ。走れる者から行け」

 戦おうとしているのではない。

 数十秒でも、避難の時間を稼ごうとしていた。

 教師は震える声を、精一杯低く保って言った。

「ここは学校だ」

 そして続ける。

「生徒を傷つけるなら、まず私を倒してからにしろ」

 声は完全には安定していなかった。

 勇敢だから恐怖がないのではない。

 怖くても、退かない。

 それだけだった。

 角羅は目を丸くした。

 自分に話しかけてきた男を、舞台へ飛び入り参加した役者のように受け取る。

「先生役の人?」

 教師には、目の前の少女の事情など知る由もなかった。

 知的障害を理由に傷つけられ、美里に利用された十五歳の少女だとは、想像もできない。

 彼に見えているのは、生徒を襲う鬼、それだけだった。

 角羅は教師の背後で震える生徒たちを見た。

 人間だった頃の記憶が、断片的に浮かぶ。

 訴えを最後まで聞いてくれなかった教師。

「気にしすぎだ」と言った大人。

 一方で、庇おうとしてくれた誰かの顔も、確かにあった。

 けれど記憶は整理されず、すべてが混ざり合ったまま流れていく。

 角羅は、澄んだ声で尋ねた。

「先生は、ちゃんと話を聞く人?」

 教師には、その質問の意味が分からなかった。

 返答に迷う。

「今は話をしている場合じゃない。生徒を逃がせ」

 それは、状況に即した、当然の返答だった。

 しかし角羅には、それが自分の話を拒絶されたように聞こえた。

 一瞬だけ、道化師の笑みが消える。

 美里から受け取った言葉が、頭の奥で蘇る。

 自分を止める人間は、自分を再び笑う側の人間。

 人間を傷つけた者こそ、社会に勝った者。

 角羅は胸元へ手を置き、抑揚のない声で繰り返した。

「止める人は、悪い人」

 歩美は、角羅がこの瞬間、自分自身の判断だけで動いていないことに気づいた。

「待って。その人は、あなたを馬鹿にしていない」

 角羅は歩美を見た。

「でも、美里ちゃんが言ったの。由加里を止める人は、由加里をまた笑う人だって」

 歩美は、美里が由加里の傷を巧みに利用していることを理解した。

 しかし、今この瞬間に届く言葉を、見つけられなかった。

 教師は、生徒たちが逃げる時間を作るため、角羅へ向かって走った。

 モップを振り下ろす。

 角羅は軽く身体を回転させてかわし、鈴の音で位置感覚を狂わせながら、教師の背後へ回り込む。

 角羅細剣が、脇腹を浅く切り裂いた。

 教師は膝をついた。

 それでも、生徒の前から退かなかった。

 ◇

 角羅は、教師の傷口から流れる血を見た。

 笑みが、頼りなく揺れた。

「治せばいい。治せば――大丈夫」

 角羅にとって、それは矛盾のない行動だった。

 傷つけたあと治せば、美里の命令も、治療役としての自分の役目も、両方果たせる。

 歩美は、角羅が何をしようとしているのかを瞬時に悟った。

「貼らないで!」

 叫んだが、間に合わない。

 友紀も教師のもとへ走ろうとした。

 しかし、回復した鱗華が刀を振るい、進路を塞ぐ。

 健太と翔一も動こうとするが、咬覇と牛竜が立ちはだかった。

 伊織は角羅を狙おうとしたが、教師と角羅が近すぎて射線を確保できない。

 角羅は黒とピンクの札を取り出す。

 教師は、それを治療の道具だと思い込み、一瞬だけ抵抗を緩めた。

 角羅は、教師の胸へ反転回復札を貼る。

 最初、何も起こらないように見えた。

 黒とピンクの光が、制服越しに全身を包み込む。

 脇腹の傷は、塞がらなかった。

 代わりに、傷口から黒い鬼気が逆流するように、体内へ入り込んでいく。

 教師は胸を押さえ、地面へ倒れた。

