第46話
第46話
封印の地点を離れ、さらに奥へ進んだところでバルグラムが足を止めた。
「……この辺りでいい」
岩壁に囲まれ、風が多少は遮られている。完全ではないが野営には十分だ。
ルシアンも周囲を一瞥する。(問題ない)強い個体の気配はない。
二人は無駄なく準備に入る。バルグラムが岩を組み簡易の風避けを作り、ルシアンは動線と退路を確認する。やがて小さな火が灯った。
「……明日だ」
「ええ」
「場所は分かってる。だが“居る”ぞ。強い」
「問題ありません」
即答に、バルグラムはわずかに口元を緩める。
火が弾ける音が静かに続く。
「……お前、なんでそこまで力に拘る」
視線を向けないままの問い。
ルシアンは少しだけ間を置いた。
「必要だからです」
「それは聞いた。理由だ」
沈黙が落ちる。
「……失いました」
短く言う。
「自分の無力で、多くを」
それ以上は語らない。だが、それで十分だった。
バルグラムは小さく息を吐く。
「……そうか」
踏み込まない。それが答えだった。
バルグラムは薪をくべる。
「俺の方は前に言った通りだ。武器を打つ。全員を黙らせるためのな」
一拍。
「ただ、それだけじゃ足りねぇ」
ルシアンは視線だけ向ける。
「腕は認めさせる。だが、それだけじゃ“戻った理由”までは消えねぇ」
低い声。
「だから叩き潰す。文句ごと全部な」
ルシアンは頷く。
「合理的ですね」
「だろ」
短いやり取り。それで十分だった。
再び静寂が落ちる。火の揺れだけが二人を照らす。
「……寝るぞ。交代で見張る」
「先にどうぞ」
「いいのか」
「問題ありません」
役割が決まる。
バルグラムが横になり、ルシアンは周囲へ意識を広げる。
(明日)
高純度の魔鉱石。そして、それを守る魔物。
必要なものは決まっている。
取りに行くだけだ。
冷たい風の中、夜は静かに流れていった。




