第95話
第95話
守護者ヒューギルとの面会を終え、ルシアンとヴァルクは学園の建物を出た。
外に出ると、昼の光が石畳に反射していた。学園の敷地には学生たちの姿も見えるが、二人の会話に耳を傾ける者はいない。
ヴァルクが小さく息を吐く。
「……まさか守護者が出てくるとは思わなかったな」
肩を軽く回す。
「普通なら学園長止まりだと思っていた」
ルシアンは静かに歩きながら答える。
「皇子が関わっているからでしょう」
「まあ、それもある」
ヴァルクは少し苦笑した。
「だが皇子でも守護者が出てくることはそうない」
少し視線を横に向ける。
「……お前のせいだろうな」
ルシアンは何も言わなかった。
二人はそのまま街へ戻る。
グランヴェルたちが泊まっている宿は、学園からそれほど遠くない場所にあった。帝国の皇子らしく、かなり立派な建物だ。
宿の一室。
扉を開けると、グランヴェルともう一人の護衛の女性がいた。
グランヴェルは椅子に座り、何やら本を読んでいたが、二人を見ると顔を上げた。
「戻ったか」
そしてすぐに聞く。
「どうだった」
ヴァルクが答える。
「場所は借りられます」
一瞬の沈黙。
次の瞬間、グランヴェルの口元が大きく歪んだ。
「ほう」
楽しそうだった。
「どこだ」
「学園の訓練場です」
ヴァルクは続ける。
「ただし条件付きです」
グランヴェルが眉を上げる。
「条件?」
「守護者エイルの立ち合いのもとで行うことになりました」
その言葉に、女性の護衛が少し驚いた顔をした。
「守護者が?」
グランヴェルは数秒だけ黙る。
そして――笑った。
「ははは!」
心底楽しそうだった。
「いい」
椅子から立ち上がる。
「面白いではないか」
赤い瞳が輝く。
「守護者が見ている前で戦えるとはな」
女性の護衛が腕を組む。
「皇子、本気ですね」
「当然だ」
グランヴェルは即答した。
そしてルシアンを見る。
「では決まりだ」
口元を歪める。
「いつだ」
ルシアンは短く答えた。
「明日」
グランヴェルは一瞬だけ目を細める。
そして笑った。
「いい」
「待ちきれん」
赤い瞳が真っ直ぐルシアンを見る。
「明日、本気で戦おう」
その声には、隠しきれない高揚があった。
ルシアンは静かに頷く。
決闘の日は――
明日だった。




