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果てなき世界  作者: 影川明空人
第2章
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第59話

第59話


 どれほど時間が経ったのか。封印の内部には昼も夜もない。ただ静かな空間だけが続いている。


 それでも、変化は確かにあった。


 ルシアンは胡座をかいたまま、ゆっくりと目を開く。


(……落ち着いたな)


 体の奥を荒れ狂っていた力は、もう暴れていない。


 ベルグラードの力、シルヴァリオンの力、ラウネリスの力。三柱の神の力は、まだ完全ではないものの、確かな流れとして体の中に収まっている。


 最初の頃のような暴走は起きない。集中すれば、制御できる。


(……一週間くらいか)


 封印の中では時間の感覚は曖昧だが、体の感覚からしてそれくらいだろう。


 ルシアンはゆっくりと立ち上がる。その瞬間、腹が小さく鳴った。


(……そういえば)


 一週間。何も食べていない。何も飲んでいない。神の力の制御に集中していたため、体の感覚をほとんど意識していなかった。だが流石に空腹は誤魔化せない。


(腹は減るな)


 体を軽く動かす。問題はない。むしろ以前より軽い。神の力が体の基礎能力を底上げしているのが分かる。


 ルシアンは封印の奥を振り返った。もうここでやることはない。必要なものは手に入れた。歩き出し、封印の出口へ向かう。


 境界を越えた瞬間、空気が変わる。山岳地帯の冷たい風。濃い魔力。そして外の世界の匂い。


(……戻ったか)


 ほんの一週間だが、久しぶりの感覚だった。ルシアンは軽く息を吐き、周囲を見渡す。魔物の気配。山岳地帯は相変わらず危険な場所だ。


(ちょうどいい)


 食料も必要だ。そして新しい力を試す相手としても。


 ルシアンが歩き出してすぐ、岩陰で気配が動いた。


 マウンテンウルフ。四体。Aランク相当の魔物。以前なら油断できない相手だったが、今は違う。


 ウルフが飛び出す。その瞬間、ルシアンの影が揺れた。次の瞬間、ルシアンの姿が消える。そしてウルフの背後。影から現れる。


(……なるほど)


 影移動。ラウネリスの力。


 ウルフが振り向くより早く、ルシアンの拳が振り抜かれる。鈍い音とともに一体が岩へ叩きつけられる。


 残りの三体が襲いかかる。次の瞬間、空気が動く。風が刃になる。シルヴァリオンの力。ウルフの一体が切り裂かれる。


 残る二体。ルシアンは前へ出る。踏み込み、拳を振るう。ベルグラードの力。ただの一撃。だが威力が違う。二体同時に吹き飛び、岩へ叩きつけられる。


 静寂。戦闘はほんの数秒だった。


(……強いな)


 自分の力だが、冷静にそう思う。以前とは比べ物にならない。


 だが――


(まだ完全じゃない)


 力は扱える。しかし完全に馴染んだわけではない。無理をすれば暴れる。だから焦らない。


 ルシアンは倒れたウルフを持ち上げる。


(……食料)


 足元の影が静かに広がる。ラウネリスの力。ウルフの死体が影の中へ沈む。


(便利だな)


 ルシアンは空を見上げた。山岳地帯の空。風が吹く。


(……もう少し試すか)


 そして歩き出す。新しい力を確かめながら。食料を確保しながら。バルグラムが来る、その日まで。


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