再会
ギルド【ライオン】を結成してからーーつまり、アレス、ユフィ、ソフィ、レインが出会ってから3ヶ月程が経った。
順調すぎるほど【ライオン】は成長していた。ギルドとしても、個人個人としても。
この二ヶ月でギルドランクは4まで上がっていた。ギルドランク4というのは中級冒険者クラスだ。
たった二ヶ月でギルドランク4というのは異例中の異例であろう。
逆説的に言えば、【ライオン】はギルドランク4に達する程の成果を上げてきたのだ。
魔物の討伐や要人の警護や鉱石の採集など、あらゆる種類の依頼を受注し、完璧にこなしてきたのだ。
まだまだ有名なギルドとは言えないが、この街に滞在するギルドからは注目され始めている。
その理由は・・・。
「お、漆黒の嬢ちゃんと白銀の嬢ちゃん!お茶でもしてかないかい?」
「お、大剣のマッチョ野郎。ちょっと勝負しろや!」
アレスがユフィとソフィとレインにプレゼントしたものがトレードマークになっているためだ。
「【漆黒】と【白銀】と【大剣】は知ってるけど・・もう一人の優男はだれなんだろ?ヒソヒソ」
(ひそひそ言っても聞こえてるぞ!俺もなんかトレードマークつけよかな・・)
このトレードマークとギルドランク急上昇のおかげもあり、色々な他のギルドと交流を持つことができるようになった。
できるだけ強力な魔物と戦い、戦果を上げたいアレス達は色々なギルドから情報を集める。
その結果、どうやら街の南側に位置するフォール山脈の魔物の様子がおかしいとのことである。
(ひょっとして魔族でも出たか・・・?いや、でも、まさか・・な。)
魔族とは、魔物より強力な存在である。基本的に魔族に対抗しうる戦力としては、上級以上の冒険者に限られる。
そのため、街付近に魔族が出現した場合は、大騒ぎとなりギルドを挙げての討伐となる。
今回は魔族発見の報告は挙がっていないが、確かめる価値は多いにある。
しかし、既に他のギルドがフォール山脈に対して向かっているとのことで、とり急ぎアレス達もその山脈に向かうことにした。
普段アレス達が活動している街【イーストシティ】の南に約100km程度の場所にフォール山脈は存在している。
普通に歩いていくと3日間かかる行程である。
そこをアレス達は歩いてーー正確に言えば走ったり飛んだりしながら進むことに決めた。
ユフィは【火】の魔法を応用して、火の爆発力を推進力に変えて跳ねるように前に進んでいく。
ソフィは【風】の魔法を応用して、後方からの追い風と下から吹き上げる風を上手に使いこなしながら、それこそ風のように前に進んでいく。
アレスは【空】の魔法を応用して、空に浮かびながら気持ち良さそうに前に進んでいく。
レインは己の筋肉のみを利用して、走っていく。
「ちょ、これ、まじ・・・むり・・・・ッス。なんで・・俺・・だけ、己の筋肉・・なんスか・・」
最初の30分ぐらいはレインも頑張ってついて来ていたが、さすがに大剣を担ぎながらこのスピードについてくるのはしんどいか。
「ユフィ、ソフィ、手伝ってあげてやれ。人に魔法をかけて、その人の動きを制御してあげるのも訓練だ。・・・思いっきりでいいぞ。」
にやりと口元に笑みを浮かべながら姉妹に指示するアレス。
「・・・おーけーボス!」
こちらもにやりと笑みをうかべるユフィ。
「フ、フォローはしてあげますから、ごめんなさい。レインさん。」
なぜか謝るソフィ。
「ちょっと、待ってぇええええええっっつつ!!」
と叫びながら、上方斜め45度の角度でとんでもない勢いでぶっとんでいくレイン。
制御しうる全力で炎の魔法を炸裂させて、レインをぶっとばしたユフィは気持ち良さそうにその弾道を見つめて叫んだ。
「ふぁーーーー!!!」