「な……なんだ、これは……」

 声を絞り出す。

 体温が急激に上昇し、噴き出した汗が、すぐに乾いていく。

 皮膚の下へ、黒い筋が血管のように広がっていった。

 指先が硬直する。

 呼吸が浅く、速くなる。

 肺へ空気を取り込もうとしても、喉から掠れた音しか出てこない。

 教師は胸の札を剥がそうとした。

 しかし札は、制服を通り越して皮膚へ根を張ったように離れない。

 爪で端を掻いても、黒い光が指先へ入り込んでくる。

 歩美は教師へ駆け寄ろうとした。

 疾牙の群れが進路を塞ぐ。

 伊織が矢を放って牽制する。

 南海は、角羅の背後にいる鬼の群れが生徒へ向かわないよう、負傷者をさらに後方へ誘導していた。

 角羅は苦しむ教師の前で、最初はまだ笑顔を保っていた。

「大丈夫。すぐ元気になるから」

 励ますように言う。

 教師の背中が大きく反った。

 喉が裂けるような絶叫が上がる。

 その声で、角羅の笑顔が僅かに引きつった。

 教師の肩、首、頬に、黒い装甲鱗が形成されかける。

 しかし人間の肉体は、鬼気へ適応できなかった。

 鱗は完全に固まる前にひび割れ、粉となって崩れていく。

 崩れた場所から、また新たな黒い筋が伸びる。

 鬼へ変わることも、人間へ戻ることもできない。

 肉体だけが、二つの状態の間で引き裂かれていく。

 歩美は喉から絞り出すように叫んだ。

「治ってない! その人は死にかけてる!」

 角羅は理解できない顔をした。

「でも、これは回復のお札だよ」

 歩美は必死に告げる。

「鬼を治す札なの! 人間に使ったら、命を奪う!」

 角羅は教師を見た。

 教師の瞳は、焦点を失い始めている。

 それでも彼は、最後の力で首を動かし、背後を見た。

 逃げていく生徒たち。

 泣きながら振り返る少女。

 別の教師に腕を引かれ、校舎の奥へ入っていく少年。

 彼らが、角羅たちから離れたことを確認する。

 強張っていた眉間から、僅かに力が抜けた。

 口の端が、痛みとは別の理由で緩む。

 その直後、伸ばしていた手が、力なく地面へ落ちる。

 胸の札が黒い炎を上げ、灰となって消えた。

 教師の身体から、力が抜けていく。

 二度と、動かなかった。

 校庭の音が消えたような静寂が、一瞬だけ落ちる。

 実際には、遠くの火災報知器の音、呻き声、離れた場所の悲鳴が残っていた。

 しかし歩美と友紀の耳には、教師の名を呼ぶ生徒たちの泣き声だけが、はっきりと聞こえていた。

 ◇

 角羅は、倒れた教師を見下ろしたまま動かなかった。

 角羅細剣を握る手から、力が抜けている。

 剣先が地面に触れ、小さな金属音を立てた。

「元気に……ならない?」

 呟き、しゃがみ込んで教師の肩へ触れる。

 反応がない。

 軽く肩を揺する。

「起きて。ねえ、起きてよ」

 返事はなかった。

 角羅は笑ってみせようとした。

 しかし口元が震え、いつもの笑顔を作れない。

「寝ちゃったの?」

 反応のなさを、一つずつ確認するように。

 歩美は、その様子を見て、角羅が本当に死を理解できていないことに気づいた。

 鬼化によって、言葉遣いも戦闘能力も高度に研ぎ澄まされている。

 けれど死が取り返せないこと、自分の行為で誰かの人生が永久に断たれることを、この少女はまだ理解できていない。

 角羅は、仮面の左側――泣き顔が刻まれた部分へ、そっと指先を這わせる。

 教師を殺したことで、その泣き顔の表情が、心なしか以前よりも深く沈んで見えた。

 角羅は、独り言のように呟いた。

「美里ちゃんは、勝ったって褒めてくれる?」

 その言葉が、友紀の理性を焼き切った。

