初陣
訓練を始めてから1週間が過ぎた。
ユフィ・ソフィの双子姉妹については、魔法の基礎訓練のみを行い、とにかく魔法を使って魔法の使用に慣れるように練習した。
特にユフィとソフィの成長には目を見張るものがある。
そもそも魔法の素養に関しては、最高級である。
それが専門的な指導を1週間受けたら、どうなるか。
ドドドドドォォーーン!!
大きな音を立てて、巨大な岩が木っ端みじんになった。
「ここまでとはな。」
今の火の魔法はユフィが発動したものだ。魔法の威力だけで評価すると、レベル7に相当する。
「まだまだ全然よ。今のは長い時間かけて集中して、やっと発動できたもの。今ので魔力もほとんど持っていかれちゃったし。実戦にはまだまだ使えなさそうね。安定して使えるのはレベル4ぐらいまでね。」
「それでも十分だよ。お前達ほんとにすごいな。」
そういいながらアレスはユフィの頭にポンっと手を置く。
「こ、子ども扱いしないでよ!」
「わるいわるい。」
ユフィはそう言いながら、満更でもない表情をしている。誉められることになれていないのであろう。
一方、ソフィはどこか物欲しそうな目をアレスに向けている。
レインについては、アレスとの模擬戦闘をひたすら行った。対人戦闘や対魔法戦闘におけるノウハウをアレスから学ぶためだ。
レインはそもそもの剣術や戦闘の経験があるためだ。
しかし、レインにはアレスのような魔法と剣術、それぞれが一流の冒険者と戦った経験がほぼない。
そのため、際立った成果はまだ出ていないが、徐々に魔法に対する戦闘に慣れてきたことは十分に感じることはできる。
「レインも頑張ってるな。身のこなしがスムーズになってきたな。」
「あざっス!てか、そうしないと俺の体が燃えちゃうんで。まだ、100回戦って100回負ける自信があります。」
「今は、な。いずれ俺が勝てなくなるさ。」
「そんなことないと思うんスけど・・・。」
「魔法も剣術も体術も、俺は専門家じゃないからな。今までにも話していたけど、俺の弟が魔法の天才だ。んで、俺の妹が剣術・体術の天才だ。そんでもって、俺のおとんが戦闘に関しての神だ。あいつには俺が100人いても勝てる気がしない・・・。」
「アレスさん・・妹さんもいたんですか!??というか、アレスさんの家族、おかしいですよ!??」
普段大人しいソフィが珍しく声を荒げている。
「まぁ自分がとんでも一家にいるってのは分かっている。俺が一番まともだと思うぞ。」
レインとユフィは声を失っている。
「も、もしかして伝説のギルド【ミスリル】のメンバーって!??」
数瞬の後、レインがアレスにほぼ確信を得ながらアレスに尋ねかける。
「あぁ、察しの通り、俺の家族だ。【ミスリル】のメンバーは俺、弟、妹、父親の4人で構成されている。この【ライオン】も【ミスリル】と対等に戦えるまでになってもらうから、3年後までに。あぁ、ちなみに拒否権はない。」
と言いながら爽やかスマイルを浮かべながら、メンバーに微笑みかけるアレス。
「こ、こわいッス。その笑顔がこわいっス!」
頬の筋肉をピクピクさせながら引きつった笑みを浮かべるレイン。
「3年もくれるの??まぁ、私とソフィなら余裕ね。レインは知らないけど。」
「俺も頑張りますよ、頑張りますけど・・・!」
(確かに。正直のところ、3年で【ミスリル】の域まで達するのは厳しいな。でも、そのぐらいのつもりで成長してもらわないと間に合わないんだ・・・。)
ふっと、冷静な表情を浮かべながらアレスは遠い目をする。
「アレス・・・さん?」
それに気づいたソフィは心配そうな顔をしながら、アレスを見上げる。
「・・・ん?なんでもないぞ?さ、ちょっと休憩するか。」
ユフィとソフィの魔力の回復を待った後、アレスは訓練を次のステップに進めることをメンバーに告げる。
