表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果てなき世界  作者: 影川明空人
第2章 力をその手に
44/182

第43話

第43話


 山岳の風が吹き抜ける。戦闘の余韻は消え、残っているのは砕けた岩と魔物の死骸だけだった。


 バルグラムは斧を肩に担ぎ、ルシアンを見る。


「……で、目的があるんだろ」


 短い問い。警戒はあるが、敵意はない。


 ルシアンはわずかに間を置く。(……問題ない)戦闘の動きで分かる。判断、間合い、引き際。どれも信用に足る。


「ある場所を探しています」


 隠さず言う。


 バルグラムの目が細くなる。


「……どんな場所だ」


「魔力の流れが歪んでいる場所です」


 一瞬の沈黙の後、バルグラムが低く息を吐いた。


「……やっぱりか」


 小さく呟く。


「心当たりがあるんですか」


「ある。昔、一度だけ見つけた」


 淡々と続ける。


「山の奥だ。明らかに流れが狂ってる場所があった」


 一歩、岩に足をかける。


「中には入ってねぇ。入れなかった。封印されてたからな」


「……封印」


「触れただけで分かる。無理に壊すもんじゃねぇ類だ」


 一拍。


「だから放置した。誰にも言ってねぇ。面倒になるだけだ」


 ルシアンは頷く。


「そこへ行く気か?」


「はい」


「死ぬぞ」


「そのつもりはありません」


 即答。バルグラムは鼻を鳴らした。


「……言うと思ったがな」


 一拍置いて、視線を逸らす。


「俺も奥に用がある」


 ルシアンは黙って聞く。


「魔鉱石だ。しかも高純度のやつだ」


 斧を軽く叩く。


「この辺じゃ足りねぇ。もっと奥だ」


 そして、少しだけ声が低くなる。


「……今、集落で長を決めてる」


 ルシアンの視線がわずかに動く。


「候補は何人かいる。俺もその一人だ」


 淡々としているが、その奥に確かな意志がある。


「選び方は単純だ。全員を黙らせる武器を打てるかどうか」


 一拍。


「だから素材がいる。中途半端なもんじゃ意味がねぇ」


 ルシアンは短く問う。


「認められていないんですか」


 バルグラムは一瞬だけ黙る。


「……昔、集落を出た」


 それだけ言う。


「止められてもな。勝手に出て、人間の国で鍛冶やってた」


 視線は前のまま。


「戻ってきたのは五年前だ」


 一拍。


「印象は最悪だ」


 だが、声は揺れない。


「だから、腕で黙らせるしかねぇ」


 ルシアンは理解する。言葉ではなく結果で覆すタイプ。


(……同じだな)


 バルグラムが視線を戻す。


「で、だ」


「俺はその場所の“大まかな位置”を知ってる」


「お前はそこを探してる」


 一歩近づく。


「代わりに、魔鉱石探しに付き合え」


 さらに続ける。


「見返りはそれだけじゃねぇ。武器も打ってやる」


 ルシアンの目がわずかに細くなる。


「……条件は」


「ねぇ」


 即答。


「ただし、途中で死ぬな。それだけだ」


 単純で、無駄がない。


 ルシアンは一瞬だけ考え――


「分かりました。手伝います」


 頷く。


 成立。


 バルグラムは小さく息を吐く。


「決まりだな」


 背を向ける。


「まずはその場所だ。案内してやる」


 歩き出す。


「位置を掴めば、後は好きにしろ」


 ルシアンもすぐに続く。


 並ばず、少し後ろ。


 だが歩幅は合う。


 言葉はない。だが目的は一致している。


 封印の場所へ。その先にあるものへ。


 そして――そのさらに奥へ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