「ふざけるな!」

 友紀は鱗華の刀を朱迅剣で強引に弾き、赤い霊気を爆発させながら角羅へ向かう。

 怒声に、角羅が肩を震わせた。

 友紀は教師の遺体と、泣き崩れる生徒たちを指し示す。

「あの人は、あんたに何もしてない! 生徒を守ろうとしただけなのに、あんたが殺した!」

 角羅は後ずさった。

「殺した……?」

「そうよ。もう二度と、家族にも生徒にも会えない!」

 角羅は、その言葉の意味を追おうとする。

 しかし理解が追いつかない。

「でも、美里ちゃんは、悪い人を眠らせる札だって……」

 友紀は、容赦なく現実を突きつけた。

「眠ってるんじゃない。死んだの!」

 その一言が、校庭に強く響いた。

 角羅の仮面の中で、笑顔と泣顔が同時に歪んで見えた。

 人間だった頃の記憶が、断片的に蘇る。

 泥水へ投げ込まれたフェレットのぬいぐるみ。

 周囲の笑い声。

 言葉を最後まで聞いてくれなかった大人。

 自分を初めて肯定してくれた美里の声。

「由加里は悪くない」と、何度も自分へ言い聞かせた過去。

 角羅は両耳を塞いだ。

 鬼となってからの芝居がかった口調が崩れ、人間時代の由加里の口調で漏れる。

「由加里は悪くない。美里ちゃんが、やっていいって言った」

 友紀は声を張り上げ、まっすぐに返した。

「命令されたら、人を殺していいわけじゃない!」

 握りしめた拳が、白くなっていた。

 その叫びは、間違っていなかった。

 同時に、角羅が美里に判断を委ねるよう仕向けられた被害者であるという構造も、その場にいた誰の目にも明らかだった。

 けれど角羅自身は、まだ、教師を殺した罪と、自分が美里に利用された可能性とを、一つにつなげられずにいた。

 ◇

 歩美は、教師のもとへ駆け寄った。

 首筋へ指を当てる。

 脈はない。

 口元へ耳を近づけても、呼吸はない。

 歩美は、震える手で黄色い回復札を取り出した。

 しかし貼る直前で、指が止まる。

 角羅の札が教師を殺した光景と、以前、自分の札で恨卑が灰になった光景が重なる。

「治す札」という言葉が、もう自分の中で信じられなくなっていた。

 それでも、何もしないことに耐えられなかった。

 歩美は、教師の胸元へ札を貼った。

 黄色い光が遺体を包む。

 脇腹の傷だけが、僅かに塞がる。

 黒い筋も薄れていく。

 しかし心臓は動かない。

 失われた命は、戻らなかった。

 歩美は札を握りしめ、唇を噛んだ。

「同じだ……」

 南海が肩へそっと手を置く。

 歩美は震えながら、絞り出すように言った。

「角羅の札は、人間を鬼へ近づけて殺した。私の札は、鬼を人間へ戻そうとして殺すかもしれない。救う相手が違うだけで、やっていることは同じなのかもしれない」

 翼が、すぐに否定しようとした。

 歩美に殺意がなかったこと、角羅とは目的がまったく違うことを言おうとする。

 しかし歩美は首を振った。

「私は助けたいと思って使った。でも、助けたいと思えば、何をしてもいいわけじゃない」

 教師の遺体を見つめる。

「角羅が分かっていなかったからって、この人が生き返るわけじゃない」

 その言葉は、角羅だけでなく、歩美自身にも向けられていた。

 歩美は自分の優しさを否定しているのではない。

 優しさだけでは、力の結果を正しくできないということを、初めて理解し始めていた。

 翼は、歩美と角羅は同じではないと考えながらも、相手の意思を無視して状態を変えようとするという構造上の共通点を、否定できなかった。

 蓮は、二つの札が「何を正常と判断するか」によって、救う命を選別していると、静かに整理する。

