旅立2
「ふぉおおお!」
レインはいつも通りに全力で走っている。大剣を背負いながらも背筋をピンと伸ばし、交互に降る腕は空気を切り裂き、常人では考えられないような速さで荒野を駆け抜けていく。
「きゃっきゃっ」
その上空では、光り輝く金髪のユフィと艶やかな銀髪のソフィが、その髪を風にたなびかせながらスイスイと進んでいく。ガールズトークに花を咲かせながら。
普段アレス達が過ごしているイーストシティの北へ数百キロほど進んだところにノースシティがある。そしてそこから歩いて数日のところにコメイダ村がある。今回の目的地である、精霊の守りはその付近にあるということだ。
そのため、レイン達はまずノースシティを経由してコメイダ村に向かうことに決めていた。移動手段として、レインは馬車を提案したが、ユフィの「時間かかるのは嫌よ!」の一言で却下された。その結果、必然的にこの光景が生み出されることとなった。
日が出ている最中は少々の休憩を除き、走りっぱなし、日が暮れたら野営するというタフな行軍は既に3日目となっている。手頃な岩場を発見したレイン達は、そこで野営することとした。食事を終え、三人で食後のティータイムを楽しんでいるとき、ソフィはふと思い出したかのようにレインに話しかけた。
「あ、そういえば、レインさんは、どこの生まれなんですか?」
「お、俺はノースシティの近くにある小さな農村の出身ッス、なーんにもないのどかな村ッスよ!」
レインは内心、自分の生まれについて聞かれたことに戸惑いを覚えていた。アレス達のことをとても信頼されているし、ある程度の信頼は得ていると思っている。しかし、彼らは今まで、自分の過去のことを話そうとしてこなかった。
ユフィとソフィは、人間と魔族のハーフであり、奴隷となっていたという辛い過去があると聞く。アレスに今までのことを聞いても、まぁ昔のことはいいじゃないか、とはぐらかす。リリスは、基本苦手だし。
「へーそうなんですね!ご家族とは仲がいいんですか?」
「悪くはないッスよ!冒険者になって自分の力でどこまでいけるか試したい、って言っても快く送り出してくれましたし」
「へえ…いいご家族ね。私たちは、物心ついたときから、ずっと二人きりだったから、家族ってどういうものなのか、よく分からないのよね。」
「なんか、その…申し訳ないッス」
「なに謝ってんのよ!確かに親との思い出はほとんどないけど、私にはソフィがいるし」
そう言って、ユフィは右手をソフィの頭に乗せ、自らの頭をソフィの頭にコツと当てて
「こーやってアレスとリリスと…ついでにレインと自由に過ごせるのは、まぁ別に悪くはないかな」
頬を少しだけ染めながら、ユフィはどこか不機嫌そうだった。素直じゃないんだからとソフィが呟いた声はレインにもしっかりと届いていた。
「私は、とても幸せです。おねーちゃんはこうやって楽しそうにしてるし、アレスさん、リリスさん、レインさんは優しくしてくれるし。家族ってこういうものなのかな、って思います」
そこで少しだけ、深呼吸した後
「だから、レインさんのことをもっと知りたいと思いますし、私たちの…今までのことも聞いて欲しいな、と思っています」
そう言って、ソフィはまっすぐにレインの瞳を見つめる。
「もちろん、良いッスよ!波風が一切ない人生ですけどね!どこから話そうかな…まず、俺の父親と母親はお見合いで出会い…初めてのデートは…」
「そこからッ!?」
三人の泣いたり笑ったりする声は、明け方近くまで続いた。




