表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果てなき世界  作者: 影川明空人
第3章 学園1年目
85/182

第84話

第84話


 第四会場に割り当てられた受験者たちは、教師の指示に従って校舎へ移動していた。


 石造りの廊下を進み、案内されたのは広い講義室だった。長い机が整然と並び、すでに何人かの受験者が席についている。窓の外には学園の訓練場が見え、遠くでは別の会場の試験が進んでいるらしく、時折金属のぶつかる音が聞こえていた。


 ルシアンも指定された席に座る。


 ほどなくして教師が問題用紙を配り始めた。


「これより筆記試験を行う」


 教室の前に立った教師が言う。


「試験時間は九十分」


「問題は魔法理論、戦術基礎、魔物学、歴史などだ」


 机に問題用紙が置かれる。


「裏返したまま待て」


 受験者たちが静かに待つ。


 やがて教師が言った。


「始め」


 紙をめくる音が一斉に広がった。


 ルシアンも問題用紙に目を落とす。


(……やはりこの程度か)


 想定していた内容だった。


 魔力循環の基礎理論。代表的な魔物の弱点。小規模戦闘における陣形判断。歴史問題も多くは近代のものだ。


 難しい問題ではない。


 むしろ――


(全部解ける)


 だが、全部解く必要はない。


 ここで目立つ理由はない。


 ルシアンはペンを走らせながら、意図的にいくつかの問題を飛ばした。確実に分かるものでも、少し考えるふりをする。計算問題も一つだけ途中で止める。


 満点は取らない。


 だが低すぎもしない。


 上位には入るが、目立つほどではない位置。


 それくらいがちょうどいい。


 周囲では受験者たちが真剣な表情で問題に向かっていた。額に汗を浮かべている者もいる。ペンの走る音だけが教室に響く。


 九十分は長い。


 だが問題量を考えれば妥当な時間だった。


 時間はゆっくりと過ぎていく。


 そして――


「終了」


 教師の声が響いた。


「筆記試験はここまでだ」


 問題用紙が回収されていく。


 受験者たちは一斉に息を吐いた。張り詰めていた空気が少しだけ緩む。


 ルシアンは静かに席を立った。


 教師が続けて言う。


「次の試験は午後から行う」


「それまで昼休憩だ」


 受験者たちはぞろぞろと教室を出ていく。


 校舎の外へ出ると、学園の中庭にはすでに多くの受験者が集まっていた。持参した食料を食べている者、試験の出来を話している者、静かに休んでいる者。


 ルシアンは木陰のベンチに腰を下ろした。


 持ってきていた簡単な食事を取り出す。パンと干し肉。水を一口飲み、ゆっくりと食べる。


 周囲では受験生たちの会話が聞こえていた。


「筆記、思ったより簡単だったな」


「いや最後の戦術問題難しくなかったか?」


「俺そこ空欄だわ……」


 そんな声を聞きながら、ルシアンは静かに空を見上げた。


(……午後か)


 次は魔法試験。


 そして――


 実技試験。


 試験の本番は、むしろこれからだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