第412話
第412話
「はぁっ!」
レオンの剣が魔物を斬り裂く。
倒れた魔物の横を抜け、そのまま次の敵へ。
『レオン、ミギ!』
「分かってる!」
右から迫った魔族の剣を受け止める。
弾く。
体勢を崩したところへ踏み込み、剣を振り抜いた。
「ぐっ……!」
魔族が地面を転がる。
その背後から、別の魔物。
「遅い」
グランヴェルの剣が炎を纏う。
一閃。
魔物が吹き飛んだ。
「次が来るぞ」
「ああ!」
周囲では至るところで戦闘が続いている。
魔族、魔物、ルミナス騎士団。
敵味方が入り乱れ、魔法と剣撃が絶え間なく飛び交っていた。
それでも少しずつ、確実に敵の数は減っている。
第一隊だけではない。
第二隊、第四隊、第七隊。
それぞれが自分たちの役割を果たし、魔族と魔物を倒していく。
「…………」
その中、ユリウスが剣を振るう。
飛びかかってきた魔物の攻撃を避け、一歩懐へ。
剣を振り上げた。
魔物が倒れる。
「次は――」
新たな敵を探す。
そして。
「……あ」
ユリウスの目が止まった。
少し離れた場所。
複数の魔物の向こう側に、一人の魔族がいる。
魔法を主体として戦っている魔族。
「…………」
見覚えがあった。
先日の砦での戦い。
自分が追い回し、何度も攻撃を叩き込み、最後には他の魔族に助けられた相手。
「あの人……」
向こうも気づいた。
「……貴様」
その表情が変わる。
次の瞬間、魔族の周囲に複数の魔法陣が展開された。
「ユリウス!」
魔法が放たれる。
炎、風。いくつもの魔法がユリウスへ殺到する。
「…………」
だが一歩横へ、身体を沈め、跳ぶ。
次々と迫る魔法の間を抜けていく。
一発も当たらない。
「ちっ……!」
魔族がさらに魔法を放つ。
今度はユリウスだけではない。
周囲のレオンたちにも向けて魔法が飛んだ。
「来るぞ!」
レオンが剣を振るい、魔法を弾く。
フェルディナントも横へ動き、飛来した魔法を逸らした。
カトレアは避ける。
アレスも難なく防いだ。
「この程度か」
グランヴェルの炎が魔法を飲み込む。
「ユリウス! 深追いしないで!」
カトレアの声。
「…………」
ユリウスは答えない。
魔族を見る。
先日の戦いと同じ。
魔法の軌道や発動までの僅かな動き。
何も変わっていない。
分かる、見える。
やはり、自分なら倒せる。
ユリウスが踏み込んだ。
「っ!」
魔族が魔法を放つ。
一発、二発、三発。
ユリウスは全てかわす。
距離が縮まる。
「くっ!」
さらに魔法。
首を傾けるだけで避ける。
そして、一気に懐へ入った。
「また会いましたね」
「――!」
剣を振るう。
「ぐっ!」
魔族の身体が斬り裂かれる。
血が飛ぶ。
魔族は反撃しようと手を向ける。
だが、ユリウスの方が速い。
二撃目。
「がっ……!」
魔族が大きく後退した。
ユリウスは追う。
「待ちなさい!」
カトレアの声が響く。
「ユリウス!」
「大丈夫ですよ!」
ユリウスは振り返らない。
魔族は既に逃げ始めている。
「こいつなら僕一人で倒せます!」
「そういう問題じゃないの!」
カトレアが追う。
だが、ユリウスは止まらない。
「ちょっと追って倒してくるだけです!」
「だから待ちなさいって言ってるでしょ!」
魔族がさらに距離を取る。
ユリウスが速度を上げた。
「ユリウス!」
レオンも追う。
「まずいな」
フェルディナントが表情を変えた。
「あいつ、完全に周りが見えてない」
「もう!」
カトレアが舌打ちする。
「放っておけないわ! 追うわよ!」
「ああ」
フェルディナントも走り出す。
「レオン!」
「はい!」
敵が入り乱れる戦場。
その中をユリウスが進んでいく。
逃げる魔族だけを見て。
「…………」
レオンが前を見る。
確かに、ユリウスは圧倒している。
前回もそうだった。
実力だけを見れば、あの魔族を一人で倒せてもおかしくない。
だからこそ、嫌な感じがした。
「ユリウス! 一回止まれ!」
「大丈夫ですって!」
また同じ答え。
ユリウスは止まらない。
魔族を追って、さらに戦場の奥へ。
レオン、フェルディナント、カトレア。
三人もユリウスを一人にするわけにはいかず、その後を追っていく。
少しずつ、本隊との距離が開いていく。
それでも、ユリウスは気づいていなかった。
いや、気づいていたとしても問題だとは思っていなかった。
目の前の相手は、自分より弱い。
それがユリウスにとっては、何よりも確かなことだった。