「なんだ?そのかけ声は??」
「うん?分かんないけど、叫びたくなったのよ。」
・・・そんな会話をしている内にどうやらレインが落ちてきたようだ。
「・・・たすけてぇええええええ!」
「ふんっ!」
と可愛く力を込めたソフィが風の魔法で遥か上空から落ちてきたレインを優しくキャッチする。
「・・・・マジ、天使すぎるっス。100年に一度の天使ッス。」
鼻水を垂らし、目は虚ろで、レインは完全に錯乱している。
「はい、ありがとうございます!」
と笑みを浮かべるソフィはマジで天使かもしれない。
こうして、レインは炎の魔法で急上昇、風の魔法で地面に落ちるのを防ぐ・・を繰り返して前に進んでいった。
3時間程度こうして進んだ一行はフォール山脈の麓に到着した。
しかし、この場の様子がおかしい。この数km以内で戦闘が起きている。間違いなく。
「ユフィ、ソフィ、レイン・・・・分かるか?これが戦場の空気って奴だ。これを肌で感じられるようになれ。」
「えぇ。分かるわ。肌を刺すようなプレッシャーを感じる。空気が重い。」
「妖精さんも落ち着きがないですね・・・。」
「人の血の匂いがするッスね。」
張りつめた空気が【ライオン】の一行を包む。
「おそらく・・・魔族がいる。前には進むが、魔族に出会っても絶対に攻撃を加えるな。全て防御と回避に全力を集中しろ。今のお前達じゃ、まだ魔族には適わない。もし戦いになった場合は、全て俺がやる。」
コクとうなずくレインとユフィとソフィ。
額に汗を浮かべる三人は、戦場の空気に当てられ、言葉を発することもできなくなっている。
・・・ドオオオオオオオオオン!!!
山脈に向かって右側、おそらく1km程度の距離から大きな炎が上がる。
おそらく魔法レベルでいくと9・・つまりアレスよりも強力な魔法を使う魔族がいるということだ。
「行くぞ!」
それでも、アレスはその爆発が起きた地点へ飛んでいく。
遅れるわけには行かないと、ユフィ、ソフィ、レインもそれについていく。
その草木が生い茂った山脈を少し進んでいくと、そこには開けた場所があった。
・・・いた。
魔族だ。
その魔族の後方から近づいているため、顔は見えないが、あの特徴的な耳、尻尾、そしてあの存在感、間違いない。
その魔族の周りには5、6人もの冒険者が倒れており、立っている冒険者は4人程度といったところだ。
そしてアレスは一抹の不安を感じる。
(いやいやいや、まさか・・・な。)
アレスは達は、その現場に更に近づき10mほどの距離となった。
「大丈夫か!!!!」
アレスはそう叫び、魔族と冒険者の注目を集める。
魔族が急に飛びかかってきた時のために、アレスは火の魔法を最大出力で溜めていた。
そしてその魔法を・・・霧散させた。
「はぁ・・。お前・・だったのか。やっぱり嫌な予感がしたんだよ。」
そう言って、アレスは魔族に語りかける。
その瞬間、アレスの目の前にその魔族が突然現れた。
そして、アレスをぎゅっと抱きしめ、突然アレスに熱いキスをしだした。
さすがのアレスもその行動をとるとは思っていなかったため、しばらく呆然とした後、その魔族をひっぺがす。
「おま・・!こら・・!いい加減にしろ!」
なおも顔を近づけてキスしようとする魔族に対して、一本背負いをするアレス。
どすん!
見事にその一本背負いが決まり、その魔族は地面に仰向けに大の字になる。
「久しぶりじゃの、アレス。会いたかったのじゃ。」
「あぁ・・・久しぶりだな。俺も会いたかったよリリス。」
一本背負いを決められたまま語りかけるリリスという名の女の魔族。
一本背負いを決めたままで返事をするアレス。
リリスとアレスの久しぶりの再会となった。




