混乱
ようやくメンバーが出そろったーここまで思ったより長くなってしまった!
大の字に転がる魔族の女。
その横でその女を見下ろすアレス。
さらにその周囲を囲むように倒れている冒険者。
そして、ユフィ・ソフィ・レイン。
混乱が一同を支配する。
「・・・・ど、どーゆーことよっ!?」
5秒ほど硬直した後、真っ先に硬直が解けたユフィはアレスに詰め寄る。
「まぁ、ちゃんと説明するから、とりあえずこの魔族の女ーーリリスは俺たちの敵じゃない。というか、俺の友達だ。それよりも、まずは彼らの手当をしなくちゃな。」
そう言って、アレスはリリスに手を差し伸べて、リリスの体を起こす。
リリスは特徴的な尖った耳、ふよふよと漂う尻尾、カールしたセミロングのブロンドの髪、燃えるような緋色の瞳をしており、これこそ魔族と言った出で立ちをしている。
また、タイトな服を着ているため豊満な女性らしい体のラインがよく分かるような服装をしている。
「一応聞くけど、殺してないよな??」
「誰に聞いておる?妾は人間を殺す趣味はないのじゃ。」
「うん、ありがとう。」
アレスとリリスが会話しているうちに、周りの冒険者達の硬直も解け、怪我をした仲間達の手当を行いだした。
一部、火傷や打撲や切り傷を負っているが、幸いなことに命に別状はないようだ。
しかし、それなりに重傷のようで、立ち上がれない冒険者の姿も何人か見える。
「悪い、リリス、少しでいいから回復してやってくれないか??」
「まぁ、アレスが言うならしょうがないのじゃ。ちょっと待っておれ。」
そうリリスは言って、手を上にかざすと魔法を発動する。
すると、重傷を負っていた冒険者の傷がみるみるふさがっていく。
「こんな精霊・・・見たことない・・・・。」
ユフィとソフィは絶句している。
精霊のイヤリングを身につけているため、その精霊が見えるのだろう。
一般的に精霊は【火・水・土・風・空】の5属性のみしかいないと考えられているのだ。
しかし、リリスが力を借りた精霊はこの5属性に該当しない。
「これは【命】の精霊だな。魔族にしか扱えない、特殊な精霊だ。って、説明していなかったっけ?」
「そんな説明聞いてないわよ・・・。」
むふーとふくれるユフィ。
「この精霊さんは・・とても優しい感じがする・・。」
ソフィはただただ、その光景に目を奪われているようだ。
しばらくした後、重傷を負った冒険者達も立てるようになったようだ。
その冒険者達のリーダーなのであろう、鎧に身を包んだ大柄な若い男がアレスに近づいてきた。
「よく状況が飲み込めないのだけど、俺たちは助けられた・・・と言っていいのかな?」
「そうなる、のかな?おそらくリリスだったら、これ以上の攻撃は加えなかったと思うけど。ところで・・・」
「あぁ、自己紹介が遅れたな。ギルド【宵の守護者】のリーダーをやっているグレンだ。ひょっとしてキミ達は・・【ライオン】か??」
「あぁ良くわかったな。」
「【漆黒】と【白銀】と【大剣】と【優男】の4人を見れば、誰でも想像はつくさ。」
「なるほどな。ちょっとリリス!こっち来い!」
そういって怪訝そうな目をしてグレンを見つめていたリリスはアレスの方に近づいてくる。
グレンは咄嗟に体を緊張させる。長年の習性なのであろういつでも戦闘できるように身構えている。
(無理もないか・・・。)
この国では、【魔族】は存在自体が恐怖の権化のように扱われている。
圧倒的な魔力を振りかざし、人間に対して暴虐の限りを尽くす・・と国では教えられているのだ。
「あぁ・・そんな緊張すんなよ。リリスは自分から仕掛けてくるような奴じゃないって。」
「し、しかし!魔族だぞ?!!!」
「えっと・・何か勘違いしていると思うんだけど、全ての魔族が人間に対して敵対的な行動をとる訳じゃないぞ?大方、あんたらがいきなり攻撃したんだろ?そんで、リリスの反撃を受けた・・・と。だよな?リリス?」
「えぇ、そうじゃよ。せっかく、のーんびりアレスがやってくるのを待っておったら、いきなりこいつらが襲って来たのじゃ。妾は怖かったのじゃ。」
と言いながらアレスの背中にひしとしがみつくリリス。
もちろん、リリスが本気で怖がっているわけではない。
なんでか知らないが、以前会ったときからアレスはリリスから猛烈な好意を受けているのだ。
「ええい、しがみつくな!ま、今回は死人が出なくて良かったってことで、双方とも水に流してくれないか?」
「あぁ・・・、このまま戦っていたら、間違いなくこちらは全滅していたから、な。正直、ここまで魔族との戦闘能力の差があるとは思っていなかった。自惚れていたよ。」
「妾はこんなことは慣れっこじゃからのう。気にしないのじゃ。」
ギルド【宵の守護者】はこの国のトップクラスの戦闘能力を保持したギルドである。
このメンバーで勝てないということは、ほとんどの人間ーーアレス達を除いてーーは魔族に勝てないということになる。
それは事実上、魔族が本気を出せば人間をいつでも滅ぼすことができるということである。
「とりあえず、もうここに用はないだろ?一旦、【イーストシティ】に戻ろうぜ。そこで、少し話そう。リリスもついてこい。」
「あぁ、そうしよう。」
「えぇ、もちろんじゃよ!もう絶対アレスから離れないのじゃ!」
三人でトントンと話を進めていき、残された【ライオン】のメンバーと【宵の守護者】のメンバーは呆然とする他なかった。




