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果てなき世界  作者: 影川明空人
第2章 力をその手に
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第57話

第57話 


 視界が白く染まる。


 溢れ出した力が空間を震わせた。


 ルシアンの体から噴き出した魔力が、封印の内部を揺らす。地面が軋み、空間そのものが波打つ。


(……抑える)


 意識を集中する。


 だが、押し寄せる力は止まらない。


 ベルグラードの力は荒れ狂う奔流のようだった。叩きつけるような闘争の力。前へ進み、打ち砕くための力。


 シルヴァリオンの力はその逆だ。軽く、自由で、どこまでも拡散しようとする。束ねなければすぐに散る。


 そしてラウネリス。


 静かだ。


 だが底が見えない。影のように深く沈み、どこまでも広がる。


 三つの力が、体の中でぶつかり合う。


(……このままでは暴走する)


 ルシアンはその場に腰を下ろした。


 足を組む。


 胡座をかく。


 背筋を伸ばし、目を閉じる。


 呼吸を整える。


 戦うのではない。


 押さえ込むのでもない。


 流れを読む。


 瞑想のように、意識を内側へ沈める。


(……見る)


 体の中の流れ。


 ベルグラードの力は荒い。だが芯がある。中心に据える。


 シルヴァリオンの力は流れる。制御の流路を作り、その中に通す。


 ラウネリスの力は沈む。底へ落とし、支える。


 三つを分ける。


 ぶつけず、まとめる。


 だが――


(……まだ多い)


 力が多すぎる。


 流れが溢れる。


 魔力回路が軋む。


 封印の空間が震える。


 それでもルシアンは動かない。


 ただ呼吸を続ける。


 意識を内側へ沈め、流れを見る。


 少しずつ、ほんの少しずつだが。


 三つの力の衝突が、弱まっていく。


 ベルグラードの声が聞こえる。


「……いい判断だ」


 シルヴァリオンが静かに言う。


「戦うよりも、流れを整えるか」


 ラウネリス。


「……適切」


 ルシアンは答えない。


 意識のほとんどを内側へ向けている。


 瞑想を続ける。


 流れを読み、整える。


 だが完全には抑えきれない。


 力はまだ暴れている。


 ベルグラードが静かに言う。


「ここからは時間がかかるぞ」


 シルヴァリオン。


「完全に馴染むには、おそらく数日」


 ラウネリス。


「……耐えろ」


 三柱の気配が、少しずつ薄れていく。


 ベルグラードが最後に言う。


「いいか、ルシアン」


「必ずやり遂げろ」


 シルヴァリオン。


「世界を変えてみせろ」


 ラウネリス。


「……見ている」


 その言葉を最後に。


 三柱の神の気配は、完全に消えた。


 残ったのは、膨大な神の力と。


 それを制御しようとするルシアンだけだった。


 胡座をかき、目を閉じたまま。


 動かない。


 呼吸だけを整え。


 意識を深く沈める。


 その姿はまるで、修行僧の瞑想のようだった。


 だがその内側では――


 神の力が、今なお荒れ狂っていた。


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