指導1
翌朝、アレス一行は宿屋で朝食をとった後、イーストシティを抜け出し、近くの草原へと繰り出した。
そこで、基礎的な戦闘についてや、ギルドとしての戦い方について指導していくためだ。
「ということで、これからこの【ライオン】での今後の方針を決めていくぞ。まず、ギルドとして今後何を理想としていくかを伝える。まず、前衛は当然レイン。体を張って、敵の動きを止め、攻撃しろ。真ん中は俺。状況に応じて、近接戦闘も魔法も全て行う。そして後衛はユフィとソフィだ。魔法を使った攻撃で敵をやっつけろ。」
「了解ッス!」
「分かったわ。」
「了解です。」
レイン、ユフィ、ソフィはそれぞれ返事する。
「ところで、私たち魔法の使い方とか全然分からないんだけど教えてくれるのよね?」
「勿論だ。そもそも魔法ってどうやって発動するかだ。この世界には精霊で満ちあふれている。魔法はその精霊の力を借りて発動するんだ。精霊は、【火】・【水】・【土】・【風】・【空】の種類がいる。例えば、火だったら、火の精霊に祈りを捧げろ。そして、イメージしろ。」
「・・・言葉だけじゃよく分からないわ。」
「今から簡単な魔法を発動するから、見ていろ。精霊のイヤリングをつけていれば、精霊達がよく見えるだろ?そいつらの動きをよく見ておけ。」
「この・・精霊のイヤリング?って1個しかないの?今はソフィがつけているから、私のも欲しいんだけど。」
「精霊のイヤリングってのは世界に数個しかないんだ。っていうか俺の弟が作ったんだけどな。だから順番につけるなりで、我慢してくれ。今後弟に会ったら、一個作ってもらうから。」
「アンタの弟も化け物なのね・・。」
「さすがキングッス・・・!」
「まずはソフィ。今から火の魔法をゆっくり発動するから、よく見ておけ。」
「は、はい。分かりました。」
「まずは精霊に祈りを捧げる。どうだ?見えるか?」
「はい・・。周りにいた火の精霊さん達がアレスさんに集まってきています。」
「そうだ。そして今からあの岩に向かって火の魔法・・・レベル3程度の威力のやつを発動するぞ。」
そうアレスは言って、手のひらを目の前にかざす。
その手のひらの先には1mくらいの岩があった。
「アレスさんの周りにいた精霊さん達が手の辺りに集まってきています。そして・・・どことなく、やってやるか!っていう雰囲気が精霊さんから漂っています。」
「そうだ。んじゃ発動するぞ?」
そう言い終わった直後、アレスの手のひらから小さな炎ー直径20cmくらいの火の固まりが飛びたし、岩に直撃する。岩に少し焦げ目がついた程度の威力だ。
「今のがレベル3程度だ。レベル3以下だとろくに戦闘に使えない。あくまで日常の生活がちょっと便利になるくらいだ。レベル4〜5が戦闘に使えるクラス。レベル6〜7だと冒険者の中で上級者。レベル8〜9は超一流と言われるレベルだ。最終的にはユフィもソフィもこのレベル8〜9を目指してもらう。」
「ちなみに・・キングはどれぐらいのレベルなんですか?」
「俺か?俺は火が8、水が7、土が7、風が7、空が6だ。」
「や、やっぱりスゴイッス!!!」
「俺より弟の方がすごいぞ?あいつは全部レベル9だからな。」
「・・・。」
ユフィ、ソフィ、レインは呆然とする。
「あいつは、特別だ。気にするな。ほれ、次はユフィは精霊のイヤリングをつけて俺の魔法を見てみろ。次は水の魔法・土の魔法・風の魔法それぞれでやってやっから。その次はレインな。」
そういって、ユフィとレインにも精霊のイヤリングをつけて、同様に魔法を披露した。
「んじゃ、ユフィとソフィは今から魔法の特訓だ。祈りを捧げて魔法の最終形をイメージして発動するんだ。魔法の属性は気に入った奴でいいぞ。」
「・・って、俺はどーしたらいいんスか!??」
仲間外れにされかけたレインはうろたえた。
「お前は魔法の才能がないからな。この剣で素振りでもしとけ。とりあえず千本。少しは剣の心得があるんだろ?好きに振ってくれていいから。」
(本当は、魔法がないなんてことはないけどな。面倒だし、魔法の才能がないって言われた方が前衛に特化してくれるだろう。)
「扱いがひ、ひどいッス・・・。でもやるッス!」
そう言ってレインは素振りをし始めた。
「さぁユフィ、ソフィやるぞ。」
「分かったわ。アンタの見てたらできる気がしてきたわ。」
「そうですね・・・。私も出来る気がしてきました。」
そういって二人は両手を前に突き出し、魔法を発動させた。
ユフィは手からは直径2mくらいの大きさの炎が勢い良く飛び出し、岩に直撃した。その岩は炎の威力によって、表面が溶け出していた。
ソフィの手からは地上から10m以上の大きさの竜巻が発生し、周りの草を切り裂きながら、岩に直撃した。その岩は竜巻によって、表面が切り刻まれていた。
そして同時に二人は気絶した。
その10分後。
「・・・ぅん。」
「目覚めたか・・・?」
ユフィとソフィは目を覚ました。
「えっと・・。私たち・・?」
周りを見渡しキョロキョロするユフィとソフィ。
「悪かったな。まだ説明していなかったんだが・・魔法を発動するときに、精霊の力を借りる代わりに、自分の持っている魔力を精霊に差し出すんだ。いきなりそんな魔法を発動したから体が驚いて強制的に意識を飛ばしたんだろう。」
「そんな重要なこと、最初に言っといてよ!!」
「だから悪かったって。いきなりレベル6クラスの魔法を使うと思っていなかったからさ。初めての魔法ってことで、精霊達も張り切ったんだろう。」
「レベル6・・!?案外魔法ってチョロイのね。」
「言っておくが、お前達は特別だからな?レベル6ってのは限られた冒険者しか使えないんだぞ?」
「特別・・なのね?」
・・ブン!・・ブン!
