指導3
リリスが【ライオン】の正式なメンバーとなった後、アレス達はいつもの草原に繰り出した。
いつも通り訓練を行うためだ。
「リリスが来てくれて良かったよ。これからはユフィとソフィの魔法の鍛錬はリリスに一任する。」
「それは妾の好き勝手やって良いということじゃな?」
「あぁ、そうだ。俺は魔法の専門じゃないし、正直ユフィとソフィの素質は俺の手に余るんだ。だから、全てリリスに任せる。」
「承知した。確かに、この双子姉妹は精霊に愛されておるからのぅ。将来が楽しみじゃ!それじゃ、二人ともこっちに来るのじゃ!早速始めるぞ!」
「分かったわ!なるべく厳しく頼むわ!」
「お、お手柔らかにお願いします・・。」
そう言って、女の子?同士仲良く訓練を始めた。
ポツンと残されたアレスとレイン。
「キ、キング。ひょっとして・・・。」
「マンツーマンだ。」
ずいっとキメ顔をするアレス。
「スよね・・。」
「この【ライオン】のメンツを見てみろ?ボインのスーパー魔族、魔法の天才少女その1、魔法の天才少女その2、何でもできる俺、そして哀れな筋肉男・・・。」
「哀れってなんスか!分かってるっスよ!最近の俺の存在感の薄さハンパないってことぐらい!」
「分かってたか。とりあえず、お前は大陸一の大剣使いを目指せ。」
「た、大陸一・・?!」
「あぁ。それぐらいじゃないと、要らない子になっちゃうぞ?」
「わ、分かりましたよ!大陸一になってやるッスよ!」
「その意気だ!まずはその大剣を自分の体と同じように扱えるようにならなきゃな!ってことで素振り千本だ!」
「お、鬼ぃいいいい!」
なんだかんだ言ってアレスの言う通りに素振りを始めるレイン。どこまでもまっすぐな奴だ。
一方、その頃魔法特化組ではリリス先生の魔法講義が始まっていた。
「ユフィ、妾に魔法の原理について教えてくれるかのぅ?」
「えぇ、分かったわ!精霊に魔力を提供する代わりに、精霊の力を借りて、魔法の力を発現するのよね!」
確認するようにユフィに質問をする姿はまるで学校の先生である。
「その通りじゃ。んじゃ、ソフィ、強い魔法使いとはどういう人を言うのかのう?」
「強い魔法使い・・ですか?まずはたくさんの強力な魔法を使うことができて、魔法の扱い方が上手な人、ですかね??」
「ふむ、確かにそやつは強そうじゃのう。しかし、妾が強いと思うのはある属性をひたすら究めた者が一番強いと思うのじゃよ。だから、ユフィとソフィはこれから一つの属性を決めてそれを極めるのじゃ!」
「そうかもしれないわね!それだったら私は【火】の属性よ!相性いいみたいだからね!」
「姉さんが【火】なら、私は【水】の属性を選びますね!」
「直感的に選んだものが正しいからな、いいと思うぞ?そして、一つのコツを教えるとしよう。それはな、魔法を発現する際に最も重要なのはイメージすることだ。何を、どれぐらいの、どこに、どうやって、発現するかを頭の中で鮮明にイメージするのじゃ。」
「それぐらい分かってるって!それが難しいのよね〜。」
「そこでじゃ、二人とも何かテーマを決めるのじゃ。ギルドでの魔法の判定のときに、龍に攻撃させたように、じゃ。例えば龍でもいいし、生き物でも、建物でも、なんでもいいぞ?自分が好きでイメージしやすい【何か】に魔法で攻撃させるのじゃ。」
「私はまだ、決められないわね。ソフィは何にするか決めた?」
「いえ、まだ私も決められないですね。」
「それは今日、明日で決めなくてもいいぞ?まだまだ時間はあるからのう。では、具体的な魔法の訓練を初めていくとするか。」
こうしてユフィは【火】をソフィは【水】に特化して魔法の訓練を行うことにした。
それぞれの訓練を終えた後、夜更けにアレスとリリスは二人で酒場に来ていた。
子ども三人は宿でお留守番である。
酒場にはアレス達の他に客が3人程度いるだけで、かなり静かだ。
「リリス、あの二人の調子はどうだ?」
アレスはゆっくりお酒を味わいながらリリスに話しかける。
「将来が楽しみな二人じゃな。よくぞあそこまでの才を持つ奴を見つけたの?」
「まあな、この街中を走り回ったからな。それで、あの二人をどうやって成長させていくんだ?」
「ユフィは【火】の特化、ソフィは【水】を特化させるつもりじゃよ?」
「なるほどね。俺は一人につき、二属性特化にしようかと思ったが、そっちの方が正しいかもな。」
「総合的なバランス的を考えると、二属性特化の方が安全だとは思うが、お主が目指しているのはそんなとこではないのだろう?」
「・・・たしかにな。やっぱりリリスに相談して良かったな。それにしても二人とも可愛らしいだろう?」
「アレスがそんなロリの趣味があったとはのう。妬けるのぅ。」
「そうゆう意味じゃなくって!ってそんなことお前も分かってるだろ?」
「冗談じゃ。確かに可愛らしいのう。魔族である妾の事も慕ってくれるし、あの眼差しが眩しいくらいじゃな。」
「あぁそうだな。まっすぐ育ててやってくれよ?」
「無論じゃ。」
「ところで、リリスは人間の生活には慣れたか?」
「人間の生活は楽しいことだらけじゃな!こうやっておいしいお酒も飲めるし、おいしい食事も食べられるし、何よりも居心地がいいのぅ。」
リリスは頬を上気させながら、上機嫌な様子でお酒のグラスを傾ける。
「魔族の暮らしって、どんなんなんだ?」
