到着
「この世界を救いにきたんだ」
そう言った青年の目には力がこもっており、言葉には一切の澱みがなかった。
「・・・・・」
3秒ほどであろうか。兵士たちはリアクションをとることができず、誰も声を出すことはできなかった。
その沈黙をやぶったのはアレスである。
「ふふっ。冗談だよ。」
アレスはあどけなく笑った。
「お、おう。冗談か、反応しにくい冗談は勘弁してくれよ。」
冗談ということにしてくれたが、アレスの先ほどの姿を見てしまうと、とても冗談とは思えなかった。
「今回入城する目的を聞いてもいいか?」
「そうだな。観光、だな。」
「いい加減だな。まぁ今回はこちらが良いようにしてやるよ。【ミスリル】のメンバーってことだし、特に問題ないだろう。ようこそ、イーストシティへ。」
門番の兵士たちとの会話を終えると、アレスは城門を過ぎ、城下町へと入っていく。
さすがはエデン公国の首都ということで、城下町はとても賑わっており、人の往来が激しい。
右を見れば、宿屋、居酒屋、服屋、市場が所狭しと軒を連ねている。
左を見れば、多くの西欧風の民家が建てられている。
そして中央を見ると、城まで続く一本道となっている。
(まずは・・・宿を確保しておくか。)
アレスはこう呟き、宿屋のほうに歩いていく。
宿屋に入ると、若くて元気の良いおねーちゃんが迎えてくれた。
「いらっしゃい、ここは初めてかい?」
「あぁ。とりあえず3泊頼む。」
「お、まいど。1泊朝のみ食事付きで、銀貨3枚だよ。3泊で銀貨9枚だね。」
宿屋の受付と支払いを済ませると、早速宿泊する部屋に入らせてもらう。
部屋は小さな一人部屋で、ベッドがギリギリ入るくらいの部屋である。
あれはベッドに寝転がると、一息つくことにした。
(まずは新しいギルドをつくって、新しいメンバーを募集して、そいつらを強くして・・・。)
(3年、か・・・。長いようで、短いな。)
イーストシティ到着初日はアレスはそうそうに寝ることにし、翌日に備えることにした。
翌日、アレスは朝一番にギルドに向かった。
ギルドとは、冒険者達が集う店であり、冒険者たちが”ギルド”と呼ばれる
単位でチームを作り、魔物の討伐報酬を得たり、国や個人からの依頼を受けたりするところである。
ギルドに入ると、ショートカットの瞳がクリっとした、18歳くらいのギルド職員らしき少女が勢い良くこちらに走ってきた、が。
・・・・ドターーーン!!
椅子に足をぶつけた少女はアレスの目の前に華麗なヘッドスライディングを決めた。
「あたたた・・・。」
「お、おい大丈夫か??怪我はしてないか??」
そう言ってアレスはその職員を起こしてやる。
うるうるとした瞳でアレスを見つめながらその少女は身を起こす。
「あ、す、すいません!ありがとうございます!貴族様に助けてもらうなんて・・。申し訳ありません!えーと、ギルドへのご依頼は初めてですか?どのようなお困りごとですか?」
「えっと、ギルドに何かを依頼したいわけじゃないんだ。冒険者として、新しくギルドを作りたいと思って来たんだ。そして、俺は・・・貴族ではないぞ?」
「あわわ、ごめんなさい!こんな貴族様のような方が冒険者になるなんて、思わなくて。まだこのギルドで働いて日が浅くて・・・申し訳ありません!」
どうやらこの女の子はドジっ子らしい。
「気にしなくて良いよ。それより、今は他のギルドに入っているんだけど、それでも新しいギルドを作ることってできるんだっけ?」
「はい、できますよ。念のためですが、お持ちのギルドカード見せてもらえますか?」
「あぁ。ちょっと待ってくれ。」
ギルドカードとは、冒険者がギルドに入る際に作ってもらえる身分証明書のようなものである。
ギルドカードには、ギルド名・本人の名前・ギルドレベル・本人の魔法レベルが記されている。
ギルドカードを腰の革袋から取り出して、ドジっ子職員に渡す。
「ありがとうございます。ちょっと見させてもらいますね!」
アレスはドジっ子職員ギルドカードを見せる。
ギルド名【ミスリル】
名前【アレス=アレキサンダー】
ギルドレベル【8】
魔法レベル【火:8 水:7 土:7 風:7 空:6】
ドジっ子職員はおっとりしている表情だが、ギルドカードを見た途端に顔を紅潮させ始める。
おもしろい。そしてかわいい。
「え・・う、うっ、うそ、あ、あなたって、あの伝説のギルド【ミスリル】に所属していたメンバーなの!???こんな私と同じくらいの年の子がそんなわけない、わよね?」
戸惑いながらドジっ子職員はアレスに質問する。
「えーと・・一応、本物の【ミスリル】なんだけど。ほら!【ミスリル】の名前もギルドレベルも偽装できないんだよね?」
「う、うん。そうですよね。ギルドが発行しているギルドカードは偽造できないようになっているから・・。まさか、こんな若い方がメンバーだなんて思わなかったです。」
「まぁ、色んな経験してきたからね。それはともかく、ギルドの新規登録の手続きを頼むよ。」
「す、すいません、早速ギルド登録の手続きを始めますね!ですが、ギルドを登録するためにはギルドのメンバーが3人以上必要なんですけど、お揃いでしょうか??」
「え、マジで?」
「マジです。」
「・・・・・、出直してきます。」
「ま、またのお越しを!」
ドジっ子職員の哀れみを含んだ笑顔が胸を指す。
アレスは逃げるようにギルドを後にする。
(あっちではギルドを作るための条件なんてなかったのにな、畜生。
まずは、メンバーを集めろってことか。ここが一番重要だな。)
そうして、アレスは繁華街へと足を向ける。




