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果てなき世界  作者: 影川明空人
第9章 学園2年目 大規模試験編
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第404話

第404話


 戦斧が振り下ろされる。


 アレスが剣を合わせた。


 轟音。


 二人を中心に地面が大きくひび割れる。


「ハハッ! やるじゃねぇか!」


「そっちもな」


 アレスが戦斧を弾く。


 そのまま踏み込み、剣を振るう。


 魔族も戦斧を引き戻して受け止めた。


 再び激しい衝撃が周囲へ広がる。


 一歩も譲らない。


 力だけではない。


 戦斧の魔族はアレスの攻撃を見ながら、巧みに間合いを調整している。


 アレスもまた、巨大な戦斧を相手に真正面から渡り合っていた。


 一方。


「はぁっ!」


 グランヴェルの剣が魔族へ迫る。


 魔族が受け流す。


 だが、その先にはフェルディナント。


「こっちだよ」


「っ!」


 水が魔族の足元へ走る。


 動きを止めた一瞬で、フェルディナントの剣が迫った。


 魔族が強引に身体を捻る。


 浅く斬られながらも距離を取った。


「逃がさん!」


 グランヴェルが追う。


 だが。


「邪魔だ!」


 横から飛び込んできた魔物を斬り伏せる。


 その僅かな間に、魔族は体勢を立て直していた。


「チッ」


「なかなか上手くいかないね」


「貴様と二人なら、とっくに倒している」


「僕もそう思うよ」


 周囲には魔物がいる。


 目の前の魔族だけに集中することはできない。


 それはレオンたちも同じだった。


「レオン、後ろ!」


「はい!」


 振り向きざまに剣を振るう。


 迫っていた魔物を斬る。


 直後。


「余裕があるのかな?」


「っ!」


 魔族の剣。


 レオンが受け止めた。


「ルーチェ!」


『ウン!』


 光が飛ぶ。


 魔族が横へ避ける。


 その先へカトレアの氷が伸びた。


「これは――」


 魔族が魔法を放つ。


 氷が砕け散った。


「まだよ!」


 風が吹き荒れる。


 魔族の身体が僅かに崩れる。


 レオンが踏み込んだ。


「はぁっ!」


 剣を振り下ろす。


 魔族が受ける。


 押し込む。


「ぐっ……!」


 レオンがさらに力を込める。


 魔族の足元が沈んだ。


 そこへカトレアが迫る。


 だが。


「レオン!」


「!」


 横から魔物の群れ。


 レオンが咄嗟に離れる。


 カトレアも攻撃を中断し、風を放った。


 魔物たちが吹き飛ぶ。


 その間に魔族が距離を取った。


「……面倒ね」


「同感です」


 レオンが剣を構え直す。


 押している。


 グランヴェルたちも、レオンたちも、このまま戦えば勝てる。


 だが、倒しきれない。


 周囲から次々と襲いかかってくる魔物が、その僅かな差を埋めていた。


 そんな状況が続いていた。


 その時だった。


 ――ドォォォン!!


「っ!?」


 遠くから凄まじい音が響いた。


 地面が僅かに揺れる。


「なんだ!?」


 レオンが音のした方を見る。


 遠くで巨大な土煙が上がっていた。


「何かあったのか?」


 グランヴェルも眉を寄せる。


 しかし。


「……ああ」


 フェルディナントは何とも言えない表情を浮かべていた。


 カトレアも同じ。


「またね」


「また?」


 レオンが二人を見る。


「何がですか?」


「そのうち分かるよ」


 フェルディナントが小さく息を吐く。


 そして。


 ――ドォォォン!!


 再び衝撃。


「……近づいてないか?」


「近づいてるわね」


 レティシアが答える。


 土煙が上がる。


 少しして、また。


 ――ドォォォン!!