「これからはギルドにおける戦いも覚えてもらう。今までは1対1での戦いを念頭に訓練してきたが、今後は多対1、多対多での戦いをやっていくぞ。」
「おぉ!!!らしくなってきましたね!」
「こっからは魔物とのガチの実戦を行っていくからな。まずはその辺にいるウォードッグとかウォーキャットとかの魔物に対して、ギルドとして戦うぞ。その魔物自体は極めて弱いが、まずはギルドとしての動き方を覚えてもらう。」
アレス一行は、現在いる【イーストシティ】郊外の草原をしばらく歩く。
「なにか、向かってくるわ!」
ユフィはそう叫びながら、草原のある方向を指差す。
ウォードッグ2匹がこちらに向かっていることに気づいたようだ。
まだウォードッグは数百m先なので、ユフィはよく気づいたと言える。
「・・あの魔物、火の精霊がたくさん周りにいますね。火の魔法を使ってくるかもしれません。」
すかさず、ソフィがその魔法の情報をメンバーに伝える。
「いいぞ、ユフィとソフィ。何かに気づいたらすぐにメンバーと共有するんだ。今回は俺とレインが前衛で、俺が左側、レインが右側を担当だ。ユフィは俺のサポート、ソフィはレインのサポートだ。ちなみに、全力でやるとすぐ倒しちゃうから、今回は手加減をすること。仲間と連携することを目的とするぞ。」
「了解ッス!!」
「分かったわ。」
「り、了解です。」
素早くアレスは指示を出すと、レイン・ユフィ・ソフィは短い返事をする。
魔物との距離が20mぐらいになった。
「行くぞ、レイン!」
「ッス!」
そうレインに声をかえ、アレスとレインは木の剣を抜き、ウォードッグ2匹に向かって走り出す。
その直後、後ろから魔法の詠唱が始まるのを感じる。
「ゆけ、火の精霊よ!」
「お願いします、風の精霊さん!」
ユフィとソフィがそれぞれ先制の魔法を放つ。
火の魔法の標的となったウォードッグはその火の魔法をひょいっと躱しながらも、ややバランを崩した。
風の魔法の標的となったウォードッグはその風に押され、ややスピードを減速させた。
そこにアレスとレインが斬り掛かっていった。
10分程度ウォードッグと戦った後、それらを問題なく倒した。
「さ、反省会だ。」
「余裕ッスね!楽勝ッス!」
レインは軽い口調で返事をする。
「そんな当たり前なことを言ってどうする。ここがやりやすかった、ここがやりにくかった、とかなんとかあるだろう?ユフィはどうだった?」
「アレスの動きが早くて、魔法のタイミングが難しいわね。でも、私と魔物との直線上になるべくいないように配慮してくれたから、やりやすかったわね。」
「まぁな。背中を仲間から打たれたくないからな。これぐらい敵とレベルの差があると、それぐらいできるんだが、相手が強くなってくるとそうも言ってられないからな。」
「分かっているわよ。」
「ユフィはどうだった?」
「一回、ウォードッグがこちらに向かってきて、怖かったです。」
「ソフィの姉御・・すいません。ちょっと火の魔法に驚いてしまいました。」
「レイン、分かっていると思うが、前衛は絶対に敵を後ろに通してはいけないぞ。後ろに通してしまったら、後衛は死ぬと考えておけ。」
「・・肝に銘じておきます。」
「ユフィとソフィは後衛だ。基本的に敵と近接戦闘になりそうな場合は、すぐに退け。今後、多少の剣術は学んでもらうが、敵を倒すことよりも、それよりも自分の身を守ることを第一に考えろ。そして自分の距離で戦え。」
「えぇ。分かったわ。」
「はい、了解です。」
それぞれに簡単なアドバイスを行った後、反省会を終了する。
「今後、定期的に反省会を行っていくぞ。よし、次の敵を探すぞ。」
そうアレスは一向につげて、訓練を再開する。