 その問いに、完全な答えはまだ、誰の中にもなかった。

 ◇

 教師の死による静寂を破り、校舎の屋上へ黒い影が降り立った。

 重い着地音。

 屋上の床に、亀裂が走る。

 黒と深緑の装甲をまとった烈王(れつおう)が、烈王丸(れつおうまる)を片手に立っていた。

 同時に、校庭の反対側へ紫色の霧が広がっていく。

 毒霧の中から、二対の鉄扇を持つ霧香(むこう)が現れる。

 さらに校門の前へ、黒と黄色の重装騎士――魔盾牙(まじゅんが)が歩み出た。

 巨大な盾「金剛魔盾(こんごうまじゅん)」を地面へ突き立てる。

 配置は三方向。

 屋上から見下ろす烈王。

 校庭の側面を覆う霧香。

 撤退経路と正面を塞ぐ魔盾牙。

 十彩獣団が、完全に包囲されていた。

 慎悟不在の九人は、七人との戦闘ですでに消耗しきっている。

 歩美も、七枚の札を連続で使い、呼吸が乱れていた。

 敵側は七人が完全回復し、さらに覇竜十傑の中核が三人加わった。

 烈王は感情の薄い声で告げる。

「戦闘継続は可能だ」

 烈王丸を抜く。

 友紀は拳を握り締め、角羅へ向かおうとした。

 綾実が紫舞盾を差し込み、それを止める。

「今突っ込めば、全員が囲まれる」

 霧香は教師の遺体と角羅を見比べ、タロットを読むように呟いた。

「死神の札。正位置では治療、逆位置では死」

 角羅は教師のそばから動けずにいた。

 烈王が角羅へ、短く命じる。

「角羅。任務を遂行しろ」

 角羅は烈王の声を聞いて、僅かに安心したような表情を見せる。

「れっちゃん」と呼びかけようとして、教師の遺体を見て、言葉を飲み込んだ。

 新たな本格戦闘は、始まらなかった。

 増援の目的は、絶望的な戦力差を示すことと、撤退を成立させることだった。

 ◇

 魔盾牙が巨大盾を構え、角羅と回復した七人を守る位置へ入る。

 霧香が毒霧を広げていく。

 烈王が戦闘開始を命じようとした、その瞬間。

 角羅が慌てて手を上げた。

「待って、待って。美里ちゃんから、もう帰っていいって言われてる」

 烈王は刀を止める。

「退却命令か」

 角羅は腰の札入れから、ダークレッドの印が刻まれた命令札を取り出す。

 美里の鬼気が確かに込められた、本物の命令だった。

 角羅は、指を折りながら思い出すように説明する。

「倒れた人を治す。黄色いお札が鬼さんに何をするか見る。みんながどれくらい戦えるか確かめる。終わったら帰る」

 その言葉によって、今回の襲撃が学校の制圧を目的としていたのではないことが、明らかになった。

 咬覇は低く舌打ちする。

 彼は最初から、自分たちが試される側だと察していた。

 牛竜は、自分たちが母校を壊す主力ですらなく、性能を測る試験台として送られたことを悟った。

 グラウンドを睨みつけたまま、拳を握りしめる。爪が、掌に食い込んでいた。

 悪路漢もまた、自分が五天王筆頭として指揮を任されたのではなく、美里に観察されていただけだったことを知った。

 表情を歪めるが、命令に反抗することはできなかった。

 烈王は感情を交えず、命令札を確認する。

 烈王丸を鞘へ戻し、告げた。

「目的は達成された。撤退する」

 角羅は、教師の遺体から意識を離せずにいた。

 選ばれなかった者が、選ぶ側になるはずだった。

 しかし実際には、美里が七人を選別し、能力を測り、試験台として扱っただけだった。

 自由ではなく、別の支配へ移されただけ。

 その事実は、拳を握る牛竜、表情を歪める悪路漢、舌打ちする咬覇、教師のそばを離れられずにいる角羅、そして淡々と刀を鞘へ収めた烈王の姿によって、静かに、しかし確かに示されていた。

