旅立3
ユフィ、ソフィ、レインの三人は5日ほどかけて、ノースシティに到着した。
ノースシティは魔族とエデン公国との国境に位置している都市である。以前、エデン公国が魔族たちの襲撃を受けたときにも真っ先にノースシティが戦場となったことからも分かるように、ノースティは国の防衛において、最も重要な都市である。
ユフィたちはここで食料や日常品などを補充し、一泊したのち、コメイダ村へと歩みを進めた。
「ここがコメイダ村ね・・・。なーんにもない村ね」
村の入り口に到着したユフィ達は、村の様子を確認する。木で建てられた簡素な住居、畑で野良仕事をする村民、んもぉ〜と鳴き声をあげる家畜・・・。つまり、なんの変哲もない農村がそこにはあった。
「のどかでとてもいい村ですね」
ソフィはほわほわしながらその家畜が草をもっさもっさ食べる姿を愛でていた。
「それにしてものどかすぎるッス」
レインが不審に思うのも無理はない。世界には人間と不倶戴天の存在であると言われる、魔物と魔族が存在する。人間の歴史は魔族と魔物との戦いの歴史といっても過言ではない。事実レインの生まれた村においても、魔物との戦いは日常的なものとなっていた。
しかし、この村には戦いの匂いは一切しない。その原因は近くにある精霊の森の影響だと考えられた。精霊の森の不思議な影響により、近くには魔物や魔族が発生しないのだ。なぜそのような効果があるのかは解明されていないのだが。
村に入って、辺りをウロウロしていると、その姿に気づいた村民らしき人が一人近づいてきた。
「おれはこの村の長をしている者だが、この村に何か用か?見たところ、だいぶ幼く見えるハーフのお嬢さんがいるし、迷子・・・でこの村にたどり着くわけないしな。」
そう言ってきた村の長は不思議な顔をしながらレイン達に尋ねてきた。その長は見た目30代後半で、屈強な体をしており、麻で作られた民族衣装に身をつつんでいた。
「俺たちはギルドから派遣された冒険者です。精霊の森の調査の依頼を受けて、この村に来ました。」
三人の暫定リーダーであるレインが応じ、ギルドからの依頼の受領書を村長に見せた。
「ほぉ・・。あんたらが冒険者か。国のギルドが派遣したからにはある程度の実力があるとは思うが・・。今まで何組も冒険者達が依頼にやってきたが、うまくいっていないのが現実だ。死んだ冒険者がいるとは聞いていないが、大けがした奴は何人もいるからな。気をつけていってきてくれ」
「えぇ、分かっています。こう見えても、このギルド【ライオン】はイーストシティでは名が通っています。依頼の内容はある程度聞いていますが、なにか気をつけた方がいい情報とか噂みたいなものはありますか?」
「確かではないが・・・冒険者によると魔族の姿を見かけた、という輩もいたな。あわてて引き返したみたいだから、確かではないのだがな」
「ま、魔族・・・ですか。」
レインは驚愕に目を開いていた。魔族は圧倒的な力を有し、残忍の性格であると信じられている。もちろん、リリスの存在により、全ての魔族がそれに当てはまらないとしても、レインのような一般的な人間にとって、魔族はまだまだ恐怖の権化だと言える。
横を見ると、ユフィとソフィも口をポカンと開けながら、レインの方を見つめていた。
「まぁ、あくまで噂だからな。協力できることは協力するぞ」
そう言って、村長は手をヒラヒラさせながら村の奥の方へと戻っていった。
固まっていたレインがようやく硬直から解けて言葉を発しようとした時、
「あんた・・・普通にしゃべれるのね」
「えぇ、びっくりしました」
「あの語尾の〜ッス、ていうの気持ち悪かったのよね」
「その言いようは、ひどい・・ッス」
ユフィとソフィが驚いた原因はレインのそれとは別だったようだ。
「まぁ魔族なんて私とソフィにかかれば、らくしょーよ!」
「そんなに過信したら危ないよ〜?何があるか分からないんだから・・・。」
ユフィを諌めるソフィだが、ユフィが自信満々になるのにも訳がある。アレスやリリスに猛特訓を受けた二人の力は、それぞれが単独で魔族と互角に戦えるだけの魔法力を有しているのだ。それはアレスとリリスの太鼓判を押されている。以前アレスと戦ったツンツンのギルドレッドにはまだまだ及ばないが、ユフィ・ソフィの力を合わせれば、一般的な魔族には負ける道理はない。
一方、レインは公国の中で5本の指に入る程度の実力しかない。魔族と戦うには力不足の感は否めない。
とは言うものの、魔族が出てくる可能性がある以上、最低限のパーティとしての戦い方を決める必要があった。アレスに散々言われたことだ、「戦いの勝敗は、戦う前に決まる」と。
いくつかの決めごとを決めた後、三人は精霊の森へと進んだ。