「アレスも我らの国に来たことあるから分かるとは思うが、魔族はまず絶対的な人口が少ない。だから、ここまで文明が発達していないんじゃよ。そして、仲間や種族としての一体感、連帯感がほとんどないのじゃ。一応、魔族の王に忠誠を誓ってはいるが、あくまで体裁だけじゃのう。」
「なるほどな。何かきっかけがあれば、人間と魔族が手を取り合うことも可能だと思うか?」
「今までの歴史を水に流すことができれば、可能だとは思うが・・」
そう言って、遠くを見つめるリリス。リリスは人間の一生よりも遥かに長い年月を生きている。人間と魔族との様々な争いを経験してきたのだろう。
「なんとかするしかないだろ?このまま行ったら、どちらかが滅ぶまで戦わなきゃいけない。ここで、終わりにするんだ。」
クイっと杯を傾け、残ったお酒を一気に呷る。
「重大な使命、じゃな。」
テーブルに置いた空のグラスの中の氷がカランと音を立てた。
一方、宿のお留守番の三人組。
宿は二室とっており、男と女の部屋で分けて宿泊している。
このレイン、ユフィ、ソフィは女の子の部屋で、雑談をしていた。
「レインは今日何してたのよー?ちゃんと訓練してたのー?さぼってないでしょうねー?」
ユフィはゴロンと自分のベッドに寝ころりながら、レインに話しかける。
「とんでもないっスよ!アレスさんとマンツーマンでさぼれるわけじゃないッスよ!ひたすらあの大きな剣を振り回してました・・体バッキバキです・・・。二人ともどんな訓練してたっスか?」
レインはリリスのベッドに腰掛けながら、答える。
「今日はですね、リリス先生の魔法をとにかく相殺する練習でしたよ。攻撃するための魔法は簡単だから、まずは防御の手段を確立する、とのことでした。あれは、本当に神経使いました。でも失敗してもちょっと擦り傷程度で済むような威力に調節してくれるから、リリス先生はすごいです!」
ソフィも自分のベッドに女の子座りしながら、目をキラキラしながらその光景を思い出していた。
「さすが魔族っスね!ってか、先生、って呼んでいるんスか?!」
「はい!最初は、リリスさんって呼んでいたんですけど、どうしても先生って呼ばれたいみたいです。なんでも先生っていう文化が魔族の中になくて、新鮮らしいんです。」
「ほぇ〜〜ほんと、魔族の概念が一気に変わったスよ!いやぁ世の中にはほんと知らないことばっかりっスね!」
ウンウンと難しそうな顔でうなずくレイン。
「レインさんは、ま、魔族とか見ても全然平気なのが、す、すごいですね!」
「アレスさんのおかげ、かもしれないっスね・・。「自分の目で見たことのみを信じろ、考えろ、判断しろ」って言われ続けていますからね!実際にリリスさんと会って話してみたら、普通のいい人(?)でしたしね!口調はちょっと変、ですけどね!どこであの口調、学んだんスかね?」
そう言ってレインはソフィに笑いかけたが、ソフィは下を向きながら返事をしない。
あれ、変なこと言ったかな〜と思いつつ、恐る恐るソフィの方を見やる。
「あの、ソフィの姉御・・?」
ひと呼吸おいた後、ソフィはポツリと言った。
「レインさんって、すごいですね。」
レインは突然誉められて、目を丸くした。
「えっと、どうゆうことですか?!すごいことなんか何もないっスよ?魔法は使えないし、剣もまだまだだし。」
「そ、そんなことじゃないんです。レインさんって、魔族とか、ハ、ハーフとかを認めてくれるじゃないですか。それが、です。」
「ソフィの姉御・・。」
「それが嬉しくて・・。」
ちょっと瞳をウルウルさせながら、ソフィはレインを上目遣いで見つめたり、目が合ったら恥ずかしそうに目を背けたり、そしてもう一回上目遣いで見つめたりと、落ち着かない様子だ。
レインは思わずソフィの頭をなでていた。
「ご、ごめんなさい。泣くつもりなんかなかったんですけど、つい幸せだなぁって思って。ユフィ姉さんも、普段あんな偉そうな態度とったりしているんですけど、アレスさんとレインさんにとっても感謝しているんですよ?」
「そうなんスか?!ユフィの姉御は素直じゃないっスね?その姉御は・・あれ?寝ちゃってる?」
レインはソフィの方を見ると、目をつむりながらスースー寝息を立てていた。
「あ〜〜。それじゃ、起こしたら悪いんで、俺も寝ますね!」
そういって名残おしそうに、レインはソフィをなでていた手を離した。
「はい、おやすみなさい。」
「おやすみッス!」
レインは音を立てないように静かにドアを閉め、部屋を出て行った。
「・・・姉さん、寝たフリなんかしなくてもいいんだよ?」
「バレたか。」
そう言って、ユフィはパチッと目を開けた。
「もー!せっかくいい雰囲気だったのに、お姉ちゃんも感謝の言葉ぐらい言えば良かったのに!」
「いや・・なんてゆうか、あんたらがいい雰囲気すぎて、逆に無理よ。あそこで邪魔する程、空気読めない訳じゃないわ!」
「わ、わたしは、レインさんのこと、そ、そんな風に思ってないよ?」
「はいはい、お姉ちゃんは分かってるよー」
そう言いながら、ユフィはレインと同じようにソフィの頭をなでなでする。
「もーぜったい分かってないんだからぁ!」
そう言いながら、むふーと頬を膨らませる。
それからしばらく、ユフィとソフィはうら若き乙女らしく、ガールズトークに花を咲かせた。