 ◇

 友紀は、教師を殺した角羅を逃がすまいと、朱迅剣を構え直した。

「逃がすと思う?」

 烈王は屋上から友紀を見下ろす。

「追うなら止めない」

 挑発ではなかった。

 追えば何が起こるかを、正確に理解している者の言葉だった。

 霧香が毒霧を濃くする。

 魔盾牙が金剛魔盾を広げ、角羅と七人を覆う。

 同時に恨卑、疾牙、怒突の群れが、十彩獣団と避難中の生徒の間へ散っていった。

 翼は、追撃すれば鬼の群れが生徒へ向かう可能性を、瞬時に見抜いた。

 蓮が短く告げる。

「敵の狙いは、俺たちを追わせて避難区域を空けることかもしれない」

 綾実は、感情を交えず現実を示した。

「角羅を追うか、生徒を守るか。今は両方できない」

 友紀は歯を食いしばった。

 教師の遺体。

 泣き崩れる生徒たち。

 校舎に残る負傷者。

 逃げていく角羅。

 すべてを一度に見比べる。

 このまま角羅を追えば、今ここで助けられる命を、見捨てることになる。

 友紀は、朱迅剣をゆっくりと下ろした。

「全員、追撃しない! 負傷者と生徒の救助を優先する!」

 声は、まだ小さく震えていた。

 それでも、これは敗北でも、諦めでもなかった。

 慎悟不在の戦場で、友紀が感情より責任を選んだ、初めての瞬間だった。

 ◇

 角羅は魔盾牙の盾の陰へ移動しながらも、教師の遺体から目を離せずにいた。

 烈王が角羅の肩へ手を置く。

「行くぞ」

 角羅は小さく頷いた。

「れっちゃん。あの人、起きないの?」

 烈王は答えなかった。

 答えられないのではない。

 今ここで真実を突きつければ、角羅の精神が崩れ、撤退行動そのものが取れなくなると判断していた。

 霧香の毒霧が校庭を覆っていく。

 伊織が霧の中へ矢を放つが、金剛魔盾に弾かれる。

 烈王、霧香、魔盾牙は、回復した七人を誘導しながら校門へ退いていく。

 角羅は指を鳴らし、恨卑、疾牙、怒突へ撤退を命じた。

 鬼の群れが、一斉に走り去っていく。

 最後尾を進む角羅の鈴の音が、次第に遠ざかっていった。

 霧が晴れた時、鬼たちの姿はどこにもなかった。

 友紀はすぐに教師のもとへ駆け寄った。

 歩美は、首を横へ振ることしかできなかった。

 教師が守った生徒たちが集まり、何度も名前を呼んでいる。

 南海は生徒たちを抱き寄せ、遺体から少し離れた場所へ誘導していく。

 綾実と伊織は、校内に残る負傷者を探しに走った。

 健太と翔一は、倒壊しかけた廊下へ向かい、瓦礫を除去し始める。

 翼と蓮は、敵が残した罠や鬼気を警戒しながら、避難経路を再確認していた。

 友紀は教師の遺体の前へ膝をつき、拳を地面へ押しつけた。

「絶対に許さない」

 その怒りは、角羅だけへ向けられたものではなかった。

 角羅へ人を殺す力を与え、それを正しいと教え込んだ、金津美里へも向けられていた。

 歩美は、教師の胸元に残った、黒とピンクの札の灰を拾い上げた。

 自分の黄色い札とは、見た目も性質もまったく異なる。

 けれど、対象の意思とは無関係に、別の状態へ戻そうとするという点では、確かに似ていた。

 歩美は札入れを強く握りしめた。

「私の力も、使い方を間違えたら同じになる」

 友紀は、歩美は角羅と同じではないと言おうとした。

 しかし歩美は、慰めを拒むように首を振る。

「同じじゃないって言い切るために、知らなきゃいけない。この札が何を治して、何を壊しているのか」

 歩美は、教師の遺体へ静かに頭を下げた。

 遠くから、救急車と消防車のサイレンが近づいてくる。

 戦闘そのものでは、友紀たちは七人の鬼を退けた。

 増援にも戦闘継続を許さず、生徒の大半を守り抜いた。

 それでも、一つの命を救うことはできなかった。

 単純な勝利として、この日を終えることはできなかった。

 ◇

 校門の外を、角羅が撤退していく。

 何度も、後ろを振り返りながら。

 教師を呼ぶ生徒たちの泣き声が、耳の奥にこびりついて離れない。

 いつものように、角羅は自分へ言い聞かせようとした。

「由加里は悪くない」

 しかし、その言葉は、以前のように安心を与えてくれなかった。

 鈴の音が、僅かに乱れる。

 笑顔の仮面の下で、初めて、消えない罪悪感の芽が生まれていた。

 人間を救い、鬼を人間へ戻そうとする歩美。

 鬼を救い、人間を鬼へ近づける角羅。

 正反対の癒やしを持つ二人。

 けれど二人とも、この日、自分の善意や信じてきた言葉だけでは、命を守れないということを、初めて知った。

 歩美と角羅の因縁は、憎しみだけでは語りきれない。

 それは、「癒やしとは何か」という、答えのない問いによって、静かに始まろうとしていた。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。


今回は、歩美の回復札と対になる存在として、角羅の反転回復札を描きました。


同じ「治す」という行為でありながら、歩美の力は鬼を人間へ戻そうとし、角羅の力は人間を鬼へ近づけてしまう。


この対称性は、第五章の核である「癒やすことと、救うことは同じなのか」という問いを、最も直接的な形で突きつける場面になったと思います。


角羅というキャラクターは、書いていて非常に難しい存在でした。


由加里自身に悪意はありません。


けれど、悪意のなさが、そのまま結果の軽さを意味するわけではない。


そのことを、教師という一人の大人の行動を通して描きたいと考えました。


彼は特別な力を持たない、ただの人間です。


それでも、震える手でモップを構え、生徒たちの前に立った。


守るという行為に、必ずしも強さや資格は必要ないのだと、少しでも伝わっていれば幸いです。


そして歩美にとって、この一話は大きな転機になりました。


「自分の力も、使い方を間違えたら同じになる」


この気づきは、次話「癒やしとは何か」へ直接つながっていきます。


回復札とは何なのか。


人間へ戻すことは、本当に救いなのか。


寿蒙が語る過去、そして寿満寺合宿の決定へ向けて、第五章はいよいよ終盤に入ります。


次話「癒やしとは何か」もあわせてお楽しみいただければ嬉しいです。


※本作の執筆・推敲にはAIを一部活用しています。

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