「あぁ。今はまだ魔力を精霊に提供することに慣れていないが、魔法を使っていくうちに、慣れるようになるさ。」
「分かったわ、とことん極めてやろうじゃないの!ソフィもいいわね?!一緒に魔法を極めるわよ!?」
・・ブン!・・ブン!
(ユフィは負けん気が強い子だな。扱いやすい。)
「うん!わ、わたしもがんばります!」
・・ブン!・・ブン!・・ブン!
(お姉ちゃんが頑張るなら私も頑張る、か。なかなかいいコンビになるんじゃないか?)
・・ブン!・・ブン!・・ブン!・・ブン!
「あー!ブンブンうるさい!」
「キング・・・俺も構って下さい・・・。」
そう言って俺にすがるような目で俺を見つめるレイン。
身長180cm以上もあるマッチョから円らな瞳で見つめられるのは・・ちょっと怖い。
(レインは寂しがり屋か。忠誠心があって将来いい戦士になると思うんだけど。)
「ちゃんと見てるって!お前もいい線いってるぜ?そんじょそこらの冒険者と戦っても負けないだろ?どこで剣術を習ったんだ?」
アレスはユフィとソフィの介抱をしているときに、こっそり視界の隅にレインの姿を捉えていたのだ。
はっきり言ってレインの剣術は凄腕と言っても過言ではないレベルに達していた。
「実家が剣術を教えていて、俺も幼い頃からそこで鍛えられてきたんで・・一応師範代の肩書きも持っているんスよ!」
「その腕前があれば、自分でギルドを組めば良かったんじゃないか?」
「自分の器は分かっているッス。俺は考えることも苦手だし、リーダーシップもないんで・・・。それだったら、自分がずっと仕えることができるリーダーを探して、そこで自分の力を発揮したいと思っているんス!」
(こいつ・・。意外と自分のことをしっかり把握しているじゃないか。)
「分かったよ。お前の力を十分に発揮できる場所を提供してやるよ。世界にお前の名前を轟かしてやろう!」
「・・・ッス!!」
感動しながら素振りを再開するレイン。
「あの・・・アレスさん?」
おずおずと話しかけてくるソフィ。
「ソフィ、どうした・・?」
「空の魔法って見せてもらってないんですけど、空の魔法って・・・どんなことができるんですか?イメージできないんですけど・・・。」
「あぁ、空か。空ってのは"空間"と"時空"っていう意味があるんだ。簡単にいえば、空間を自由に移動できるし、時の流れに干渉することもできるんだ。時の流れに干渉するのにはレベル8以上いるから、現実的ではないんだがな。」
「空を飛べたり、瞬間移動したりできるんですか・・?!!」
「あぁ。ただ空の精霊ってのは気難しい奴でな。なかなか力を貸してくれないんだよ。だから一般的には空を飛べたり、瞬間移動できる奴はほぼいないだろうな。俺も昔、死ぬほど特訓したけど、レベル6までしか上げられなかったし。」
といいながら、アレスは空中にふわっと浮かびながら喋っている。
「あ、ああ・・・。すごいです!!アレスさん!!」
ソフィは目をキラキラ輝かせながらアレスを見つめている。
「お、おぅ。まぁな。」
(そんな真っすぐな目で見られるとさすがに照れるな。)
「アンタができるなら、そんなの私にだってできるわよ!!」
妹がアレスに賞賛していることに嫉妬したのだろうユフィは鼻息荒く、魔法を発動しようとする。
「お、おい・・待て!今は・・・」
・・・・・バタッ。
「お、おねぇちゃーーーん!!」
やっぱり倒れたか・・さっき倒れたばっかりだったのに・・・。
「今日はこれぐらいで切り上げるぞ。本格的な練習は明日からだ。レイン、ユフィを任せた。宿に帰るぞ。」
「了解ッス!ユフィの姉御・・・失礼します!」
そういってレインはユフィを背負い、アレス一行は宿へと向かった。。
こうして訓練の初日が終了した。




