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果てなき世界  作者: 影川明空人
第2章
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第58話

第58話


 時間の感覚は、ほとんど失われていた。


 目は閉じたまま。


 胡座をかいた姿勢も変えない。


 ただ呼吸だけが静かに繰り返される。


 封印の内部は静まり返っている。


 外界の音は何も届かない。


 だが、ルシアンの内側では激流が続いていた。


 ベルグラードの力。


 シルヴァリオンの力。


 ラウネリスの力。


 三柱の神の力が、体の奥でぶつかり合い続けている。


(……流れを見る)


 無理に押さえ込まない。


 戦うのではない。


 ただ流れを読む。


 ベルグラードの力は荒い。だが単純だ。破壊と闘争のための力。中心に据えることで安定する。


 シルヴァリオンの力は軽い。だが拡散しやすい。流路を作り、その中へ導く。


 ラウネリスの力は深い。影のように静かで、底へ沈む。支えとして使える。


 最初は衝突していた三つの力が、少しずつ形を変えていく。


 流れが生まれる。


 ぶつかり合っていた力が、循環し始める。


(……そうか)


 理解する。


 三つを抑えるのではない。


 三つを“回す”。


 ベルグラードの力が中心で回り。


 シルヴァリオンの力が流れを作り。


 ラウネリスの力がそれを包み込む。


 三つが、ようやく一つの循環を作り始めた。


 だが――


(……まだ重い)


 量が違う。


 完全に馴染んだわけではない。


 制御を緩めれば、すぐに暴走する。


 それでも最初とは違う。


 力は暴れていない。


 流れている。


 ルシアンはゆっくりと目を開いた。


 封印の空間は変わらない。


 だが、見え方が違う。


 空間の魔力の流れが、はっきりと見える。


 いや――感じる。


 風のように。


 影のように。


 そして闘いの熱のように。


(……変わったな)


 静かに立ち上がり、体を動かす。


 力は重いが、制御できないほどではない。


 まだ完全ではない。


 だが――


(使える)


 そう判断できる程度には、馴染んでいた。


 ルシアンは手を軽く握る。


 その瞬間、影がわずかに揺れる。


 足元の影が伸び、形を変え、静かに空間へ広がる。


(……ラウネリス)


 影の力。


 次に、空気がわずかに流れる。


 封印の空間に風はない。


 それでも、確かに流れが生まれる。


(……シルヴァリオン)


 そして最後に。


 体の奥にある重い熱。


 戦うための力。


(……ベルグラード)


 三つの力が、確かにそこにある。


 完全ではない。


 だが確実に、自分の中に存在している。


 ルシアンはゆっくり息を吐いた。


 完全に制御するには、まだ時間が必要だ。


 だが焦る必要はない。


 邪魔は来ない。


 ルシアンは再びその場に座る。

 

 胡座をかき、目を閉じる。


 次は――


 制御ではなく、鍛える。


 神の力を、完全に自分のものにするために。


 ルシアンは静かに呼吸を整えた。


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