「絶対近づいてきてるだろ!」


『ナニ!?』


 ルーチェも土煙の方を見ている。


 周囲の第一隊の騎士たちも気づいていた。


 だが、慌てている者は少ない。


 むしろ。


「またやってるのか」


「みたいだな」


 そんな声まで聞こえてくる。


「……?」


 レオンが困惑していると。


 突然。


「来るよ」


 フェルディナントが言った。


「え?」


 次の瞬間、何かが飛んできた。


「うわっ!」


 レオンたちの少し離れた場所へ激突。


 地面が抉れ、大量の土煙が舞い上がった。


「何だ!?」


 剣を構える。


 土煙が晴れていく。


 そこにいたのは――魔族。


「……ぐっ……」


 全身傷だらけ。


 衣服も所々破れ、血を流している。


 それでも強い魔力を感じる。


「こいつ……」


 レオンが目を細める。


 先ほどまで戦っていた魔族たちにも劣らない。


 その魔族が飛んできた方向。


 土煙の向こうから、一人の少年が歩いてくる。


「……え?」


 レオンが思わず声を漏らした。


 若い。


 自分たちと、それほど歳が変わらないように見える。


 少年は剣を片手に、何でもないことのように歩いていた。


「ユリウス」


 フェルディナントが声をかける。


 少年――ユリウスがこちらを見る。


「あ、フェルディナントさん」


 その直後、横から魔物が襲いかかった。


「邪魔」


 一閃。


 魔物が斬り捨てられる。


 ユリウスは倒れた魔物に一瞥もくれない。


 だが、さらに魔物が集まってくる。


「……もう」


 ユリウスが周囲を見渡した。


「周りの魔物が邪魔だな」


 魔力が膨れ上がる。


「――!」


 レオンが目を見開く。


 次の瞬間、魔法が炸裂した。


 凄まじい衝撃が周囲へ広がる。


 ユリウスを中心に、近くにいた魔物たちがまとめて吹き飛ばされた。


「なっ……!」


 レオンが驚く。


 広範囲。


 それでいて、こちらには届いていない。


「すごい魔力……」


 レティシアもユリウスを見ていた。


 その時。


「小僧……!」


 先ほど吹き飛ばされてきた魔族が立ち上がった。


 怒りを露わにし、魔力を集める。


「調子に――」


 魔法が放たれる。


 だが、そこにユリウスはいなかった。


「――!」


 一瞬で魔族の目の前へ。


 剣を振りかぶる。


「遅いよ」


 振り抜いた。


 轟音。


「がっ――!」


 魔族の身体が再び吹き飛んだ。


 先ほど以上の勢い。


 地面を何度も跳ねながら飛んでいく。


「……強い」


 レオンが呟く。


 だが、その魔族が地面へ叩きつけられる直前、大きな影が割って入った。


「っと」


 戦斧の魔族。


 飛んできた仲間を受け止める。


 その勢いで数歩下がった。


「……随分やられたな」


「すまん……」


「気にすんな」


 戦斧の魔族がユリウスを見る。


 そして、アレス。


 フェルディナント。


 カトレア。


 グランヴェル。


 レオン。


 さらに周囲の第一隊。


「流石に数が多いな」


 戦斧を肩へ担ぐ。


「今回のところは、ここまでのようだ」


 その声を合図に、魔族たちが動き始める。


「退くぞ!」


 周囲の魔族が次々と後退する。


 魔物たちもそれに続いていく。


「追わなくていい!」


 第一隊から声が飛ぶ。


 無理に追撃する者はいない。


 グランヴェルが不満そうに剣を下ろした。


「逃げたか」


「十分だよ」


 フェルディナントが剣を収める。


「目的は防衛だからね」


「分かっている」


 戦場から魔族たちが離れていく。


 レオンも剣を収めた。


「ふぅ……」


『オワッタ?』


「ああ。みたいだな」


 そこで、レオンは先ほどの少年を見る。


 ユリウス。


 フェルディナントがそう呼んでいた。


 自分たちとほとんど変わらないような年齢。


 それなのに、あの魔族を一方的に吹き飛ばしていた。


「すごいな……」


 思わず呟く。


 すると、ユリウスがレオンへ視線を向けた。


「……あなたがレオン?」


「え?」


 そのまま近づいてくる。


「そうだけど……」


「ふーん」


 ユリウスがレオンを上から下まで見る。


 値踏みするような視線。


「勇者って言われてるから、どんなやつなのかなって思ってたけど」


 そして。


「大したことなさそうだね」


「……え?」


 レオンが固まる。


 フェルディナントが額に手を当て。


 カトレアが呆れたように息を吐いた。


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